「エンハンサー」の版間の差分

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 転写の活性化の状態によって、エンハンサーにおけるヒストンの翻訳後修飾が異なる例が報告されている。ヒトES細胞において、転写が活性化されている遺伝子のエンハンサーでは、ヒストンH3の27番目のリジンがアセチル化されているが(H3K27ac)、転写がおきていない遺伝子のエンハンサーでは、メチル化されている(H3K27me3)<ref><pubmed>21160473</pubmed></ref>。ES細胞を分化させた時、新たに転写が活性化される遺伝子のエンハンサーでは、メチル化されていたヒストンがアセチル化される(H3K27me3 → H3K27ac)。逆に、分化する前は発現していて、分化した後に転写が抑制される遺伝子のエンハンサーでは、アセチル化されていたヒストンがメチル化される(H3K27ac → H3K27me3)。他の系においても、様々なヒストンの翻訳後修飾がみつかっており、遺伝子発現制御との関係が調べられている<ref name="ref7" />。<br>  
 転写の活性化の状態によって、エンハンサーにおけるヒストンの翻訳後修飾が異なる例が報告されている。ヒトES細胞において、転写が活性化されている遺伝子のエンハンサーでは、ヒストンH3の27番目のリジンがアセチル化されているが(H3K27ac)、転写がおきていない遺伝子のエンハンサーでは、メチル化されている(H3K27me3)<ref><pubmed>21160473</pubmed></ref>。ES細胞を分化させた時、新たに転写が活性化される遺伝子のエンハンサーでは、メチル化されていたヒストンがアセチル化される(H3K27me3 → H3K27ac)。逆に、分化する前は発現していて、分化した後に転写が抑制される遺伝子のエンハンサーでは、アセチル化されていたヒストンがメチル化される(H3K27ac → H3K27me3)。他の系においても、様々なヒストンの翻訳後修飾がみつかっており、遺伝子発現制御との関係が調べられている<ref name="ref7" />。<br>  


 最近になって、enhancer RNA (eRNA)とよばれるRNAがエンハンサーにおいて双方向に転写されて産生されることが見いだされた<ref><pubmed>20393465</pubmed></ref>。eRNAはタンパク質をコードせず、ポリアデニル化されない。エンハンサーが機能するときに産生されるが、エンハンサーの機能に関与しているかどうかは、まだよくわかっていない。一方、100塩基長以上の長さを持つノンコーディングRNA(lncRNA)が転写を調節する場合がある<ref><pubmed>20887892</pubmed></ref>。このlncRNAのほとんどは、一方向に転写されることにより産生され、ポリアデニル化される。このlncRNAのうち、''ncRNA-a7''と呼ばれるlncRNAをsiRNA法で阻害すると、近傍の遺伝子の転写が抑制される。''ncRNA-a7''遺伝子をリポーター遺伝子と連結すると、''ncRNA-a7''遺伝子の方向に関係なくリポーター遺伝子の転写が誘導される。このlncRNAが転写を誘導する詳しいメカニズムはまだよくわかっていない。ENCODEプロジェクトによると、これまで「junk DNA」であると考えられてきたヒトゲノムの領域から、9640のlncRNAが転写されることがわかった<ref><pubmed>22955616</pubmed></ref>。これらのlncRNAもまた、''ncRNA-a7''と同様に遺伝子の発現を制御している可能性がある。<br>  
 最近になって、enhancer RNA (eRNA)とよばれるRNAがエンハンサーにおいて双方向に転写されて産生されることが見いだされた<ref><pubmed>20393465</pubmed></ref>。eRNAはタンパク質をコードせず、ポリアデニル化されない。エンハンサーが機能するときに産生されるが、エンハンサーの機能に関与しているかどうかは、まだよくわかっていない。一方、100塩基長以上の長さを持つノンコーディングRNA(lncRNA)が転写を調節する場合がある<ref><pubmed>20887892</pubmed></ref>。このlncRNAのほとんどは、一方向に転写されることにより産生され、ポリアデニル化される。このlncRNAのうち、''ncRNA-a7''と呼ばれるlncRNAをsiRNA法で阻害すると、近傍の遺伝子の転写が抑制される。''ncRNA-a7''遺伝子をリポーター遺伝子と連結すると、''ncRNA-a7''遺伝子の方向に関係なくリポーター遺伝子の転写が誘導される。このlncRNAが転写を活性化する詳しいメカニズムはまだよくわかっていないが、siRNA法で阻害すると転写が抑制されることから、ncRNA-a7自身が転写の活性化に必要である。ENCODEプロジェクトによると、これまで「junk DNA」であると考えられてきたヒトゲノムの領域から、9640のlncRNAが転写されることがわかった<ref><pubmed>22955616</pubmed></ref>。これらのlncRNAもまた、''ncRNA-a7''と同様に遺伝子の発現を制御している可能性がある。<br>  


== 神経系におけるエンハンサー  ==
== 神経系におけるエンハンサー  ==
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