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一方で、特定の運動課題では健常成人であっても鏡像運動が観察される場合がある。例えば疲労を伴う運動課題、あるいは高い努力度合いを必要とする運動を行う場合で鏡像運動が観察される<ref name=ref12><pubmed>12070747</pubmed></ref>。また、片手で不慣れで複雑な運動課題を行う際にも反対側の手に随意運動と鏡像的な筋活動が観察される場合がある<ref name=ref1 />。 | 一方で、特定の運動課題では健常成人であっても鏡像運動が観察される場合がある。例えば疲労を伴う運動課題、あるいは高い努力度合いを必要とする運動を行う場合で鏡像運動が観察される<ref name=ref12><pubmed>12070747</pubmed></ref>。また、片手で不慣れで複雑な運動課題を行う際にも反対側の手に随意運動と鏡像的な筋活動が観察される場合がある<ref name=ref1 />。 | ||
== | ==神経メカニズム == | ||
鏡像運動が出現する条件は発育発達過程、神経学的疾患そして運動課題に依存して出現する等、その背景は多岐に渡っている。従って、その神経メカニズムについて複数の仮説が提案されている。近年Carson <ref name=ref13><pubmed>15904971</pubmed></ref>によってまとめられた鏡像運動に関わる神経メカニズムの仮説を以下に示す。 | 鏡像運動が出現する条件は発育発達過程、神経学的疾患そして運動課題に依存して出現する等、その背景は多岐に渡っている。従って、その神経メカニズムについて複数の仮説が提案されている。近年Carson <ref name=ref13><pubmed>15904971</pubmed></ref>によってまとめられた鏡像運動に関わる神経メカニズムの仮説を以下に示す。 | ||
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クリッペル・ファイル症候群<ref name=ref2 />、 X連鎖性カルマン症候群<ref name=ref3 /><ref name=ref4 />は、仮説の1, 2を支持する結果が報告されており、脳梗塞後<ref name=ref7 /><ref name=ref8 />又は幼少期<ref name=ref1 />に生じる鏡像運動は仮説の3, 4の可能性が支持されている。しかしながら、このように鏡像運動は複数の神経メカニズムが存在しする。従って、特定の状況下で生じる鏡像運動において複数の神経メカニズムが関与する可能性も否定できない。 | クリッペル・ファイル症候群<ref name=ref2 />、 X連鎖性カルマン症候群<ref name=ref3 /><ref name=ref4 />は、仮説の1, 2を支持する結果が報告されており、脳梗塞後<ref name=ref7 /><ref name=ref8 />又は幼少期<ref name=ref1 />に生じる鏡像運動は仮説の3, 4の可能性が支持されている。しかしながら、このように鏡像運動は複数の神経メカニズムが存在しする。従って、特定の状況下で生じる鏡像運動において複数の神経メカニズムが関与する可能性も否定できない。 | ||
== | ==急性動物モデルとその神経メカニズム == | ||
近年、[[マカクサル]]を用いた鏡像運動の急性動物モデルが確立され、一次運動野の機能失調が鏡像運動の出現に貢献する事が示されている<ref><pubmed>20846329</pubmed></ref>。 | 近年、[[マカクサル]]を用いた鏡像運動の急性動物モデルが確立され、一次運動野の機能失調が鏡像運動の出現に貢献する事が示されている<ref><pubmed>20846329</pubmed></ref>。 | ||
この動物モデルでは、左手指にて把持運動を行う運動課題において、右一次運動野に[[GABAA受容体|GABA<sub>A</sub>受容体]]のアゴニストである[[ムシモル]]を微量注入 (0.5-3μl) し、一時的に機能失調を生じさせることで、注入側と同側の右手指の鏡像運動を出現させることに成功した。これに加えて左の一次運動野へムシモルを注入したところ,この右手の鏡像運動が消失した。この動物モデルにおいて一次運動野の機能失調後に出現する鏡像運動の生成には鏡像運動肢と反対側一次運動野の関与が示された。つまりこの実験状況下では上述した仮説の3又は4を強く支持する結果である。この研究の実験手法はヒトの脳梗塞と障害部位や障害からの時間経過が異なるという問題点を持つが、脳損傷後の急性期に生じる鏡像運動の神経メカニズムを限局する上で重要な報告であった。このような動物モデルを含めた多方面からの研究により、種々の神経疾患における鏡像運動の神経メカニズムの解明が期待されている。 | この動物モデルでは、左手指にて把持運動を行う運動課題において、右一次運動野に[[GABAA受容体|GABA<sub>A</sub>受容体]]のアゴニストである[[ムシモル]]を微量注入 (0.5-3μl) し、一時的に機能失調を生じさせることで、注入側と同側の右手指の鏡像運動を出現させることに成功した。これに加えて左の一次運動野へムシモルを注入したところ,この右手の鏡像運動が消失した。この動物モデルにおいて一次運動野の機能失調後に出現する鏡像運動の生成には鏡像運動肢と反対側一次運動野の関与が示された。つまりこの実験状況下では上述した仮説の3又は4を強く支持する結果である。この研究の実験手法はヒトの脳梗塞と障害部位や障害からの時間経過が異なるという問題点を持つが、脳損傷後の急性期に生じる鏡像運動の神経メカニズムを限局する上で重要な報告であった。このような動物モデルを含めた多方面からの研究により、種々の神経疾患における鏡像運動の神経メカニズムの解明が期待されている。 | ||
==関連項目== | |||
(ございましたらご指摘下さい。) | |||
== 参考文献 == | == 参考文献 == |