「水道周囲灰白質」の版間の差分

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PAGのニューロンは、以下のような物質を神経伝達物質/神経修飾物質として、含有する。 グルタミン酸、アスパラギン酸 GABA、グリシン エンケファリン、ダイノルフィン、サブスタンスP、コレシストキニン、ニューロテンシン、コルチコトロピン放出ペプチド(CRF)、ガストリン放出ペプチド(GRP)、ニューロメディンB、ガラニン、LHRH、ACTH、一酸化窒素(NO)  
PAGのニューロンは、以下のような物質を神経伝達物質/神経修飾物質として、含有する。 グルタミン酸、アスパラギン酸 GABA、グリシン エンケファリン、ダイノルフィン、サブスタンスP、コレシストキニン、ニューロテンシン、コルチコトロピン放出ペプチド(CRF)、ガストリン放出ペプチド(GRP)、ニューロメディンB、ガラニン、LHRH、ACTH、一酸化窒素(NO)  


痛覚抑制作用  
痛覚抑制作用  


PAGから視床に投射する上行性抑制系と延髄に投射する下行性抑制系がある。上行性抑制系としては、背側縫線核からのセロトニン作動性ニューロンが、視床の腹側基底核群や髄板内核に投射し、痛覚の伝達を抑制している。 下行性抑制系は、背内側部(dmPAG)、腹外側部(vmPAG)から吻側延髄腹内側部 (rostroventromedial medulla; RVM) に投射する。主にグルタミン酸作動性であり、その一部は、ニューロテンシン(NT)を伝達物質にもつ<ref><pubmed>6132659</pubmed></ref>。RVMには、セロトニン作動性ニューロンを含む大縫線核(Raphe Magnus: RMn)、非セロトニン作動性の巨大細胞網様核、傍巨大細胞網様核などが存在し、これらのニューロンが、脊髄後核の痛覚受容ニューロンを抑制する。PAGからの下行性抑制系は、RVMの脊髄投射ニューロンを活性化することによって、痛覚抑制を引き起こす。 これらのPAGニューロンは、PAG内のGABA作動性ニューロンの抑制を受けている<ref name=ref2><pubmed>11287471</pubmed></ref>。視床下部から投射するβエンドルフィン作動性ニューロン、PAG内のエンケファリン作動性ニューロンなどのオピエート系は、このGABA作動性ニューロンを抑制することにより、痛覚抑制を引き起こす<ref><pubmed>1450948</pubmed></ref>。オピエート系と独立に、エンドカンナビノイド系も、このGABA作動性ニューロンの作用(GABA放出)を抑えることにより、痛覚抑制を引き起こすと考えられている。 たとえば、PAG内のニューロテンシン作動性ニューロンは、RMnに投射するグルタミン酸作動性ニューロンに興奮性に作用する<ref name=ref2/>。一方、エンドカンナビノイドを介して、このニューロンへのGABA放出を抑制している<ref><pubmed>19359367</pubmed></ref>。サブスタンスP、コレシストキニンも、ニューロテンシンと同様のメカニズムで、痛覚抑制に関与する<ref><pubmed>19494144, 21525858</pubmed></ref>。  
PAGから視床に投射する上行性抑制系と延髄に投射する下行性抑制系がある。上行性抑制系としては、背側縫線核からのセロトニン作動性ニューロンが、視床の腹側基底核群や髄板内核に投射し、痛覚の伝達を抑制している。 下行性抑制系は、背内側部(dmPAG)、腹外側部(vmPAG)から吻側延髄腹内側部 (rostroventromedial medulla; RVM) に投射する。主にグルタミン酸作動性であり、その一部は、ニューロテンシン(NT)を伝達物質にもつ<ref><pubmed>6132659</pubmed></ref>。RVMには、セロトニン作動性ニューロンを含む大縫線核(Raphe Magnus: RMn)、非セロトニン作動性の巨大細胞網様核、傍巨大細胞網様核などが存在し、これらのニューロンが、脊髄後核の痛覚受容ニューロンを抑制する。PAGからの下行性抑制系は、RVMの脊髄投射ニューロンを活性化することによって、痛覚抑制を引き起こす。 これらのPAGニューロンは、PAG内のGABA作動性ニューロンの抑制を受けている<ref name=ref2><pubmed>11287471</pubmed></ref>。視床下部から投射するβエンドルフィン作動性ニューロン、PAG内のエンケファリン作動性ニューロンなどのオピエート系は、このGABA作動性ニューロンを抑制することにより、痛覚抑制を引き起こす<ref><pubmed>1450948</pubmed></ref>。オピエート系と独立に、エンドカンナビノイド系も、このGABA作動性ニューロンの作用(GABA放出)を抑えることにより、痛覚抑制を引き起こすと考えられている。 たとえば、PAG内のニューロテンシン作動性ニューロンは、RMnに投射するグルタミン酸作動性ニューロンに興奮性に作用する<ref name=ref2/>。一方、エンドカンナビノイドを介して、このニューロンへのGABA放出を抑制している<ref><pubmed>19359367</pubmed></ref>。サブスタンスP、コレシストキニンも、ニューロテンシンと同様のメカニズムで、痛覚抑制に関与する<ref><pubmed>19494144, 21525858</pubmed></ref>。  


情動行動  
情動行動  


 PAGの背側および背外側部への電気刺激やグルタミン酸作動薬の投与によって、攻撃(aggression)、防御(defence)、威嚇(rage)などの反応が誘発される。その尾側の領域の刺激によって逃走反応(flighting)が、腹外側の刺激では、すくみ反応(freezing)が誘発される。防御反応には、排尿(micturition)、脱糞(defecation)、眼球突出(exophthlmus)などが伴うことがある。  情動の中枢とされる大脳辺縁系(海馬、扁桃体、中隔核)や分界条床核から直接に、あるいは視床下部を介して入力を受ける<ref><pubmed>11263761</pubmed></ref>。ネコでは、視床下部外側部からPAGへの入力は、攻撃反応を促進し、視床下部内側部からの入力は、防御/威嚇反応の促進、攻撃反応の抑制に関与する <ref name=ref7><pubmed>7633640</pubmed></ref>。これらの入力系はNMDAレセプターを介したグルタミン酸作動性ニューロンが主であるが、視床下部内側部からは、サブスタンスP作動性ニューロンも、防御/威嚇反応の促進と、攻撃反応の抑制に関与する<ref><pubmed>14642448</pubmed></ref>。  扁桃体基底核群(basal complex)からは、グルタミン酸作動性ニューロンがPAGに直接に入力し、防衛/威嚇反応を促進する<ref name=ref7 />。一方、扁桃体中心核(central amygdale)からはオピオイド作動性ニューロンが投射し、μレセプターを介して防御/威嚇反応を抑制する。<ref name=ref7 />。扁桃体内側核(medial amygdala)からは、サブスタンスP作動性ニューロンが視床下部内側部に投射し、視床下部内側部―PAGの防御/威嚇反応の促進、攻撃行動の抑制に関与する<ref><pubmed>14642448</pubmed></ref>。ラットでは、doesal PAGへのセロトニンは5HT1Aレセプターを介して防御反応を抑制し<ref><pubmed>1410130</pubmed></ref>、マウスでは、dorsal PAGへのCRFが防御反応を促進する<ref><pubmed> 17095103</pubmed></ref>。  情動行動の発現系は、他の行動の発現系と相互抑制の関係にあり、たとえば上記のように攻撃行動とそれに対する防御/威嚇反応は、PAGのレベルで拮抗関係にある。この抑制にはGABA作動性ニューロンが関与すると考えられている<ref><pubmed>11263761</pubmed></ref>。また、マウスでは、PAG吻外側部へのモルフィンの投与によって、生きた昆虫への狩猟行動(hunting)が促進し、育児行動が抑制される<ref><pubmed>16510737</pubmed></ref>。コレシストキニン(CCK)は、モルフィンの作用に拮抗的に働く<ref><pubmed>17194502</pubmed></ref>。  
 PAGの背側および背外側部への電気刺激やグルタミン酸作動薬の投与によって、攻撃(aggression)、防御(defence)、威嚇(rage)などの反応が誘発される。その尾側の領域の刺激によって逃走反応(flighting)が、腹外側の刺激では、すくみ反応(freezing)が誘発される。防御反応には、排尿(micturition)、脱糞(defecation)、眼球突出(exophthlmus)などが伴うことがある。  情動の中枢とされる大脳辺縁系(海馬、扁桃体、中隔核)や分界条床核から直接に、あるいは視床下部を介して入力を受ける<ref><pubmed>11263761</pubmed></ref>。ネコでは、視床下部外側部からPAGへの入力は、攻撃反応を促進し、視床下部内側部からの入力は、防御/威嚇反応の促進、攻撃反応の抑制に関与する <ref name=ref7><pubmed>7633640</pubmed></ref>。これらの入力系はNMDAレセプターを介したグルタミン酸作動性ニューロンが主であるが、視床下部内側部からは、サブスタンスP作動性ニューロンも、防御/威嚇反応の促進と、攻撃反応の抑制に関与する<ref><pubmed>14642448</pubmed></ref>。  扁桃体基底核群(basal complex)からは、グルタミン酸作動性ニューロンがPAGに直接に入力し、防衛/威嚇反応を促進する<ref name=ref7 />。一方、扁桃体中心核(central amygdale)からはオピオイド作動性ニューロンが投射し、μレセプターを介して防御/威嚇反応を抑制する。<ref name=ref7 />。扁桃体内側核(medial amygdala)からは、サブスタンスP作動性ニューロンが視床下部内側部に投射し、視床下部内側部―PAGの防御/威嚇反応の促進、攻撃行動の抑制に関与する<ref><pubmed>14642448</pubmed></ref>。ラットでは、doesal PAGへのセロトニンは5HT1Aレセプターを介して防御反応を抑制し<ref><pubmed>1410130</pubmed></ref>、マウスでは、dorsal PAGへのCRFが防御反応を促進する<ref><pubmed> 17095103</pubmed></ref>。  情動行動の発現系は、他の行動の発現系と相互抑制の関係にあり、たとえば上記のように攻撃行動とそれに対する防御/威嚇反応は、PAGのレベルで拮抗関係にある。この抑制にはGABA作動性ニューロンが関与すると考えられている<ref><pubmed>11263761</pubmed></ref>。また、マウスでは、PAG吻外側部へのモルフィンの投与によって、生きた昆虫への狩猟行動(hunting)が促進し、育児行動が抑制される<ref><pubmed>16510737</pubmed></ref>。コレシストキニン(CCK)は、モルフィンの作用に拮抗的に働く<ref><pubmed>17194502</pubmed></ref>。  


自律神経系の変動(血圧、心拍の調節)
自律神経系の変動(血圧、心拍の調節)
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