「ミカエリス・メンテンの式」の版間の差分

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== ミカエリス・メンテンの式  ==
== ミカエリス・メンテンの式  ==


 酵素の反応速度と基質濃度の関係を明らかにするため、L. Michaelis とM. L. Mentenは、インベルターゼに関する研究において、酵素と基質が結合した酵素基質複合体(ES complex)を形成することにより酵素反応が進行するとの概念に基づいて、次のような反応スキームを考えた。  
 L. Michaelis とM. L. Mentenはインベルターゼに関する研究において、酵素の反応速度と基質濃度の関係を明らかにするため、酵素と基質が結合した酵素基質複合体(ES complex)を形成することにより酵素反応が進行するとの概念に基づいて、次のような反応スキームを考えた。  


           <math> E + S \overset{k_1}{\underset{k_2}{\rightleftarrows}} ES \xrightarrow{k_3} E + P</math>     (1)
           <math> E + S \overset{k_1}{\underset{k_2}{\rightleftarrows}} ES \xrightarrow{k_3} E + P</math>     (1)
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 しかしながら、上記、Michaelis とMentenの考えではいくつかの仮定を設けており、常にこれらの仮定が成立するとは限らない。そこで1925年にG. E. BriggsとJ. B. S. Haldaneは、ミカエリス・メンテンの式の、より一般化された誘導法を示した<ref><pubmed>16743508</pubmed></ref>。上記(1)の反応スキームにおいて、彼らは酵素反応が直線的に進行する定常状態ではES complexの形成速度と分解速度が釣り合っていて、見かけ上<math>[ES]</math>が一定になると仮定した(定常状態近似)。すなわち、  
 しかしながら、上記、Michaelis とMentenの考えではいくつかの仮定を設けており、常にこれらの仮定が成立するとは限らない。そこで1925年にG. E. BriggsとJ. B. S. Haldaneは、ミカエリス・メンテンの式の、より一般化された誘導法を示した<ref><pubmed>16743508</pubmed></ref>。上記(1)の反応スキームにおいて、彼らは酵素反応が直線的に進行する定常状態ではES complexの形成速度と分解速度が釣り合っていて、見かけ上<math>[ES]</math>が一定になると仮定した(定常状態近似)。すなわち、  


           <math>\frac{d[ES]}{dt} = 0 = k_1[ES][S] - k_2[ES] -k_3[ES]</math>     (8)
           <math>\frac{d[ES]}{dt} = 0 = k_1[E][S] - k_2[ES] -k_3[ES]</math>     (8)


ここで上記と同様に酵素の全濃度<span class="texhtml">[''E''<sub>0</sub>]</span>は  
ここで上記と同様に酵素の全濃度<span class="texhtml">[''E''<sub>0</sub>]</span>は  
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 (7)式も(13)式も、酵素反応速度(すなわち酵素活性)と基質濃度の関係を定量的に表した式である。実験的には様々な基質濃度で酵素活性を測定し、横軸に基質濃度、縦軸に酵素活性をとってプロットした場合、図に示すように、数学的には直角双曲線の形となる。このようなプロットをミカエリス・メンテンプロット(S-vプロット)と呼ぶ。図から明らかなように、基質濃度が<span class="texhtml">''K''<sub>''m''</sub></span>値(<span class="texhtml">''V''<sub>''max''</sub></span>の1/2の速度を与える時の基質濃度)付近或いはそれ以下の場合には酵素活性は基質濃度に大きく依存し、基質濃度の少しの変化でも酵素活性は大きく影響を受けるが、<span class="texhtml">''K''<sub>''m''</sub></span>値より十分大きい基質濃度の場合、酵素活性は<span class="texhtml">''V''<sub>''max''</sub></span>の値に近づき、濃度が大きくなるにつれて基質濃度依存性が殆どなくなる。従って、一般に酵素活性を測定する場合は、基質初濃度の誤差や、反応の進行に伴う基質濃度減少の影響を避けるため、基質阻害などの問題がない限りは、できるだけ高濃度の基質(<span class="texhtml">''K''<sub>''m''</sub></span>値の5〜10倍、或いはそれ以上)を用いて活性測定を行うことが望ましい。 [[Image:Atsuhikoishida fig 1.jpg|RTENOTITLE]]  
 (7)式も(13)式も、酵素反応速度(すなわち酵素活性)と基質濃度の関係を定量的に表した式である。実験的には様々な基質濃度で酵素活性を測定し、横軸に基質濃度、縦軸に酵素活性をとってプロットした場合、図に示すように、数学的には直角双曲線の形となる。このようなプロットをミカエリス・メンテンプロット(S-vプロット)と呼ぶ。図から明らかなように、基質濃度が<span class="texhtml">''K''<sub>''m''</sub></span>値(<span class="texhtml">''V''<sub>''max''</sub></span>の1/2の速度を与える時の基質濃度)付近或いはそれ以下の場合には酵素活性は基質濃度に大きく依存し、基質濃度の少しの変化でも酵素活性は大きく影響を受けるが、<span class="texhtml">''K''<sub>''m''</sub></span>値より十分大きい基質濃度の場合、酵素活性は<span class="texhtml">''V''<sub>''max''</sub></span>の値に近づき、濃度が大きくなるにつれて基質濃度依存性が殆どなくなる。従って、一般に酵素活性を測定する場合は、基質初濃度の誤差や、反応の進行に伴う基質濃度減少の影響を避けるため、基質阻害などの問題がない限りは、できるだけ高濃度の基質(<span class="texhtml">''K''<sub>''m''</sub></span>値の5〜10倍、或いはそれ以上)を用いて活性測定を行うことが望ましい。 [[Image:Atsuhikoishida fig 1.jpg|RTENOTITLE]]  
図 基質濃度と酵素活性の関係(ミカエリス・メンテンプロット、またはS-vプロット)


== 速度論的パラメータの求め方  ==
== 速度論的パラメータの求め方  ==
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同義語: S-vプロット、ミカエリス・メンテンの式、ブリッグス・ホールデンの式  
同義語: S-vプロット、ミカエリス・メンテンの式、ブリッグス・ホールデンの式  
重要な関連語:  酵素反応速度論、速度論的パラメータ、<math>K_m</math>(ミカエリス定数)、<math>V_{max}</math>、<math>k_{cat}</math>(触媒定数)、酵素基質複合体(ES complex、ミカエリス複合体)、酵素活性、ラインウィーバー・バークプロット、基質特異性  
重要な関連語:  酵素反応速度論、速度論的パラメータ、<math>K_m</math>(ミカエリス定数)、<math>V_{max}</math>、<math>k_{cat}</math>(触媒定数)、酵素基質複合体(ES complex、ミカエリス複合体)、酵素活性、ラインウィーバー・バークプロット、基質特異性  
(執筆者:石田敦彦、担当編集委員:林康紀)
(執筆者:石田敦彦、担当編集委員:林康紀)
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