「プロテアソーム」の版間の差分

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== 分子構造と作動機構 ==
== 分子構造と作動機構 ==


[[image:プロテオソーム2.jpg|thumb|350px|'''図2.26S プロテアソームの構造モデル:分子形状とサブユニット構成'''<br>左図:26Sプロテアソーム(CPとRPの複合体)の電子顕微鏡による分子形状(単粒子解析: 独マックスプランク研究所W. Baumeister・S. Nickellから供与)。U:ユビキチン。右図:サブユニットの構成モデル.CP(20Sプロテアソーム)はα/βリングがαββαの順に会合した円柱状粒子。RP(PA700)はlid(蓋部)とbase(基底部)から構成された複合体。RPはRpn(RP non-ATPase)とRpt(RP triple-ATPase)サブユニット群から構成されている。Rpn10、Rpn13:ポリユビキチンリセプター、Rpn11:DUB、 β1 (カスパーゼ様活性), β2(トリプシン様活性), β5(キモトリプシン様活性):触媒サブユニット。図には示していないが、USP14はRpn1に、そして Uch37はRpn13を介してRpn2に会合している(図3参照)。]]
[[image:プロテオソーム2.jpg|thumb|350px|'''図2.26S プロテアソームの構造モデル:分子形状とサブユニット構成'''<br>左図:26Sプロテアソーム(CPとRPの複合体)の電子顕微鏡による分子形状(単粒子解析: 独マックスプランク研究所W. Baumeister・S. Nickellから供与)。U:ユビキチン。<br>右図:サブユニットの構成モデル.CP(20Sプロテアソーム)はα/βリングがαββαの順に会合した円柱状粒子。RP(PA700)はlid(蓋部)とbase(基底部)から構成された複合体。RPはRpn(RP non-ATPase)とRpt(RP triple-ATPase)サブユニット群から構成されている。Rpn10、Rpn13:ポリユビキチンリセプター、Rpn11:DUB、 β1 (カスパーゼ様活性), β2(トリプシン様活性), β5(キモトリプシン様活性):触媒サブユニット。図には示していないが、USP14はRpn1に、そして Uch37はRpn13を介してRpn2に会合している(図3参照)。]]
[[image:プロテオソーム3.jpg|thumb|350px|'''図3.26Sプロテアソームの作動機構モデル'''<br>Ub:ユビキチン、Rpn10、Rpn13:ユビキチンリセプター、Rpn11, USP14/(酵母のUbp6), Uch37:脱ユビキチン酵素。詳細は本文及び文献[11][12]参照。]]
[[image:プロテオソーム3.jpg|thumb|350px|'''図3.26Sプロテアソームの作動機構モデル'''<br>Ub:ユビキチン、Rpn10、Rpn13:ユビキチンリセプター、Rpn11, USP14/(酵母のUbp6), Uch37:脱ユビキチン酵素。詳細は本文及び文献[11][12]参照。]]
[[image:プロテオソーム4.jpg|thumb|350px|'''図4.26Sプロテアソームの分子集合機構パスウエイ'''<br>詳細は本文及び文献[25]参照。]]
[[image:プロテオソーム4.jpg|thumb|350px|'''図4.26Sプロテアソームの分子集合機構パスウエイ'''<br>詳細は本文及び文献[25]参照。]]
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 一方、最近臨床的に注目されているのは、プロテアソーム阻害剤のガン研究における貢献である。スレオニンプロテアーゼであるプロテアソームに対して、これまでに多種多様な(合成・天然)阻害剤が開発・発見されてきた。中でも脚光を浴びているのはPS-341(別名bortezomib、商品名velcade)である[60]。この阻害剤は血液ガンの一種である多発性骨髄腫に際だった効果(ミエローマ細胞のアポトーシス誘導)を示すことが報告され、2003年再発・難治性骨髄腫を対象疾患として米国FDAで認可、現在、欧米を中心に世界の85カ国(日本では2006年)以上で臨床応用されている。さらに副作用の少ない多くのプロテアソーム阻害剤の開発が世界中で凌ぎを削っており、また米国では既存の抗ガン剤との併用を視野に固形ガンを含め多数のガン治療への臨床治験が進行中である。
 一方、最近臨床的に注目されているのは、プロテアソーム阻害剤のガン研究における貢献である。スレオニンプロテアーゼであるプロテアソームに対して、これまでに多種多様な(合成・天然)阻害剤が開発・発見されてきた。中でも脚光を浴びているのはPS-341(別名bortezomib、商品名velcade)である[60]。この阻害剤は血液ガンの一種である多発性骨髄腫に際だった効果(ミエローマ細胞のアポトーシス誘導)を示すことが報告され、2003年再発・難治性骨髄腫を対象疾患として米国FDAで認可、現在、欧米を中心に世界の85カ国(日本では2006年)以上で臨床応用されている。さらに副作用の少ない多くのプロテアソーム阻害剤の開発が世界中で凌ぎを削っており、また米国では既存の抗ガン剤との併用を視野に固形ガンを含め多数のガン治療への臨床治験が進行中である。


===免疫疾患=== 
===免疫疾患===
 
 最近、免疫プロテアソームのキモトリプシン型活性をコードするβ5i遺伝子(PSMB8)のミスセンス変異が、中条-西村症候群(Nakajo-Nishimura Syndrome NNS:凍瘡様皮疹と限局性脂肪萎縮を伴う遺伝性周期熱症候群)を引き起こすことが判明した[61, 62]。NNSは、1939に発見された遺伝性疾病で、プロテアソームの分子集合異常に起因した機能不全のためにタンパク質の品質管理が破綻し、IL-6が過剰に産生されることによって引き起こされる炎症性疾患である。これはプロテアソームのヒト遺伝性疾患の最初の例であり、国内外で注目されている。
 最近、免疫プロテアソームのキモトリプシン型活性をコードするβ5i遺伝子(PSMB8)のミスセンス変異が、中条-西村症候群(Nakajo-Nishimura Syndrome NNS:凍瘡様皮疹と限局性脂肪萎縮を伴う遺伝性周期熱症候群)を引き起こすことが判明した[61, 62]。NNSは、1939に発見された遺伝性疾病で、プロテアソームの分子集合異常に起因した機能不全のためにタンパク質の品質管理が破綻し、IL-6が過剰に産生されることによって引き起こされる炎症性疾患である。これはプロテアソームのヒト遺伝性疾患の最初の例であり、国内外で注目されている。