反応時間

2012年3月15日 (木) 16:21時点におけるNiimiryosuke (トーク | 投稿記録)による版

英:reaction time/response time、英略語:RT

反応時間とは、生体に刺激が与えられてからその刺激に対する外的に観察可能な反応が生じるまでの時間である。 特に、ヒトが何らかの知覚・認知課題を遂行する際の、自発的行動による反応(例えば、ボタン押し)について言う。 類義語に潜時(latency)があるが、これは反応時間より広い概念で、ヒト以外の動物の反応や、 行動ではなく生理現象として観察される反応についても言う(例えば、視覚刺激提示から視覚誘発電位が生じるまでの時間)。 ここでは、ヒトの行動実験における反応時間について概説する。

行動実験では、反応時間は極めて重要な指標である。反応時間が長いほど、複雑で多くの心的処理を要したと考えられる。 ただし、反応時間は刺激の入力から反応の出力までに起こる種々の処理過程を総体として反映する指標である。 反応時間に影響する処理段階は少なくとも、刺激の知覚処理、判断や反応選択の処理、反応のための運動実行の処理の3つに分けられる。 いずれの処理段階も反応時間に影響を与え得る。 反応時間の平均的な長さだけでなく、個人内のばらつき(SDなど)が分析されることもある。


いろいろな反応時間

反応時間測定では、手指ボタン押し反応を用いることが多い。 足のペダル押し、発声、眼球運動なども用いられる[1]。 リーチングのような動作に比較的時間のかかる反応では、刺激提示から運動開始までを反応時間、 運動開始から終了までを運動時間(movement time, MT)と呼んで区別することもある。 短距離走のスタートのような全身の運動による反応については、全身反応時間(whole body reaction time)と呼ぶ。 例えば、刺激が提示されたらできるだけ速く跳び上がらせ(垂直跳び課題)、刺激提示から両足が地を離れるまでの時間として測定する。 ただし、単純な反応動作でも多数の筋肉が関与するものである。 EMGで筋肉の運動潜時を調べると、反応時間と一致するとは限らないし、筋肉によっても差がある[2]

課題による分類

一般に反応時間測定では、できるだけ速く反応するよう求める課題(speeded task)を用いる。 これに対し、好きな時に反応してよい課題のRTは自由反応時間(free reaction time)と呼んで区別することがある。 また、課題の内容に応じて、次の3種類が区別される。

単純反応時間(simple reaction time, SRT)[3]

既知の1種の刺激が提示され、それに対して決められた1種類の反応をする(単純検出課題)ときの反応時間。 例えば、音が聞こえたらできるだけ速くボタンを押す。




  1. 眼球運動の場合には反応時間ではなく潜時と呼ぶことが多い。
  2. Moreno, M.A., Stepp, N., & Turvey, M.T. (2011).
    Whole body lexical decision. Neuroscience letters, 490(2), 126-9. [PubMed:21184808] [PMC] [WorldCat] [DOI]
  3. 古い文献では簡単反応時間と訳されることがある。