L1

2012年3月5日 (月) 14:52時点におけるHiroyukikamiguchi (トーク | 投稿記録)による版

英語名:L1

L1の構造

 L1は、6個の免疫グロブリン様ドメインと5個のフィブロネクティンIII型様ドメインからなる細胞外領域、1回膜貫通領域および細胞内領域からなる構成される細胞接着分子である。L1遺伝子を構成する28個のエクソンのうち、2番目と27番目のエクソンが選択的スプライシングを受ける。主として、神経細胞には全長型L1が発現し、非神経細胞には両エクソン配列を含まないL1が発現する。2番目のエクソンがコードするアミノ酸配列YEGHHVはL1細胞外領域に存在し、L1同士の結合(ホモフィリック結合)および他種の接着分子との結合(ヘテロフィリック結合)を増強する。27番目のエクソンがコードするアミノ酸配列RSLEはL1細胞内領域に存在し、クラスリンアダプターAP2と結合してL1のエンドサイト−シスを引き起こす。

L1の発現

 L1は発生段階の神経組織に強く発現し、成体になると発現量は減少する。さまざまな種類の神経細胞、シュワン細胞とオリゴデンドロサイトがL1を発現する。脊髄後根神経節神経細胞では細胞体から神経突起先端部まで比較的均一に存在するが、海馬神経細胞のように極性化した細胞では、軸索遠位部から成長円錐に集積し、細胞体と樹状突起での発現は低い。したがって、神経細胞の極性化の解析において、 L1は軸索マーカーとして利用される。

L1に結合する蛋白質

 L1細胞外領域は、隣接する細胞表面のL1細胞外領域と結合して細胞間接着を媒介する(ホモフィリック結合)。また、インテグリン、TAG1/アキソニン-1、F3/F11/コンタクティンなどの細胞接着分子とのヘテロフィリック結合も報告されている。軸索ガイダンス分子セマフォリンの受容体であるニューロピリン-1と同一形質膜上でヘテロ2量体を形成する。L1細胞内領域と細胞骨格を連結する蛋白質として、アンキリン、ERM(エズリン/ラディキシン/モエシン)、ダブルコルティンなどが同定されている。L1細胞内領域は、非受容体型チロシンキナーゼSrc、カゼインキナーゼII、extracellular signal-regulated kinase 2 (Erk2)、p90rskなどの蛋白質リン酸化酵素と結合してリン酸化修飾を受ける。

L1の機能

 ホモフィリック結合とヘテロフィリック結合により細胞間接着を媒介する。またL1の接着性および細胞骨格との連結は時空間的に制御されるため、L1は単なる静的な細胞間接着だけでなく、動的な細胞間相互作用(細胞移動など)にも関与する。神経系での具体的なL1の機能として、神経細胞移動の促進、軸索伸長の促進、軸索束形成の促進、ミエリン形成の促進、シナプス可塑性の制御などが報告されている。また、L1とニューロピリン-1のヘテロ2量体はセマフォリン3A受容体として機能し、軸索の反発性ガイダンスを媒介する。