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 1951年、Falconerにより、運動失調を呈する自然発症マウスが発見された。このマウスは、千鳥足のような歩き方(reeling gait)をするため、reeler(リーラー)と名付けられた。リーラーマウスの脳構造には、多くの異常が認められ、運動を司る小脳が非常に小さいこと、また[[大脳皮質]]の神経細胞の配置は概ね逆転する。そのため、リーラーマウスの原因遺伝子は正常な脳の形成に必須な分子であることが推察された。
 1951年、Falconerにより、運動失調を呈する自然発症マウスが発見された。このマウスは、千鳥足のような歩き方(reeling gait)をするため、reeler(リーラー)と名付けられた。リーラーマウスの脳構造には、多くの異常が認められ、運動を司る小脳が非常に小さいこと、また[[大脳皮質]]の神経細胞の配置は概ね逆転する。そのため、リーラーマウスの原因遺伝子は正常な脳の形成に必須な分子であることが推察された。
 1995年に、Tom curranのグループは、c-fos遺伝子の[[トランスジェニックマウス]]を作製中に、偶然リーラー遺伝子にトランスジーンが挿入されたマウスを得た。このマウスを利用することにより、全長cDNAを報告し、リーラーの原因遺伝子をリーリン(Reelin)と名付けた<ref><pubmed> 7715726 </pubmed></ref>。また同じ頃、林崎、Goffinetらのグループもポジショナルクローニング法により、部分配列を同定した。
 1995年に、Tom curranのグループは、c-fos遺伝子の[[トランスジェニックマウス]]を作製中に、偶然リーラー遺伝子にトランスジーンが挿入されたマウスを得た。このマウスを利用することにより、全長cDNAを報告し、リーラーの原因遺伝子をリーリン(Reelin)と名付けた<ref><pubmed> 7715726 </pubmed></ref>。また同じ頃、林崎、Goffinetらのグループもポジショナルクローニング法により、部分配列を同定した。
 御子柴らのグループは、野生型マウスの脳抽出物を、リーラーマウスに免疫することでリーラーマウスにおいて欠失した蛋白質に対するモノクローナル抗体の樹立を試み、CR-50抗体を樹立した<ref><pubmed> 7748558 </pubmed></ref>。CR-50抗体は野生型マウス大脳皮質のカハール・レチウス細胞を標識することを見いだし、リーラーマウスで欠失する蛋白質が、カハール・レチウス細胞に発現する事が明らかになった<ref><pubmed> 7748558 </pubmed></ref>。後に、CR-50の抗原がリーリン蛋白質のN末端側を認識することが確認された。
 御子柴らのグループは、野生型マウスの脳抽出物を、リーラーマウスに免疫することでリーラーマウスにおいて欠失した蛋白質に対するモノクローナル抗体の樹立を試み、CR-50抗体を樹立した。CR-50抗体は野生型マウス大脳皮質のカハール・レチウス細胞を標識することを見いだし、リーラーマウスで欠失する蛋白質が、カハール・レチウス細胞に発現する事が明らかになった<<ref><pubmed> 7748558 </pubmed></ref>。後に、CR-50の抗原がリーリン蛋白質のN末端側を認識することが確認された。




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 リーリンは、マウスでは全長3461アミノ酸残基(エキソン65個)からなり、分泌シグナルに続いてN末端領域、8回の繰り返し構造(リーリンリピート)、そして塩基性アミノ酸に富むC末端領域(CTR)からなる<ref><pubmed> 7715726 </pubmed></ref>。
 リーリンは、マウスでは全長3461アミノ酸残基(エキソン65個)からなり、分泌シグナルに続いてN末端領域、8回の繰り返し構造(リーリンリピート)、そして塩基性アミノ酸に富むC末端領域(CTR)からなる<ref><pubmed> 7715726 </pubmed></ref>。
 N末端領域は、F-スポンジンとの相同性を弱く持つが、他の領域に関しては、相同性の高い蛋白質は存在しない。それぞれのリーリンリピートは、3つのドメインを持ち、中央に[[EGF]]様モチーフ、さらにこれを挟むようにサブリピートAとサブリピートBが存在する。3番目のリーリンリピートの構造解析の結果、サブリピート同士は互いに接し、馬蹄の様な構造をとる事が分かった<ref><pubmed> 18787202 </pubmed></ref>。CTRは、わずか32アミノ酸残基からなり塩基性に富み、その一次構造は種を超えて高度に保存されている<ref><pubmed> 17504759 </pubmed></ref>。フレームシフト変異により8番目のリーリンリピートの一部とCTRを欠くリーリンを発現するリーラーオルレアンマウスでは、リーリンは細胞外に分泌されない(12)。そのため、リーリンのCTRはリーリンの分泌に必須であると考えられてきた。しかし、CTRのみを欠くリーリンは分泌効率が低いものの細胞外に分泌されること、CTRをFLAG-tagなどに置換した場合では効率的に分泌されることが判った。そのため、CTRは分泌には必須ではないことが明らかになった<ref><pubmed> 17504759 </pubmed></ref>。
 N末端領域は、F-スポンジンとの相同性を弱く持つが、他の領域に関しては、相同性の高い蛋白質は存在しない。それぞれのリーリンリピートは、3つのドメインを持ち、中央に[[EGF]]様モチーフ、さらにこれを挟むようにサブリピートAとサブリピートBが存在する。3番目のリーリンリピートの構造解析の結果、サブリピート同士は互いに接し、馬蹄の様な構造をとる事が分かった<ref><pubmed> 18787202 </pubmed></ref>。CTRは、わずか32アミノ酸残基からなり塩基性に富み、その一次構造は種を超えて高度に保存されている。フレームシフト変異により8番目のリーリンリピートの一部とCTRを欠くリーリンを発現するリーラーオルレアンマウスでは、リーリンは細胞外に分泌されない(12)。そのため、リーリンのCTRはリーリンの分泌に必須であると考えられてきた。しかし、CTRのみを欠くリーリンは分泌効率が低いものの細胞外に分泌されること、CTRをFLAG-tagなどに置換した場合では効率的に分泌されることが判った。そのため、CTRは分泌には必須ではないことが明らかになった<ref><pubmed> 17504759 </pubmed></ref>。
 リーリンは、リーリンリピートの2番目と3番目の間付近(N-t site)と、6番目と7番目のリーリンリピートの間付近(C-t site)の2カ所で分解を受け、この分解を担うプロテアーゼが、2価金属イオンを必要とする[[メタロプロテアーゼ]]であることが示唆された(16)。[[初代培養神経]]細胞の上清は、リーリンを分解する活性を持つことから、分泌型のプロテアーゼがリーリン分解を担うことが示唆された(17)。リーリン分解活性を持つプロテアーゼは、長い間不明であったが、最近[[ADAMTS]]-4、ADAMTS-5や[[tPA]]にリーリン分解活性があることが判った(18,19)。
 リーリンは、リーリンリピートの2番目と3番目の間付近(N-t site)と、6番目と7番目のリーリンリピートの間付近(C-t site)の2カ所で分解を受け、この分解を担うプロテアーゼが、2価金属イオンを必要とする[[メタロプロテアーゼ]]であることが示唆された(16)。[[初代培養神経]]細胞の上清は、リーリンを分解する活性を持つことから、分泌型のプロテアーゼがリーリン分解を担うことが示唆された(17)。リーリン分解活性を持つプロテアーゼは、長い間不明であったが、最近[[ADAMTS]]-4、ADAMTS-5や[[tPA]]にリーリン分解活性があることが判った(18,19)。
 リーリンはApoER2/VLDLRに結合したのち、エンドサイトーシスにより細胞内に取り込まれ、取り込まれたリーリンはN-t siteで分解を受けること、これにより生じたN末断片は、Rab11依存的な経路により細胞外に再分泌されることが分かった(20)。そのため、リーリンは細胞外、及び細胞内の両方で分解を受けることが示唆される。また、N末断片はApoER2やVLDLRを介さない経路により神経細胞に作用し、樹状突起の成熟を制御することが報告されている(21)。
 リーリンはApoER2/VLDLRに結合したのち、エンドサイトーシスにより細胞内に取り込まれ、取り込まれたリーリンはN-t siteで分解を受けること、これにより生じたN末断片は、Rab11依存的な経路により細胞外に再分泌されることが分かった(20)。そのため、リーリンは細胞外、及び細胞内の両方で分解を受けることが示唆される。また、N末断片はApoER2やVLDLRを介さない経路により神経細胞に作用し、樹状突起の成熟を制御することが報告されている(21)。
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