「サイクリン依存性タンパク質キナーゼ5」の版間の差分

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 サイクリン依存性キナーゼはプロリン指向性セリン・スレオニンキナーゼで基質のリン酸化部位は[S/T]PX[K/R]のコンセンサスモチーフを持つ(S/Tはリン酸化されるセリン・スレオニン、 Pはプロリン、Xは不特定のアミノ酸、KはリジンRはアルギニン)。Cdk5は様々な神経細胞特異的な数多くのタンパク質がリン酸化基質として同定されており、それぞれリン酸化による機能制御が報告されている(表1)。
 サイクリン依存性キナーゼはプロリン指向性セリン・スレオニンキナーゼで基質のリン酸化部位は[S/T]PX[K/R]のコンセンサスモチーフを持つ(S/Tはリン酸化されるセリン・スレオニン、 Pはプロリン、Xは不特定のアミノ酸、KはリジンRはアルギニン)。Cdk5は様々な神経細胞特異的な数多くのタンパク質がリン酸化基質として同定されており、それぞれリン酸化による機能制御が報告されている(表1)。


==神経系における機能==
また、Cdk5はキナーゼとしての機能以外に、[[グルタミン酸]]受容体のNR2Bとタンパク質分解酵素カルパインと複合体を形成し、カルパインによるNR2Bの分解を調整しており、Cdk5のタンパク質量の低下はNR2Bのポストシナプスでの量的増加を来す<ref name=ref9><pubmed>17529984</pubmed></ref>。さらに近年、神経細胞以外の細胞での機能が推定されている。オリゴデンドロサイトの分化での機能やCdk5によるPPARγのリン酸化がインスリン抵抗性の発生機序にかかわっている可能性が示唆されている<ref name=ref10><pubmed>20651683</pubmed></ref>。
===アルツハイマー病===
 [[アルツハイマー病]]患者脳でのp25の増加とCdk5活性の上昇が報告され、p25産生がタウタンパク質の過剰リン酸化と神経細胞死をもたらすという説が提唱されている<ref name=ref4 />。しかし、アルツハイマー病では逆にp25量は低下しており、Cdk5活性も必ずしも上昇していないとの反論もある。
===パーキンソン病、ハンチントン病===
その他パーキンソン病<ref name=ref5><pubmed>14595022</pubmed></ref>やハンチントン病<ref name=ref6><pubmed>15911879</pubmed></ref>などの神経変性疾患の病態に関与している可能性が示唆されている。これら病態でもパーキンやハッチンチンがCdk5の基質であり、Cdk5活性の上昇によりリン酸化型が増加することが病態と関連づけられるが、Cdk5が神経細胞死に対して保護的に働き、Cdk5活性が低下する細胞死を引き起こしやすくなるという報告がある<ref name=ref7><pubmed>18463240</pubmed></ref>。このように、Cdk5活性は神経細胞の生存において厳格に制御される必要があるが、神経機能においても同様であり、結合により活性を示さないサイクリンEとの結合もその活性制御に必要であることが示された<ref name=ref8><pubmed>21944720</pubmed></ref>。すなわち、サイクリンE量の低下はCdk5活性の上昇を来し、シナプス数やシナプス可塑性に影響を与えることが示された。


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==神経系における機能==
また、Cdk5はキナーゼとしての機能以外に、[[グルタミン酸]]受容体のNR2Bとタンパク質分解酵素カルパインと複合体を形成し、カルパインによるNR2Bの分解を調整しており、Cdk5のタンパク質量の低下はNR2Bのポストシナプスでの量的増加を来す<ref name=ref9><pubmed>17529984</pubmed></ref>。さらに近年、神経細胞以外の細胞での機能が推定されている。オリゴデンドロサイトの分化での機能やCdk5によるPPARγのリン酸化がインスリン抵抗性の発生機序にかかわっている可能性が示唆されている<ref name=ref10><pubmed>20651683</pubmed></ref>。
===アルツハイマー病===
 [[アルツハイマー病]]患者脳でのp25の増加とCdk5活性の上昇が報告され、p25産生がタウタンパク質の過剰リン酸化と神経細胞死をもたらすという説が提唱されている<ref name=ref4 />。しかし、アルツハイマー病では逆にp25量は低下しており、Cdk5活性も必ずしも上昇していないとの反論もある。
===パーキンソン病、ハンチントン病===
その他パーキンソン病<ref name=ref5><pubmed>14595022</pubmed></ref>やハンチントン病<ref name=ref6><pubmed>15911879</pubmed></ref>などの神経変性疾患の病態に関与している可能性が示唆されている。これら病態でもパーキンやハッチンチンがCdk5の基質であり、Cdk5活性の上昇によりリン酸化型が増加することが病態と関連づけられるが、Cdk5が神経細胞死に対して保護的に働き、Cdk5活性が低下する細胞死を引き起こしやすくなるという報告がある<ref name=ref7><pubmed>18463240</pubmed></ref>。このように、Cdk5活性は神経細胞の生存において厳格に制御される必要があるが、神経機能においても同様であり、結合により活性を示さないサイクリンEとの結合もその活性制御に必要であることが示された<ref name=ref8><pubmed>21944720</pubmed></ref>。すなわち、サイクリンE量の低下はCdk5活性の上昇を来し、シナプス数やシナプス可塑性に影響を与えることが示された。
==関連==
(特に関連性の強い項目があれば御指摘下さい)


== 参考文献 ==
== 参考文献 ==