超解像蛍光顕微鏡

2014年9月5日 (金) 00:36時点におけるMasahikokawagishi (トーク | 投稿記録)による版 (Adapted to new format.)

川岸 将彦, 寺田 純雄
東京医科歯科大学

英: Super-resolution microscopy

光学顕微鏡は、光の屈折、反射などを使って、物体を拡大して観察する器械である。しかし、光という電磁波を利用するため、その分解能は、光の回折限界(可視光では250 nm程度)によって制限される。そのため、従来の光学顕微鏡では、それよりも小さい構造を見る事は出来なかった。螢光顕微鏡とは、励起光を当てて、螢光色素、螢光蛋白質から発せられる螢光を観察する光学顕微鏡であるが、やはり、分解能には制限があった。それに対して、超解像螢光顕微鏡とは、励起照明法や、観察される螢光分子、解析方法などの工夫により、光の回折限界で制限される分解能を超える (超解像)螢光像を作る顕微鏡である。

光学顕微鏡の分解能

光は電磁波の一種であり、波としての性質を持つ。波である光が、限られた大きさの開口を通ると、通り抜けた光の波面はホイヘンス-フレネルの原理によって変化する。開口面から十分遠い面での光波の振幅分布は、フラウンホーファー回折と呼ばれる分布を示す。

レンズは、屈折によって、光の平面波を、収斂/発散する球面波に変化させる光学素子である。レンズの径は有限なので、フラウンホーファー回折と同様の回折が、焦点面において形成される。

この回折のため、点光源から発した光がレンズを通って像を形成しても、その像は一点には収斂せず、3次元に一定の広がりと強度分布をもったものになる。この分布を、点拡がり関数 (点像分布関数, Point spread function, PSF)と呼ぶ。顕微鏡に即して言えば、点状の物体を拡大した像は、単純に拡大された形状になるのではなく、周囲に一定の滲み、広がりを持ったものになる。

無限遠にある点光源から、円形開口を通過した光が、収差のない理想的なレンズ光学系によって像を形成した時、そこに形成されるPSFを、エアリーディスク (Airy disc)と呼ぶ。その焦点面での光強度の分布 

 ,  

 : レンズの中心から、焦点面上の観察点を見た観察角。光軸方向を0とする。
 : 光軸上の、つまり、最も明るい点での光強度。
 : 一次の第一種ベッセル函数。
 : 円形開口の半径。顕微鏡のレンズの半径に当たる。
 : 光の波長。

と表される。この分布は、中心に高い山があり、それを同心円状の低い縞が囲むような形になる。

光学顕微鏡の分解能は、2点分解能で表現される事が多い。つまり、2つの点光源を、異なる点として識別できるような、2点間の最小距離である。収差のない理想的な光学系では、レイリー基準により、一つの点光源によるエアリーディスクの中心の極大と、もう一つの点光源によるエアリーディスクの最初の極小が重なるような距離とされる。具体的には、

 

超解像蛍光顕微鏡

超解像蛍光顕微鏡とは、上述の、対物レンズの回折限界で制限される分解能を越える (超解像)蛍光像を作る顕微鏡のことである。分解能を超える手法としては、RESOLFTを利用するもの、単分子の局在は2点分解能よりも細かく決められる事を利用するもの、励起照明を工夫して回折限界以上の高周波成分の情報を得るもの、統計学的手法を使うものなど、多くの手法が開発、実用化されている。ここでは、代表的なものを紹介する。

RESOLFT (REversible Saturable OpticaL Fluorescence Transitions)

Localization Microscopy (PALM, STORM, fPALM, dSTORM, ...)

参考文献