英語名:frontal cortex, frontal lobe
人間を初めとする霊長類の大脳皮質は大きく発達し、前頭葉、頭頂葉、側頭葉および後頭葉から構成される。前頭葉は、中心溝より前方にある広い領域である。最前部には前頭前野が、最後部には一次運動野があり、これらの間に、眼球運動関連領野と高次運動野がある。前頭葉の各脳部位が特異的な役割を果たすことにより、認知機能から運動機能まで幅広い脳機能が達成される。
前頭葉の構成
Brodmannは、大脳皮質を細胞構築学的に52の領野に分けたが、機能区分との関連性が高いため、現在でも重要な指標となっている。一次運動野は4野に、高次運動野は6野と24野(背側部分)に相当する。前頭前野は、9野、46野などの複数の領野からなっている。前頭前野と高次運動野の間には8野があり、眼球運動に関連した領域である。前頭眼野と呼ばれ、眼球運動関連領野である。
一次運動野
中心溝のすぐ前部にある一次運動野は脊髄の運動細胞に神経連絡があり、運動の実行に関わるとされる。一次運動野の神経細胞を電気刺激すると、刺激部位に対応した体部位の筋が収縮する。このように一次運動野には体の各部位に対応する体部位再現性がある。したがって、一次運動野を損傷すると、損傷部位に対応した体部位に麻痺が生じる。
運動前野
一次運動野の前部にある運動前野は一次運動野や脊髄の運動細胞に神経連絡があり、運動の準備や実行に関わるとされる。運動前野を電気刺激すると、刺激部位によっては一次運動野同様、刺激部位に応じた体部位の筋が収縮する。しかし、一次運動野に比べて、刺激効果は弱く、運動が誘発されない部位もある。運動前野はさらにその細胞構築学的根拠や機能的根拠により複数領域に分けられている。
前頭前野
運動前野のさらに前部にある前頭前野は運動前野のみならず、他の脳部位との広範囲な神経連絡があり、高次な処理を受けたあらゆる外的、内的情報が入力する。また、ヒトを含む霊長類では、他の動物に比べて前頭前野の占める割合が最も高く、前頭前野はそれら動物特有の高度な認知機能に関わるとされる。[1]
参考文献
- ↑
Wise, S.P. (2008).
Forward frontal fields: phylogeny and fundamental function. Trends in neurosciences, 31(12), 599-608. [PubMed:18835649] [PMC] [WorldCat] [DOI]
(執筆者:星 英司 担当編集委員:伊佐 正)