「エンハンサー」の版間の差分

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 エンハンサーでは、ヒストンの翻訳後修飾が他の領域と異なり、ヒストンH3の4番目のリジンがモノメチル化またはジメチル化される(H3K4me1/ H3K4me2)<ref><pubmed>17277777</pubmed></ref>。また、H3.3やH2A.Zを含むヌクレオソームが存在し<ref><pubmed>19633671</pubmed></ref>、通常のヌクレオソームより不安定なため、転写活性化因子がDNAと容易に相互作用できると考えられている。ヒストンH3.3やH2A.Zを含むヌクレオソームは、プロモーターにも存在するが、ヒストンH3の4番目のリジンはトリメチル化されている(H3K4me3)。さらに、エンハンサーにおけるヒストンは、転写の活性化の状態によって様々に修飾される。例えば、ヒトES細胞では、エンハンサーが働いている時はヒストンH3の27番目のリジンがアセチル化されるが(H3K27ac)、機能していない時はメチル化される(H3K27me3)ことが知られている<ref><pubmed>21160473</pubmed></ref>。<br>  
 エンハンサーでは、ヒストンの翻訳後修飾が他の領域と異なり、ヒストンH3の4番目のリジンがモノメチル化またはジメチル化される(H3K4me1/ H3K4me2)<ref><pubmed>17277777</pubmed></ref>。また、H3.3やH2A.Zを含むヌクレオソームが存在し<ref><pubmed>19633671</pubmed></ref>、通常のヌクレオソームより不安定なため、転写活性化因子がDNAと容易に相互作用できると考えられている。ヒストンH3.3やH2A.Zを含むヌクレオソームは、プロモーターにも存在するが、ヒストンH3の4番目のリジンはトリメチル化されている(H3K4me3)。さらに、エンハンサーにおけるヒストンは、転写の活性化の状態によって様々に修飾される。例えば、ヒトES細胞では、エンハンサーが働いている時はヒストンH3の27番目のリジンがアセチル化されるが(H3K27ac)、機能していない時はメチル化される(H3K27me3)ことが知られている<ref><pubmed>21160473</pubmed></ref>。<br>  


 エンハンサーでは、enhancer RNA (eRNA)とよばれるRNAが双方向に転写されて産生されることがある<ref><pubmed>20393465</pubmed></ref>。eRNAはタンパク質をコードせず、ポリアデニル化されない。転写活性化因子p53が結合するエンハンサーの中には、その転写活性化能がeRNAに依存的なものがある<ref><pubmed>23273978</pubmed></ref>。しかし、eRNAが全てのエンハンサーの機能に関与するかはまだわかっていない。一方、100塩基以上の長さを持つノンコーディングRNA(lncRNA)が転写を調節する場合がある<ref><pubmed>20887892</pubmed></ref>。このlncRNAのほとんどは、一方向に転写されることにより産生され、ポリアデニル化される。このlncRNAのうち、''ncRNA-a7''と呼ばれるlncRNAをsiRNA法で阻害すると、近傍の遺伝子の転写が抑制される。''ncRNA-a7''遺伝子をリポーター遺伝子と連結すると、''ncRNA-a7''遺伝子の方向に関係なくリポーター遺伝子の転写が誘導される。このlncRNAが転写を活性化する詳しいメカニズムはまだよくわかっていない。ENCODEプロジェクトによると、これまで「junk DNA」であると考えられてきたヒトゲノムの領域から、9640のlncRNAが転写されることがわかった<ref><pubmed>22955616</pubmed></ref>。これらのlncRNAもまた、''ncRNA-a7''と同様に遺伝子の発現を制御している可能性がある。<br>  
 エンハンサーでは、enhancer RNA (eRNA)とよばれるRNAが双方向に転写されて産生されることがある<ref><pubmed>20393465</pubmed></ref>。eRNAはタンパク質をコードせず、ポリアデニル化されない。転写活性化因子p53が結合するエンハンサーの中には、その機能にeRNAを必要とするものがある<ref><pubmed>23273978</pubmed></ref>。しかし、eRNAが全てのエンハンサーの機能に関与するかはまだわかっていない。一方、100塩基以上の長さを持つノンコーディングRNA(lncRNA)が転写を活性化する場合がある<ref><pubmed>20887892</pubmed></ref>。lncRNAのほとんどは、一方向に転写され、ポリアデニル化される。''ncRNA-a7''と呼ばれるlncRNAの遺伝子をリポーター遺伝子と連結すると、''ncRNA-a7''遺伝子の位置や方向に関係なくリポーター遺伝子の転写が誘導される。lncRNAが転写を活性化する詳しいメカニズムはまだよくわかっていない。ENCODEプロジェクトによると、これまで「junk DNA」であると考えられてきたヒトゲノムの領域から、9640のlncRNAが転写されることがわかった<ref><pubmed>22955616</pubmed></ref><br>  


== 神経系におけるエンハンサー  ==
== 神経系におけるエンハンサー  ==
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