「パルミトイル化」の版間の差分

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=== 概説  ===
=== 概説  ===


 細胞質タンパク質に対するS-パルミトイル化はタンパク質合成直後にER膜やゴルジ膜に存在するPATにより行われる。その結果、タンパク質の疎水性が著しく上昇し、パルミトイル化タンパク質は細胞膜近傍へ輸送され、細胞膜に繋ぎとめられる(図3A)。続いて細胞膜に繋ぎとめられたパルミトイル化タンパク質はPPTにより脱パルミトイル化されると細胞膜から解放され、細胞質あるいはゴルジ体表面へと輸送される。最近、生細胞イメージングにより、H-Ras やGα<sub>q</sub>などのS-パルミトイル化タンパク質が、パルミトイルサイクルに応じて、細胞膜とゴルジ体の間をシャトリングする現象が明らかになった<ref name=Tsutsumi><pubmed>15705808</pubmed></ref><ref><pubmed>19001095</pubmed></ref>。 Gα<sub>q</sub>の''S''-パルミトイル化酵素であるDHHC3はゴルジ体膜上で機能しており、PATの局在部位と活性がシャトリングの場所と速度を規定すると考えられる<ref name=Tsutsumi><pubmed>15705808</pubmed></ref>。  
 細胞質タンパク質に対するS-パルミトイル化はタンパク質合成直後にER膜やゴルジ膜に存在するPATにより行われる。その結果、タンパク質の疎水性が著しく上昇し、パルミトイル化タンパク質は細胞膜近傍へ輸送され、細胞膜に繋ぎとめられる(図3A)。続いて細胞膜に繋ぎとめられたパルミトイル化タンパク質はPPTにより脱パルミトイル化されると細胞膜から解放され、細胞質あるいはゴルジ体表面へと輸送される。最近、生細胞イメージングにより、H-Ras やGα<sub>q</sub>などのS-パルミトイル化タンパク質が、パルミトイルサイクルに応じて、細胞膜とゴルジ体の間をシャトリングする現象が明らかになった<ref><pubmed>15705808</pubmed></ref><ref name=Tsutsumi><pubmed>19001095</pubmed></ref>。 Gα<sub>q</sub>の''S''-パルミトイル化酵素であるDHHC3はゴルジ体膜上で機能しており、PATの局在部位と活性がシャトリングの場所と速度を規定すると考えられる<ref name=Tsutsumi><pubmed>19001095</pubmed></ref>。  


 膜タンパク質に対するS-パルミトイル化も細胞質タンパク質と同様にゴルジ膜のPATにより行われる。膜タンパク質はS-パルミトイル化とは無関係にゴルジ体から細胞膜へ輸送されるが、S-パルミトイル化は[[脂質ラフト]]を代表とする細胞膜上の微小ドメインへの輸送(図3A、図3B-a)、タンパク質―タンパク質相互作用(図3B-b,c)、コンフォメーション変化によるタンパク質の活性制御において重要であると考えられている。<br>  
 膜タンパク質に対するS-パルミトイル化も細胞質タンパク質と同様にゴルジ膜のPATにより行われる。膜タンパク質はS-パルミトイル化とは無関係にゴルジ体から細胞膜へ輸送されるが、S-パルミトイル化は[[脂質ラフト]]を代表とする細胞膜上の微小ドメインへの輸送(図3A、図3B-a)、タンパク質―タンパク質相互作用(図3B-b,c)、コンフォメーション変化によるタンパク質の活性制御において重要であると考えられている。<br>