アストロサイト

2016年2月7日 (日) 11:39時点におけるNinamura (トーク | 投稿記録)による版

アストロサイト Astrocyte(英) Astrocyte(仏) Astrozyt(独)

アストロサイトは神経系の細胞であるグリア細胞の一種で、ニューロンを取り囲んでおり、神経回路を調節する。アストロサイトは以前は神経細胞から放出された伝達物質を回収するなど神経回路の補助的役割とされていたが、2000年以降、アストロサイトが伝達物質グリオトランスミッターを放出し神経回路を制御する報告が多くなるにつれ、より主体的に神経回路を調節すると考えられている。

アストロサイトのマーカー

GFAP:細胞骨格を形成する中間径フィラメント(8-10)。線維性アストロサイトで高い発現を示す。また、神経損傷部で観察される活性化型アストロサイトは強いGFAP陽性を示す。また培養したアストロサイトでもGFAPの強い発現を示す。正常な状態ではほとんどの原形質性アストロサイトはGFAP陰性であり(11)、それらの多くは大脳皮質などの灰白質にある(12, 13)。 GLAST (glutamate-aspartate transporter: EAAT (excitatory amino acid transporter) 1), GLT-1 (glutamate transporter-1: EAAT2):アストロサイトはシナプス間で放出されたグルタミン酸を速やかに取り込む。その除去に関わるグルタミン酸トランスポーターのうちGLASTとGLT-1がアストロサイトのマーカーとして使用される(14, 15)。 S100:カルシウム結合蛋白質であるS100のサブユニットは中枢神経系ではアストロサイトと上皮細胞のマーカーとして使用される(16,17)。

5. 構造と機能 アストロサイトは水やイオンのバランス制御や脳血液関門の維持に貢献している。また神経伝達物質の回収、グリオトランスミッターの放出、神経ペプチドの放出を介してシナプス伝達の調節に関わっている。

5-1アストロサイトのネットワーク(ドメイン構造)

アストロサイトは神経細胞のみならずアストロサイト同士でもネットワークを形成している。アストロサイトのネットワークはドメイン構造といわれる互いのアストロサイトのごく一部だけが接することにより、それぞれのアストロサイトが個々の領域をもつドメイン構造をとっている(27)。個々のアストロサイトはギャップジャンクション(gap junction)の一構成要素であるヘミチャネル(hemichannel)をもっており、互いにギャップジャンクションを形成し、分子のやりとりをしている。このことはdye-couplingという方法で確認できる。一つのアストロサイトにルシファーイエロー(lucifer yellow)を微量注入すると、それが周辺のアストロサイトにも広がることが観察される(28)。