竹島多賀夫
医療法人寿会 富永病院 神経内科・頭痛センター
DOI:10.14931/bsd.6482 原稿受付日:2015年9月23日 原稿完成日:2014年月日
担当編集委員:漆谷 真(京都大学 大学院医学研究科)
英語名:headache、cephalalgia
頭痛の定義
頭痛は頭部の一部あるいは全体の痛みの総称。後頭部と首(後頚部)の境界、眼の奥の痛みも頭痛として扱う。頭皮の外傷や化膿などによる頭の表面の一部の痛みは通常は頭痛には含めない。 頭痛は、発熱や腹痛と同様に症状の名称であるが、慢性的に頭痛発作を繰り返す場合は頭痛性疾患(headache disorder)として扱う。
頭痛に関与するメカニズムと疼痛感受部位
- 疼痛は発生メカニズムにより、侵害受容性痛、神経障害性痛、心因性痛に分類される。頭痛の多くは侵害受容性痛と考えられている。
- 頭蓋外の皮膚、筋肉、血管には痛覚受容器が存在し、疼痛感受部位になりうる。皮膚の刺激は限局した疼痛が発生するが、血管が刺激されると、より広汎な部位の疼痛として認識される。
- 頭蓋の骨組織は痛覚受容器が存在せず、侵害刺激が加わっても痛みを発生しないが、骨膜には痛覚受容器があり、疼痛が発生する。頭蓋内では、脳実質は痛覚受容器が無く、無痛であるが、静脈洞や脳硬脈に分布する動脈、脳底部の動脈は疼痛感受部位である。頭蓋内組織に侵害刺激が加わると、その部位のみならず、関連痛として広範な部位の頭痛として感じられる。
- 頭痛発生の一般的メカニズムとして、痛覚感受部位の炎症、圧迫、牽引、脳動脈の伸展や拡張、炎症、頭頚部の持続的筋収縮、脳神経(三叉神経、中間神経)や上部頚髄脊髄神経の圧迫などがあげられる。頭痛の進展や慢性化には神経障害性痛の関与も示されている。
頭痛の分類と診断 国際頭痛分類第3版
- 頭痛の系統的分類は1962年に米国衛生研究所のad-hoc委員会で作成された分類が、いわゆる“ad hoc分類“として広く認知されていた[1]。1988年には国際頭痛学会が頭痛分類と診断基準の初版[2]を刊行し、2004年に第2版[3]、2013年に第3版beta版[4]が公開されている。第2版[5]、第3版beta版の日本語版[6]が書籍として刊行されており、日本頭痛学会のWebサイトで全文を閲覧できる。
- 国際頭痛分類は国際疾病分類との整合性に配慮されており、分類は階層化されている。さらに、各頭痛の操作的診断基準が記載されている。第1部 一次性頭痛、第2部 二次性頭痛、第3部:有痛性脳神経ニューロパチー、他の顔面痛およびその他の頭痛に大別され、14のグループに分類されている(表1)。ICHD-3βの頭分類は階層的に作成されており、コード番号が割り振られている。各頭痛性疾患には操作的診断基準が掲載されている。
第1部:一次性頭痛 1.片頭痛 2.緊張型頭痛 3.三叉神経・自律神経性頭痛(TACs) 4.その他の一次性頭痛疾患 |
第2部:二次性頭痛 5.頭頸部外傷・傷害による頭痛 6.頭頸部血管障害による頭痛 7.非血管性頭蓋内疾患による頭痛 8.物質またはその離脱による頭痛 9.感染症による頭痛 10.ホメオスターシス障害による頭痛 11.頭蓋骨、頸、眼、耳、鼻、副鼻腔、歯、口あるいはその他の顔面・頸部の構成組織の障害による頭痛あるいは顔面痛 12.精神疾患による頭痛 |
第3部:有痛性脳神経ニューロパチー,他の顔面痛およびその他の頭痛 13.有痛性脳神経ニューロパチーおよび他の顔面痛 14.その他の頭痛性疾患 |
一次性頭痛と二次性頭痛
- 一次性頭痛は、頭痛の原因となる他の患がなく、頭痛そのものが障害となっている神経疾患である。 片頭痛、緊張型頭痛、三叉神経自律神経性頭痛(群発頭痛)が代表的である。
- 二次性頭痛とは、頭蓋内や頭部、顔面、全身の疾患の症状として頭痛が出現するものである。二次性頭痛には、頭蓋内疾患、脳血管障害など多くの原因が挙げられる。国際頭痛分類第3版beta版(ICHD-3β)では、第二部、5章以降に掲載されている(表1)。
一次性頭痛
片頭痛(偏頭痛)
migraine
- 前兆のある片頭痛と前兆のない片頭痛に大別される。ICHD-3βでは表2に示すごとくのサブタイプ、サブフォームが規定されている。
- 片頭痛発作の特徴として、拍動性、片側性に加え、日常生活に支障をきたすこと、日常動作により頭痛が悪化すること、悪心、嘔吐や、光過敏、音過敏を伴うことが重視されている。これらの特徴を中心に診断基準が作成され、1988年以来、世界各国で検証、使用されている(表3)。「片頭痛」と表記されるにもかかわらず、しばしば両側性の頭痛がおこり、また非拍動性の片頭痛もあるので診断に際し注意が必要である。片頭痛は日常生活に支障をきたす頻度の高い疾患であり、患者のQOLを阻害し、医療経済的に大きな損失をもたらしている。
- 頭痛分類における、前兆(aura)は大脳皮質または脳幹の一過性局在性神経症候をさす。閃輝暗点が代表的である。視覚障害、感覚障害、失語性言語障害を典型的前兆としている。
- 運動障害の前兆がある場合は片麻痺性片頭痛、脳幹由来の神経症候の場合は脳幹性前兆を伴う片頭痛、単眼性の網膜症状を伴う場合は網膜片頭痛とする(表2-1.2)。
- 食欲の変化、悪心、気分変調などが片頭痛発作に先行することがあるが、これら漠然とした症状は前兆と区別し予兆(premonitory symptom)とする。予兆は「前兆のない片頭痛」でもしばしばみられる。
- 片頭痛は「偏頭痛」と記載されることもあるが、医学用語として用いる場合は「片頭痛」を用いる。ただし、中国では偏頭痛が使用されている。
片頭痛の有病率
片頭痛の有病率は北米では一般人口の13%(男性6%、女性18%)、欧州15%(男性7%、女性18%)などの報告がある[7]。わが国のSakai&Igarashiの調査[8]では、片頭痛全体で8.4%、MO 5.8%(男2.1%、女9.3%)、MA 2.6%(男1.4%、女3.6%)であった。Takeshimaらの大山町研究[9]では MO 5.2%(男1.9%、女8.1%)、MA 0.9%(男0.4%、女1.06%)であった。片頭痛は男性より女性に多く、30歳代、40歳代にピークがある。
片頭痛の診断
片頭痛の診断はICHD-3βの診断基準[6]に沿って行う。
片頭痛の病因と病態仮説
- 歴史的には、血管説、神経説、セロトニン学説、血小板説などが提唱されてきた。近年の神経科学的知見から、片頭痛の疼痛は、脳硬膜の三叉神経血管系の神経原性炎症とその後惹起される神経感作が主たる病態と理解されている(三叉神経血管説[10])。神経原性炎症にはカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)が重要な関与をしている。この他、発痛物質サブスタンスP、セロトニン、ヒスタミンなども神経原性炎症の進展に関与すると考えられている。
- 前兆のある片頭痛でみられる、閃輝暗点は、大脳皮質後頭葉視覚野で、発生する皮質拡延性抑制がその本態であると考えられている[11] [12]。
- 神経原性炎症と皮質拡延性抑制のより上流の病態として、視床下部や脳幹の異常を片頭痛発生器(generator)として想定する仮設も提唱されている。
- 家族性片麻痺性片頭痛では、Caチャンネル遺伝子(CACNA1A)の変異が発見され、その後、ATP1A2遺伝子やSCN1A遺伝子の変異が報告されている[13]。いずれもイオンチャンネルに関連する遺伝子であり、片頭痛はチャンネル病であるとの説も唱えられているが、片頭痛全般に一般化できるかどうかはさらなる検討が必要である。
片頭痛の治療
- 片頭痛発作時には静かで快適な環境で安静が原則である。頭部の冷却も一定の効果が期待できる。
- 急性期薬物治療:片頭痛発作時に頭痛を頓挫させる目的で使用する。鎮痛薬、NDSAIDs、エルゴタミン、トリプタンなどが用いられる[14]。随伴症状の悪心、嘔吐の改善にためには、制吐剤を併用する[15]。
- 鎮痛薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs):アセトアミノフェン、アスピリン、複合鎮痛薬、インドメタシン、cox-2阻害薬など
- エルゴタミン: クリアミン
- トリプタン:セロトニン作動薬: セロトニンアナログ: スマトリプタン、ゾルミトリプタン、エレトリプタン、リザトリプタン、ナラトリプタンなどがある。片頭痛特異的治療薬として広く使用されている。
- ゲパント: CGRP拮抗薬(本邦未承認)
- 抗CGRP抗体、抗CGRP受容体抗体:開発中
- 予防薬: 頭痛発作頻度が高い場合、急性期治療薬で十分なQOL改善が得られない場合に使用する。Ca拮抗薬(ロメリジン、ベラパミル)、β遮断薬(プロプラノロール、メトプロロール)、抗てんかん薬(バルプロ酸、トピラマート)、抗うつ薬(アミトリプチリン)、ARB(カンデサルタン)、ACE(リシノプリル)などが使用される[16]。漢方薬では、呉茱萸湯が有効とされている。ビタミンB2や、サプリメントのfeverfewも有用性が示されている。
- 非薬物療法として、運動療法や、認知行動療法、リラクセーション、鍼灸療法もおこなわれる。片頭痛の運動療法は非発作時に実施する。頭痛発作中は運動により頭痛が増悪する。
慢性片頭痛
- 片頭痛は頭痛発作を繰り返すが、発作の間欠期は健康な状態であることも特徴のひとつである。しかしながら頭痛発作の頻度が増加し、月に15日以上片頭痛がある状態が3カ月以上持続する場合は慢性片頭痛とする。
- しばしば急性期治療薬の過剰使用(乱用)を伴っており、薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)との鑑別が問題になる。また、治療薬等の影響により頭痛の性状だけでは緊張型頭痛との区別が困難になることがある。
- ICHD-3βでは慢性片頭痛は頭痛が月に15 日以上の頻度で3 ヵ月を超えて起こり、少なくとも月に8日の頭痛は片頭痛の特徴をもつものと規定されている。(表4)
- 片頭痛関連周期性症候群として、表2-1.6に示す疾患が掲載されている。小児期に罹患し、成長とともに一般的な片頭痛発作に推移する例が大部分であるが、成人でもみられることがある。
緊張型頭痛
- 緊張型頭痛は両側性、非拍動性の頭痛で、日常生活の支障はないか、あっても中等度までである。動作による頭痛の悪化はなく、重度の悪心、嘔吐、光過敏、音過敏は伴わない[6]。
- 多くは身体的ストレス、精神的ストレスによってもたらされると考えられている。頭頸部の筋緊張を伴うものと伴わないものに細分類され、頭痛頻度により、稀発反復性緊張型頭痛、頻発反復性緊張型頭痛、慢性緊張型頭痛に区別されている(表5)。
- 疫学: 有病率は調査報告によりばらつきが大きいが、年間有病率21.7%~86.5%、生涯有病率12.9~78%とされている[17]。
- メカニズム: 稀発反復性緊張型頭痛は身体的、精神的ストレスに対する反応
- で誰にでも発生しうると考えられている。慢性緊張型頭痛や頻発反復性緊張型頭痛は末梢あるいは中枢の神経生物学的異常をともなう疾患であると考えられている。
- 診断: ICHD-3βの診断基準[6]に従って行う。
- 治療: 反復性緊張型頭痛は多くの場合鎮痛薬、NSAIDsが有効である[18]。慢性緊張型頭痛や、反復性緊張型頭痛で急性期治療薬の使用頻度が高い場合には予防療法を行う[19]。三環系抗うつ薬(アミトリプチリン)は良質のエビデンスがあり広く使用されている。わが国では、経験的な治療として、筋弛緩薬やベンゾジアゼピンが用いられることもある。
三叉神経自律神経性頭痛(群発頭痛)
- 群発頭痛は、眼窩、眼窩周囲、前頭部、側頭部の三叉神経領域の激痛と、眼充血、流涙、鼻汁漏などの自律神経症状で特徴づけられる頭痛性疾患である。頭痛発作は15分から3時間程度の持続で連日おこり、数カ月間の群発期が過ぎると自然に消退する[6]。
- 2004年の国際頭痛分類第2版で、発作性片側頭痛などの群発頭痛類縁疾患と合わせて三叉神経・自律神経性頭痛(TACs)としてまとめられた。ICHD-3βではさらにサブタイプ の追加整理がなされている(表6)
- 疫学: 群発頭痛の有病率は10万人あたり56~401人程度と報告されている[20]。
- 若年男性に多いが、最近は女性の群発頭痛罹患者も増加傾向にあるとされている[21]。片頭痛や緊張型頭痛より頻度は低いが、それほど稀な疾患ではない。
- 診断: ICHD-3β[6]に準拠する。群発期が頭痛のない寛解期をはさんで反復する場合を反復性群発頭痛、群発期が寛解せず1年以上続く場合を慢性群発頭痛とする。診断基準を表7に示した。
- 群発頭痛の急性期治療: スマトリプタンの皮下注が標準的治療である[22]。スマトリプタンの点鼻もある程度の効果が期待できる。経口トリプタンは効果発現に1時間程度を要するため、発作持続時間が1時間程度の患者には有用性が乏しい。純酸素吸入(マスク 7-10L/分)も有用である。
- 予防療法:群発期には発作頻度の低減、頭痛強度の軽減のため予防療法を行う。ベラパミル、副腎皮質ステロイドホルモンなどが使用される[23]。
- 群発頭痛の他、発作性片側頭痛、短時間持続性片側神経痛様頭痛発作、持続性片側頭痛などが記載されている。発作性片側頭痛と、持続性片側頭痛はインドメタシンが著効する。診断基準にもインドメタシンへの反応性が規定されており、インドメタシン反応性頭痛として纏められることもある[24]。
その他の一次性頭痛
- 片頭痛、緊張型頭痛、三叉神経自律神経性頭痛が主要な一次性頭痛であるが、その他の一次性頭痛として表8のようなものが記載されている[6]。一次性雷鳴頭痛は、くも膜下出血の際の頭痛に類似した突発性の激しい頭痛であるが、他に原因となる疾患がないものである。
- 6.7.3 「可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)による頭痛」との鑑別が問題となる。
- 「冷たいものの摂取または冷気吸息による頭痛」は、かき氷を摂取した際に多くの人が経験する頭痛である。アイスクリーム頭痛と称されることもある。
- 睡眠時頭痛は目覚まし時計頭痛とも称される。夜間に一定の時刻に頭痛で目覚めるが、群発頭痛にみられるような自律神経症状を伴わない。カフェインやリチウムが有効である。
- 新規発症持続性連日性頭痛は、新たに頭痛が出現し、寛解することなく3ヵ月以上にわたり連日性の頭痛が持続するものである。
二次性頭痛
- 二次性頭痛の診断には、その頭痛が他の疾患によって惹起されていることを明瞭に示される必要がある。以前よりある一次性頭痛が、頭痛を起こしうる器質疾患の発症により増悪している場合もあるので注意が必要である。
- 一次性頭痛の一般診断基準を表9に示した。頭痛と原因となりうる疾患の関係を確認して二次性頭痛の診断を行う。前述のごとくICHD-3βの第2部 5章~12章に二次性頭痛が掲載されており、各々の診断基準が示されている。
頭頸部外傷・傷害による頭痛
サブタイプには、5.1「頭部外傷による急性頭痛」、5.2「頭部外傷による持続性頭痛」、5.3「むち打ちによる急性頭痛」、5.4「むち打ちによる持続性頭痛」、5.5「開頭術による急性頭痛」、5.6「開頭術による持続性頭痛」が掲載されている。頭痛が3ヵ月を超えて続くものを持続性頭痛と定義している。
頭頸部血管障害による頭痛
表10にサブタイプの一覧を示した。ICHD-3βで新たに掲載された6.7.3 「可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)による頭痛」は、性行為、労作、ヴァルサルヴァ手技あるいは感情などが引き金になり、典型的には1〜2週間にわたって雷鳴頭痛を繰り返す可逆性脳血管攣縮症候群によって引き起こされる頭痛である。頭痛はRCVSの唯一の症状のことがある。一次性雷鳴頭痛とRCVSによる頭痛の鑑別が重要で、疑わしい場合には6.7.3.1 「可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)による頭痛の疑い」とすることが推奨されている。
非血管性頭蓋内疾患による頭痛
7.1 「頭蓋内圧亢進性頭痛」、7.2 「低髄液圧による頭痛」、7.3 「非感染性炎症疾患性頭痛」、7.4 「頭蓋内新生物による頭痛」、7.5 「髄注による頭痛」、7.6 「てんかん発作による頭痛」、7.7 「キアリ奇形I 型(CM1)による頭痛」、7.8 「その他の非血管性頭蓋内疾患による頭痛」が掲載されている。キアリ奇形I 型(CM1)による頭痛は、咳嗽やヴァルサルヴァ手技により増悪することも特徴であり、4.1「一次性咳嗽性頭痛」との鑑別が重要である。
物質またはその離脱による頭痛
8.1「物質の使用または曝露による頭痛」、8.2「薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)」、8.3「物質離脱による頭痛」が掲載されている。「薬物乱用頭痛」の名称に関する議論があり、ICHD-3β日本語版では「薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)」の頭痛名称が採択された。1.3「慢性片頭痛」と8.2「薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)」の鑑別がしばしば問題となる。
感染症による頭痛
9.1「頭蓋内感染症による頭痛」、9.2「全身性感染症による頭痛」とそのサブフォームが詳細に記述されている。
ホメオスターシス障害による頭痛
10.1.2 「飛行機頭痛」が、ICHD-3βでこの章に加えられた。また、付録にはA10.8.1「宇宙飛行による頭痛」も加えられている。10.3「高血圧性頭痛」もここで定義されている。通常の高血圧は頭痛の原因とみなされず、多くは頭痛の結果として血圧が上昇傾向にあるということにも注意が必要である(表11)。
頭蓋骨、頸、眼、耳、鼻、副鼻腔、歯、口あるいはその他の顔面・頸部の構成組織の障害による頭痛あるいは顔面痛
ICHD-2のA11.5.1「鼻粘膜接触点頭痛」はA11.5.3「鼻粘膜、鼻甲介、鼻中隔の障害による頭痛」に集約されている(表12)。
精神疾患による頭痛
12.1「身体化障害による頭痛」 12.2「精神病性障害による頭痛」が掲載されている。付録には、A12.3 「うつ病による頭痛」、A12.4 分離不安症/分離不安障害による頭痛」、A12.5 「パニック症/パニック障害による頭痛」、A12.6 「限局性恐怖症による頭痛」、A12.7 「社交不安症/社交不安障害(社交恐怖)による頭痛)、A12.8 「全般性不安症/全般性不安障害による頭痛」、A12.9 「心的外傷後ストレス障害による頭痛」、A12.10 「急性ストレス障害による頭痛」が掲載されている。付録診断基準は、今後検証が必要な研究のための基準であるが、精神疾患による頭痛の付録基準は日常診療でも使用可能と考えられている。
有痛性脳神経ニューロパチーおよび他の顔面痛
(表13)
- 三叉神経痛をはじめ各種神経痛、有痛性脳神経ニューロパチーが掲載されている。
- 症候性三叉神経痛( symptomatic trigeminal neuralgia)の名称がICHD-3βでは有痛性三叉神経ニューロパチー(painful trigeminal neuropathy)に変更された。ICHD-2の13.17「眼筋麻痺性片頭痛」は以前より片頭痛のサブフォームではなく、ニューロパチーと考えられており、13章に分類されていたが、ICHD-3βでは“片頭痛”の用語が消え 13.6「虚血性眼球運動麻痺による頭痛」に包括された。
その他の頭痛性疾患
第14章には14.1 「分類不能の頭痛」、14.2「詳細不明の頭痛」が掲載されている。ICHD-3βの頭痛分類のいずれにも該当しないものは「分類不能の頭痛」として記載しておき、将来の知見の集積をまつように設計されている。 頭痛の存在は確実であるが、正確な頭痛の分類に必要な情報が不足している場合には「詳細不明の頭痛」としてコード化しておく。
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