16,040
回編集
細編集の要約なし |
細編集の要約なし |
||
1行目: | 1行目: | ||
{{Pfam_box | |||
| Symbol = Histone | |||
| Name = Core histone H2A/H2B/H3/H4 | |||
| image = Protein_H2AFJ_PDB_1aoi.png | |||
| width = | |||
| caption = [[Protein Data Bank|PDB]] rendering of [[H2AFJ]] based on 1aoi. | |||
| Pfam = PF00125 | |||
| Pfam_clan = CL0012 | |||
| InterPro = IPR007125 | |||
| SMART= | |||
| PROSITE= | |||
| SCOP = 1hio | |||
| TCDB = | |||
| OPM family = | |||
| OPM protein = | |||
| PDB = {{PDB2|1eqz}}, {{PDB2|1f66}}, {{PDB2|1hq3}}, {{PDB2|1id3}}, {{PDB2|1kx3}}, {{PDB2|1kx4}}, {{PDB2|1kx5}}, {{PDB2|1m18}}, {{PDB2|1m19}}, {{PDB2|1m1a}}, {{PDB2|1p34}}, {{PDB2|1p3a}}, {{PDB2|1p3b}}, {{PDB2|1p3f}}, {{PDB2|1p3g}}, {{PDB2|1p3i}}, {{PDB2|1p3k}}, {{PDB2|1p3l}}, {{PDB2|1p3m}}, {{PDB2|1p3o}}, {{PDB2|1p3p}}, {{PDB2|1q9c}}, {{PDB2|1s32}}, {{PDB2|1tyz}}, {{PDB2|1u35}}, {{PDB2|2aro}}, {{PDB2|2cv5}}, {{PDB2|2hio}} | |||
}} | |||
英語名:histone 独:Histon 仏:histone | |||
[[真核生物]]の[[クロマチン]](染色質)の基本単位である[[ヌクレオソーム]](nucleosome)を構成する塩基性タンパク質。[[DNA]] を核内に収納する役割を担う。通常の細胞を構成しているタンパク質中でヒストンは最も多量に存在しているタンパク質であり、ヌクレオソームはほぼ等量のDNA(200bp(130kDa))とヒストンタンパク質(132kDa)により構成されている。ヒストンとDNAの相互作用は遺伝子発現の最初の段階である[[転写]]に大きな影響を及ぼす<ref>'''八杉龍一、小関治男、古谷雅樹、日高敏隆'''<br>岩波生物学辞典 第4版<br>''岩波書店'':1996</ref>。 | [[真核生物]]の[[クロマチン]](染色質)の基本単位である[[ヌクレオソーム]](nucleosome)を構成する塩基性タンパク質。[[DNA]] を核内に収納する役割を担う。通常の細胞を構成しているタンパク質中でヒストンは最も多量に存在しているタンパク質であり、ヌクレオソームはほぼ等量のDNA(200bp(130kDa))とヒストンタンパク質(132kDa)により構成されている。ヒストンとDNAの相互作用は遺伝子発現の最初の段階である[[転写]]に大きな影響を及ぼす<ref>'''八杉龍一、小関治男、古谷雅樹、日高敏隆'''<br>岩波生物学辞典 第4版<br>''岩波書店'':1996</ref>。 | ||
22行目: | 39行目: | ||
ヒストンのアミノ末端部分は、さまざまな修飾を受けることによりクロマチンの機能を制御している。遺伝子の発現もそのうちのひとつで、このようにゲノムの塩基配列の変化を起こさずに遺伝子の機能を調節する仕組みを[[エピジェネティクス]]という。ヒストン修飾は遺伝子発現制御にとどまらずDNA修復や染色体凝縮([[有糸分裂]])、精子形成([[減数分裂]])などの多様な生物学的プロセスに関与していることが知られている<ref><pubmed>21927517</pubmed></ref>が、ここでは転写を調節するヒストン修飾の例を以下に示す。 | ヒストンのアミノ末端部分は、さまざまな修飾を受けることによりクロマチンの機能を制御している。遺伝子の発現もそのうちのひとつで、このようにゲノムの塩基配列の変化を起こさずに遺伝子の機能を調節する仕組みを[[エピジェネティクス]]という。ヒストン修飾は遺伝子発現制御にとどまらずDNA修復や染色体凝縮([[有糸分裂]])、精子形成([[減数分裂]])などの多様な生物学的プロセスに関与していることが知られている<ref><pubmed>21927517</pubmed></ref>が、ここでは転写を調節するヒストン修飾の例を以下に示す。 | ||
== | == ヒストンの修飾 == | ||
[[Image:Kinichinakashima fig 2.png|thumb|350px|'''図2.代表的なヒストンテール上アミノ酸の修飾'''<br>それぞれのヒストンコアタンパク質におけるヒストンテールの修飾のうち代表的なものを示した。左端がN末端を示す。ヒストンテールは多様な修飾を受け、その影響は修飾の種類や部位によって決まる(表1)。ヒストン修飾は遺伝子の発現制御などに重要な役割を果たしている。]] | [[Image:Kinichinakashima fig 2.png|thumb|350px|'''図2.代表的なヒストンテール上アミノ酸の修飾'''<br>それぞれのヒストンコアタンパク質におけるヒストンテールの修飾のうち代表的なものを示した。左端がN末端を示す。ヒストンテールは多様な修飾を受け、その影響は修飾の種類や部位によって決まる(表1)。ヒストン修飾は遺伝子の発現制御などに重要な役割を果たしている。]] | ||
ヒストンテールは多様な修飾を受け、その影響は修飾の種類や部位によって決まる(表1、表2、図2)。ヒストン修飾は遺伝子の発現制御などに重要な役割を果たしている。 | |||
=== ヒストンのアセチル化 === | === ヒストンのアセチル化 === | ||
33行目: | 52行目: | ||
ヒストンのメチル化は主にリジン残基に見られ、ヒストンH3ではK4、K9、K27、K36、K79が、ヒストンH4ではK20がメチル化されることが知られている。これらのメチル化の数は1~3つ(mono~tri)存在し、またそれぞれリン酸化される残基の位置によって転写の活性化に関与するものと抑制に関与するものが存在する。一般的にH3K4、K36、K79は転写活性化に関与し、H3K9、K27、H4K20は転写抑制に関与している。またリジン残基だけでなくアルギニン残基もメチル化され、転写制御に関わることが報告されている<ref><pubmed>12101096</pubmed></ref><ref><pubmed>11751582</pubmed></ref>。 | ヒストンのメチル化は主にリジン残基に見られ、ヒストンH3ではK4、K9、K27、K36、K79が、ヒストンH4ではK20がメチル化されることが知られている。これらのメチル化の数は1~3つ(mono~tri)存在し、またそれぞれリン酸化される残基の位置によって転写の活性化に関与するものと抑制に関与するものが存在する。一般的にH3K4、K36、K79は転写活性化に関与し、H3K9、K27、H4K20は転写抑制に関与している。またリジン残基だけでなくアルギニン残基もメチル化され、転写制御に関わることが報告されている<ref><pubmed>12101096</pubmed></ref><ref><pubmed>11751582</pubmed></ref>。 | ||
{| border="1" cellpadding="1" style=" | {| border="1" cellpadding="1" style="left" | ||
|+ '''表1:ヒストン修飾とその働き<ref name="ref2" />''' | |+ '''表1:ヒストン修飾とその働き<ref name="ref2" />''' | ||
|- | |- | ||
41行目: | 60行目: | ||
| style="text-align:center" | '''機能''' | | style="text-align:center" | '''機能''' | ||
|- | |- | ||
| rowspan="4" style="text-align:center | | rowspan="4" style="text-align:center" | '''H2A''' | ||
| style="text-align:center" | S1 | | style="text-align:center" | S1 | ||
| style="text-align:center" | リン酸化 | | style="text-align:center" | リン酸化 | ||
58行目: | 77行目: | ||
| style="text-align:center" | 転写活性化 | | style="text-align:center" | 転写活性化 | ||
|- | |- | ||
| rowspan="4" style="text-align:center | | rowspan="4" style="text-align:center" | '''H2B''' | ||
| style="text-align:center" | K5 | | style="text-align:center" | K5 | ||
| style="text-align:center" | アセチル化 | | style="text-align:center" | アセチル化 | ||
75行目: | 94行目: | ||
| style="text-align:center" | 転写活性化 | | style="text-align:center" | 転写活性化 | ||
|- | |- | ||
| rowspan="17" style="text-align:center | | rowspan="17" style="text-align:center" | '''H3''' | ||
| style="text-align:center" | T3 | | style="text-align:center" | T3 | ||
| style="text-align:center" | リン酸化 | | style="text-align:center" | リン酸化 | ||
141行目: | 160行目: | ||
| style="text-align:center" | 転写伸長 | | style="text-align:center" | 転写伸長 | ||
|- | |- | ||
| rowspan="7" style="text-align:center | | rowspan="7" style="text-align:center" | '''H4''' | ||
| style="text-align:center" | S1 | | style="text-align:center" | S1 | ||
| style="text-align:center" | リン酸化 | | style="text-align:center" | リン酸化 | ||
171行目: | 190行目: | ||
|- | |- | ||
|} | |} | ||
<br> | |||
{| border="1" cellpadding="1" style="left" | |||
{| border="1" cellpadding="1" style=" | |||
|+ '''表2:代表的なヒストン修飾酵素<ref name="ref2" /><ref><pubmed>16533707</pubmed></ref>''' | |+ '''表2:代表的なヒストン修飾酵素<ref name="ref2" /><ref><pubmed>16533707</pubmed></ref>''' | ||
|- | |- |