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大脳辺縁系の重要な機能の1つは、情動発現や情動行動の遂行であり、これらの機能に重要な役割を果たしているのが扁桃体である。まず初めに扁桃体の構造について、ラットとサルを比較しながら概説する。系統発生学的にサルとラットでは扁桃体を構成する神経核の発達が異なる。次に、サルとラットの扁桃体内部の線維結合の違いについて概説する。サルにおいては、内側の神経核から外側の神経核への投射が少ないが、ラットにおいてはそのような結合はサルよりも多く、内側と外側の神経核が相互に結合する。さらに、扁桃体への求心性線維と遠心性投射線維について概説する。最後に、扁桃体の破壊によって生じるKlüver-Bucy症候群や、ラットを用いて詳細に調べられてきた扁桃体の情動学習や情動記憶の機能、ヒトのイメージング研究によって提唱されている扁桃体の社会的認知機能を踏まえて、生得的に評価される価値や経験によって獲得された価値を含めた生物学的価値評価全般に扁桃体が重要な役割を果たしていることを提唱する。 | 大脳辺縁系の重要な機能の1つは、情動発現や情動行動の遂行であり、これらの機能に重要な役割を果たしているのが扁桃体である。まず初めに扁桃体の構造について、ラットとサルを比較しながら概説する。系統発生学的にサルとラットでは扁桃体を構成する神経核の発達が異なる。次に、サルとラットの扁桃体内部の線維結合の違いについて概説する。サルにおいては、内側の神経核から外側の神経核への投射が少ないが、ラットにおいてはそのような結合はサルよりも多く、内側と外側の神経核が相互に結合する。さらに、扁桃体への求心性線維と遠心性投射線維について概説する。最後に、扁桃体の破壊によって生じるKlüver-Bucy症候群や、ラットを用いて詳細に調べられてきた扁桃体の情動学習や情動記憶の機能、ヒトのイメージング研究によって提唱されている扁桃体の社会的認知機能を踏まえて、生得的に評価される価値や経験によって獲得された価値を含めた生物学的価値評価全般に扁桃体が重要な役割を果たしていることを提唱する。 | ||
== | == 扁桃体とは == | ||
MacLeanはPapezの情動回路を“大脳辺縁系(辺縁系:limbic system)”と名づけ、さらに解剖学的、機能的に関係した構造物として視床下部の一部、扁桃体、前頭葉眼窩皮質、および側坐核を付け加えている。一般的に、間脳を環状にとりまく古い皮質を中心とした領域が大脳辺縁系と呼ばれているが、その定義は研究者によって異なっている。しかし、辺縁系の重要な機能の1つは、情動発現や情動行動の遂行であることに異論はないであろう。これらの機能に重要な役割を果たしているのが扁桃体である。 | MacLeanはPapezの情動回路を“大脳辺縁系(辺縁系:limbic system)”と名づけ、さらに解剖学的、機能的に関係した構造物として視床下部の一部、扁桃体、前頭葉眼窩皮質、および側坐核を付け加えている。一般的に、間脳を環状にとりまく古い皮質を中心とした領域が大脳辺縁系と呼ばれているが、その定義は研究者によって異なっている。しかし、辺縁系の重要な機能の1つは、情動発現や情動行動の遂行であることに異論はないであろう。これらの機能に重要な役割を果たしているのが扁桃体である。 |