「エクソサイトーシス」の版間の差分

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== 多様性 ==
== 多様性 ==
 
(編集コメント:出来れば小見出しをつけて頂ければと思います)
[[Image:PVR fig 1.png|thumb|300px|'''図1.開口放出の速さの多様性'''<ref name="ref1"><pubmed> 23073634 </pubmed></ref> ]]  
[[Image:PVR fig 1.png|thumb|300px|'''図1.開口放出の速さの多様性'''<ref name="ref1"><pubmed> 23073634 </pubmed></ref> ]]  


 調節性開口放出の場合には、刺激から開口放出が起きるまでの時間が1ミリ秒以下から100秒以上と10万倍以上に及ぶ<ref name="ref1"><pubmed> 23073634 </pubmed></ref>。この開口放出[[wikipedia:ja:時定数|時定数]]は開口放出を特徴づける大きな機能的指標であり(図1)、分子機構とも深く関連する。1-100ミリ秒で起きる速い開口放出の場合には、小胞と細胞膜が予め近接(ドック)している必要があり、更に、分泌関連タンパク質がある程度会合していることが予想される<ref name="ref1"><pubmed> 23073634 </pubmed></ref>。特に、1ミリ秒以下で開口放出の起きる超高速開口放出(ultrafast exocytosis)は[[シナプス前終末]]の[[アクティブゾーン]]でしか見られない<ref name="ref2"><pubmed>22794257 </pubmed></ref>。一方、100ミリ秒より遅い分泌については、分泌関連タンパク質は会合している必要はなく、また刺激後に小胞がドックするのでも十分間に合う。実際、大型有芯小胞の場合やシナプス小胞でも持続性の開口放出の場合は、刺激後に小胞がドックし、分泌関連タンパク質が会合するのが観察される。シナプス小胞の開口放出でも、持続的な反復刺激に対しては、細胞質に浮いている小胞のリサイクリングが開口放出を律速し、[[活動電位]]と開口放出のミリ秒の同期は消失する(図1)。この場合、持続的な細胞内Ca<sup>2+</sup>+上昇が細胞質に浮いている小胞を刺激して開口放出を起こしていることになる。シナプス後部でも、[[長期増強]](LTP)刺激の際には、[[樹状突起]]細胞質にある小胞の開口放出によりグルタミン酸受容体の細胞膜への秒単位の挿入が起きる。  
 調節性開口放出の場合には、刺激から開口放出が起きるまでの時間が1ミリ秒以下から100秒以上と10万倍以上に及ぶ<ref name="ref1"><pubmed> 23073634 </pubmed></ref>。この開口放出[[wikipedia:ja:時定数|時定数]]は開口放出を特徴づける大きな機能的指標であり(図1)、分子機構とも深く関連する。1-100ミリ秒で起きる速い開口放出の場合には、小胞と細胞膜が予め近接(ドック)している必要があり、更に、分泌関連タンパク質がある程度会合していることが予想される<ref name="ref1"><pubmed> 23073634 </pubmed></ref>。特に、1ミリ秒以下で開口放出の起きる超高速開口放出(ultrafast exocytosis)は[[シナプス前終末]]の[[アクティブゾーン]]でしか見られない<ref name="ref2"><pubmed>22794257 </pubmed></ref>。一方、100ミリ秒より遅い分泌については、分泌関連タンパク質は会合している必要はなく、また刺激後に小胞がドックするのでも十分間に合う。実際、大型有芯小胞の場合やシナプス小胞でも持続性の開口放出の場合は、刺激後に小胞がドックし、分泌関連タンパク質が会合するのが観察される。シナプス小胞の開口放出でも、持続的な反復刺激に対しては、細胞質に浮いている小胞のリサイクリングが開口放出を律速し、[[活動電位]]と開口放出のミリ秒の同期は消失する(図1)。この場合、持続的な細胞内Ca<sup>2+</sup>上昇が細胞質に浮いている小胞を刺激して開口放出を起こしていることになる。シナプス後部でも、[[長期増強]](LTP)刺激の際には、[[樹状突起]]細胞質にある小胞の開口放出によりグルタミン酸受容体の細胞膜への秒単位の挿入が起きる。  


 [[wikipedia:ja:内分泌細胞|内分泌細胞]]、[[wikipedia:ja:外分泌細胞|外分泌細胞]]や[[wikipedia:ja:血液|血液]]細胞の場合には、表面の小胞の細胞膜への融合だけでなく、膜融合が複数の小胞で複合的に進行することにより(複合型開口放出)、細胞質深層にある小胞がそのままの位置で細胞膜まで運ばれることなく開口放出し、貯蔵された小胞を効率よく放出する現象が見られる。これには、逐次的に内部に進行する様式(逐次開口放出)と先行して細胞質で融合してから開口放出に至る様式(多小胞性開口放出)がある。いずれも、神経でも用いられている可能性が指摘されている。  
 [[wikipedia:ja:内分泌細胞|内分泌細胞]]、[[wikipedia:ja:外分泌細胞|外分泌細胞]]や[[wikipedia:ja:血液|血液]]細胞の場合には、表面の小胞の細胞膜への融合だけでなく、膜融合が複数の小胞で複合的に進行することにより(複合型開口放出)、細胞質深層にある小胞がそのままの位置で細胞膜まで運ばれることなく開口放出し、貯蔵された小胞を効率よく放出する現象が見られる。これには、逐次的に内部に進行する様式(逐次開口放出)と先行して細胞質で融合してから開口放出に至る様式(多小胞性開口放出)がある。いずれも、神経でも用いられている可能性が指摘されている。  


 開口放出の初発過程は小胞膜と細胞膜という二つの[[wikipedia:ja:脂質二重膜|脂質二重膜]]の融合であり、この時に形成される脂質二重膜でできた小胞と細胞外を繋ぐ通り道のことを融合細孔(fusion pore)という<ref name="ref3"><pubmed>23245563 </pubmed></ref>。初期融合細孔は直径0.4nm位と推定され、ミリ秒の安定性を持ち、時々、再閉鎖、再開口したり、再閉鎖した結果そのまま小胞がエンドサイトーシスされることもある。直径50nm以下のシナプス小胞の場合、この初期融合細孔の数ミリ秒の開口で、神経伝達物質が放出されると推定される。これに対して、大型有芯小胞からのペプチドの分泌では、初期細孔を通ることはできずに、融合細孔が拡大し、最終的には小胞が細胞膜に平滑化する、完全融合が起きる<ref name="ref4"><pubmed>12193788 </pubmed></ref> 。  
 開口放出の初発過程は小胞膜と細胞膜という二つの[[wikipedia:ja:脂質二重膜|脂質二重膜]]の融合であり、この時に形成される脂質二重膜でできた小胞と細胞外を繋ぐ通り道のことを融合細孔(fusion pore)という<ref name="ref3"><pubmed>23245563 </pubmed></ref>。初期融合細孔は直径0.4nm位と推定され、ミリ秒の安定性を持ち、時々、再閉鎖、再開口したり、再閉鎖した結果そのまま小胞がエンドサイトーシスされることもある。直径50nm以下のシナプス小胞の場合、この初期融合細孔の数ミリ秒の開口で、神経伝達物質が放出されると推定される。これに対して、大型有芯小胞からのペプチドの分泌では、初期細孔を通ることはできずに、融合細孔が拡大し、最終的には小胞が細胞膜に平滑化する、完全融合が起きる<ref name="ref4"><pubmed>12193788 </pubmed></ref> 。


== 分子機構 ==
== 分子機構 ==