内田克哉 先生
脳科学辞典の「ゴルジ染色」の原稿を担当いただきありがとうございます。この度、私渡辺が査読担当となりましたので、コメントさせていただきます。宜しくお願いします。
渡辺雅彦
コメント: 担当項目について、概要、歴史、原理、方法、問題点について系統的に扱っており、基本的な事項を網羅し、わかりやすくまとめられていると拝見しました。私からのコメントは、以下に列挙しますので、ご検討の上適宜取捨してください。また、加えるべきものがありましたら、この機会に追加していただいても結構です。
1.冒頭のまとめ ゴルジ染色の特性である、一部の細胞だが隅々まで染まるという特性を加えた方が、この方法の特性の理解によいかと思います。
改定案 「ごくわずかの神経細胞がランダムに染⾊され、染まった細胞はその細部に至るまで細胞全体が⿊く、そのほかの細胞は無⾊であるため、鍍銀された神経細胞の樹状突起スパインなどの微細構造が明瞭に浮かび上がる。」
2.図1の説明 ゴルジとカハールという2大巨頭について紹介されていますが、カハールにも国名を記載した方がよいかと思います。
改定案 「しかし、同じくゴルジ染⾊を使⽤し研究を⾏なったスペインのカハールは、ひとつひとつの神経細胞は独⽴しているとする「ニューロン説」を提唱した。」
3.ゴルジ染色とは 内田先生の本稿は改訂しないかぎり10年以上ネット上で利用されますので、発見から約150年という表記は正確さを欠くことになり好ましくないと思います。また、現代におけるゴルジ染色の利用について、以下のような追加を考えてみました。
改定案 「ゴルジ染⾊は、1873年の発⾒から現在に至るまで神経科学研究の第⼀線で利⽤される古典的な組織学的⼿法である。特に、精神神経疾患や学習に伴う樹状突起スパインの形状や密度の変化などの微細構造解析において頻用されている。一方、樹状突起や軸索を含めた1個のニューロンの形態学的可視化という研究目的では、ゴルジ染色は神経トレーサー標識法やGFPなどの蛍光タンパク質標識法にとって代わられている。」
4.ゴルジコックス染色の4 還流ではなく灌流です。固定法には浸漬immersionと灌流perfusion(臓器や田畑に液体を流すことで、元に戻ることではありませんので)があります。