2つの状態1と2をとる事の出来る系を考え、それぞれの状態にある確率を と とする。 と は時刻 の関数であり、 と と表わされる。 と は確率であるから、
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の関係にある。いま状態1から状態2へ移っていく単位時間での割合(遷移率)をαとし、状態2から状態1への遷移率をβとする。 と の時間的経過を表わす微分方程式は、
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と表される。αとβが定数であるとして、定常状態になれば、
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ここで、
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であるから、
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となる。また微分方程式を解析的に解くと、
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となる。これらの式は、 と はそれぞれ指数関数的に と に近づいていき、その時定数τは であること、およびこれらの値 、 、τは、初期値 、 には依存しないことを示している。さらに、
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とすると、
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とより単純な形式となる。この関係は微分方程式の数値計算でよく用いられる。
Hodgkin-Huxley以前に、電気生理学の実験が行われていなかったわけではない。電流と電位変化に関する研究は、かなり多く行われていた。しかしながら、細胞にはいろいろなイオンチャネルを通して電流が流れるため、細胞の電位vと外部から流す電流Iextの間の関係は、
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となり、実験データの解釈は単純ではない。電位をコントロールして行う実験方法であるvoltage clamp(電位固定法)は、1940年代にアメリカの生物物理学者Kenneth Cole (1900 - 1984)らにより開発された。HodgkinとHuxleyはこのvoltage-clampを巧みに利用して大きな成果を得る事が出来たと言える。上記の式でvが一定となるように外部電流をIclampを流すと、左辺は0となるため、
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という関係が得られる。もし溶液の組成を工夫しチャネルのブロッカーなどを用いて、イオンチャネルAを流れる電流が測れたとすると、
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となる。ここでIclampは実験の測定値、vは実験の設定値、EAは実験条件で定まる定数なので、イオンチャネルAのコンダクタンスGAを、
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と算出できることになる。