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英:Golgi body, Golgi | <div align="right"> | ||
<font size="+1">中田 隆夫</font><br> | |||
''東京医科歯科大学''<br> | |||
DOI XXXX/XXXX 原稿受付日:2012年4月28日 原稿完成日:2013年月日<br> | |||
担当編集委員:[http://researchmap.jp/2rikenbsi 林 康紀](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br> | |||
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英:Golgi body, Golgi apparatus 独:Golgi-Apparat 仏:appareil de Golgi | |||
同義語:[[ゴルジ装置]] | 同義語:[[ゴルジ装置]] | ||
[[wikipedia:ja: | {{box|text= [[wikipedia:ja:カミッロ・ゴルジ|Golgi]]によって発見された、膜タンパク質や分泌タンパク質の成熟と振り分けに関与する[[wikipedia:ja:細胞内小器官|細胞内小器官]]の一つ。[[wikipedia:ja:脂質二重層|脂質二重層]]の膜でかこまれた扁平な袋状の層板が数層とそれを取り巻く小胞からなる。ゴルジ体のシス側とトランス側では層板に含まれる[[wikipedia:ja:糖鎖付加酵素|糖鎖付加酵素]]が異なっており、新しくつくられた[[膜タンパク質]]や[[分泌タンパク質]]は、[[粗面小胞体]]から[[小胞輸送]]によってゴルジ体のシス側の層板に運ばれた後、トランス側 へと移動しながら糖鎖を付加され成熟していく。さらにトランスゴルジネットワークでは輸送タンパク質の振り分け(sorting)が行われるとされている。長らく、新しく作られたタンパク質は小胞にのって層板間を移動していると考えられていたが、最近、同じ層板に乗ったままで層板ごとトランス方向に移動し、一方、糖鎖を付加する酵素の方が小胞に乗って、トランス側の層板からシス側の層板に逆輸送される事が明らかにされた。}} | ||
(編集部作成。内容をご確認下さい) | |||
==ゴルジ体とは== | ==ゴルジ体とは== | ||
[[wikipedia:ja:赤血球|赤血球]]を除くすべての[[wikipedia:ja:真核生物|真核生物]]の[[wikipedia:ja:細胞内小器官|細胞内小器官]]の一つであり、[[wikipedia:ja:カミッロ・ゴルジ|Golgi]] | [[wikipedia:ja:赤血球|赤血球]]を除くすべての[[wikipedia:ja:真核生物|真核生物]]の[[wikipedia:ja:細胞内小器官|細胞内小器官]]の一つであり、[[wikipedia:ja:カミッロ・ゴルジ|Golgi]]によって発見された。 神経細胞では[[wikipedia:ja:核|核]]の周囲にあることが確認されているが、樹状突起や軸索に存在するかは確立されていない。(イントロダクションを御願い致します) | ||
==形態・細胞内分布== | ==形態・細胞内分布== | ||
{| width="240" border="1" cellpadding="1" cellspacing="1" style="float:right" class="wikitable" | {| width="240" border="1" cellpadding="1" cellspacing="1" style="float:right" class="wikitable" | ||
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| | | [[File:ERG.jpg|219x320px]] | ||
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| '''動画 [[GFP]]ラベルした温度感受性ウィルス膜タンパク質VSV-Gが培養[[海馬]]神経細胞内で小胞体からゴルジ体へ移る過程'''<br>39℃ではVSV-Gは租面小胞体にあり、細胞体樹状突起全体に均一に分布する。その後温度を下げると、租面小胞体からゴルジ体への移動が起こる。まず、一様な分布をしていたVSV-Gが細胞の各部分で小さな輝く点となり、移動を始める。輝点は細胞体内で融合してゴルジ体に局在する。細胞体の下から出て左側にカーブする突起が[[軸索]]で、他の突起が樹状突起である。これら以外の細い突起は、他の神経から伸びた軸索である。 | | '''動画 [[GFP]]ラベルした温度感受性ウィルス膜タンパク質VSV-Gが培養[[海馬]]神経細胞内で小胞体からゴルジ体へ移る過程'''<br>39℃ではVSV-Gは租面小胞体にあり、細胞体樹状突起全体に均一に分布する。その後温度を下げると、租面小胞体からゴルジ体への移動が起こる。まず、一様な分布をしていたVSV-Gが細胞の各部分で小さな輝く点となり、移動を始める。輝点は細胞体内で融合してゴルジ体に局在する。細胞体の下から出て左側にカーブする突起が[[軸索]]で、他の突起が樹状突起である。これら以外の細い突起は、他の神経から伸びた軸索である。 | ||
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==機能== | ==機能== | ||
=== | ===タンパク質成熟と振り分け=== | ||
新しくつくられた[[膜タンパク質]]や[[分泌タンパク質]]は、[[粗面小胞体]]([[rough ER]])から[[小胞輸送]](vesicular transport)によってゴルジ体の一側(シス側 cis-)の層板に運ばれた後、ゴルジ体内をシス側から対側(トランス側 trans-)へと移動しながら糖鎖を付加される<ref>'''Bruce Alberts et al.''' <br> ''Molecular Biology of the Cell'' 3rd ed 1994, 5th ed 2008<br>Garland Publishing,Inc /NewYork </ref> 。ゴルジ体のシスとトランスでは層板に含まれる[[wikipedia:ja:糖鎖付加酵素|糖鎖付加酵素]]が異なっており、新しくつくられた膜タンパク質や分泌タンパク質はゴルジ体内を移動しながら成熟していく。トランスゴルジネットワークでは輸送タンパク質の振り分け(sorting)が行われるとされている。 | 新しくつくられた[[膜タンパク質]]や[[分泌タンパク質]]は、[[粗面小胞体]]([[rough ER]])から[[小胞輸送]](vesicular transport)によってゴルジ体の一側(シス側 cis-)の層板に運ばれた後、ゴルジ体内をシス側から対側(トランス側 trans-)へと移動しながら糖鎖を付加される<ref name=ref2>'''Bruce Alberts et al.''' <br> ''Molecular Biology of the Cell'' 3rd ed 1994, 5th ed 2008<br>Garland Publishing,Inc /NewYork </ref> 。ゴルジ体のシスとトランスでは層板に含まれる[[wikipedia:ja:糖鎖付加酵素|糖鎖付加酵素]]が異なっており、新しくつくられた膜タンパク質や分泌タンパク質はゴルジ体内を移動しながら成熟していく。トランスゴルジネットワークでは輸送タンパク質の振り分け(sorting)が行われるとされている。 | ||
[[wikipedia:ja:調節性分泌|調節性分泌]](regulated secretion)される内外[[wikipedia:ja:分泌細胞|分泌細胞]]の分泌タンパク質は球状の[[wikipedia:ja:分泌顆粒|分泌顆粒]](secretory ganules)に振り分けられ、分泌刺激があるまで細胞内に蓄積される。[[wikipedia:ja:恒常性分泌|恒常性分泌]](constitutive secretion)される一般細胞の分泌タンパク質([[wikipedia:ja:コラーゲン|コラーゲン]]、[[wikipedia:ja:アルブミン|アルブミン]]など)や膜タンパク質は、管状胞状のオルガネラによって、[[細胞膜]]に輸送され、随時分泌される。[[リソソーム]](lysosome)へのタンパク質の振り分けもトランスゴルジネットワークで行われる。 | [[wikipedia:ja:調節性分泌|調節性分泌]](regulated secretion)される内外[[wikipedia:ja:分泌細胞|分泌細胞]]の分泌タンパク質は球状の[[wikipedia:ja:分泌顆粒|分泌顆粒]](secretory ganules)に振り分けられ、分泌刺激があるまで細胞内に蓄積される。[[wikipedia:ja:恒常性分泌|恒常性分泌]](constitutive secretion)される一般細胞の分泌タンパク質([[wikipedia:ja:コラーゲン|コラーゲン]]、[[wikipedia:ja:アルブミン|アルブミン]]など)や膜タンパク質は、管状胞状のオルガネラによって、[[細胞膜]]に輸送され、随時分泌される。[[リソソーム]](lysosome)へのタンパク質の振り分けもトランスゴルジネットワークで行われる。 | ||
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膜タンパク質や分泌タンパク質がゴルジ体内を移動しながら成熟していくことについて、古くからある論争に層板成熟説(cisternae maturation hypothesis)と小胞輸送説(vesicular transport hypothesis)がある。成熟説とは、新しくつくられたタンパク質が、層板間を移動せず、層板自体がシスに移動し、成熟するというもの。小胞輸送説は、層板は移動せず、新しく作られたタンパク質が小胞に乗って層板間をシスからトランスへと移動するというものである。1970年代、正常なゴルジ体とトランス側の酵素を持たない変異ゴルジ体を試験管内で混ぜると、変異ゴルジ体で途中までしか糖鎖が付加していなかった膜タンパク質に最後まで糖が付加されることが巧妙な実験でわかった。変異ゴルジ体内にあった膜タンパク質が、正常なゴルジ体にしかない酵素の作用をうけるのだから、両者間でタンパク質の移動があった強い証拠であり、小胞輸送説を支持する結果と考えられた。 | 膜タンパク質や分泌タンパク質がゴルジ体内を移動しながら成熟していくことについて、古くからある論争に層板成熟説(cisternae maturation hypothesis)と小胞輸送説(vesicular transport hypothesis)がある。成熟説とは、新しくつくられたタンパク質が、層板間を移動せず、層板自体がシスに移動し、成熟するというもの。小胞輸送説は、層板は移動せず、新しく作られたタンパク質が小胞に乗って層板間をシスからトランスへと移動するというものである。1970年代、正常なゴルジ体とトランス側の酵素を持たない変異ゴルジ体を試験管内で混ぜると、変異ゴルジ体で途中までしか糖鎖が付加していなかった膜タンパク質に最後まで糖が付加されることが巧妙な実験でわかった。変異ゴルジ体内にあった膜タンパク質が、正常なゴルジ体にしかない酵素の作用をうけるのだから、両者間でタンパク質の移動があった強い証拠であり、小胞輸送説を支持する結果と考えられた。 | ||
20世紀末、この系を使ってゴルジ体層板と小胞の融合に関わるタンパク質([[NSF]], [[α-SNAP]], [[t-SNARE]], [[v-SNARE]])が同定され, 小胞輸送説が支配的となった。細胞生物学の教科書もそれに倣った記述がなされた(例えばMolecular Biology of the Cell 3rd editionと5th | 20世紀末、この系を使ってゴルジ体層板と小胞の融合に関わるタンパク質([[NSF]], [[α-SNAP]], [[t-SNARE]], [[v-SNARE]])が同定され, 小胞輸送説が支配的となった。細胞生物学の教科書もそれに倣った記述がなされた(例えばMolecular Biology of the Cell 3rd editionと5th editionを比較せよ)<ref name=ref2 />。 | ||
ところが、1998年にコラーゲンの分泌を詳細に観察した実験から、コラーゲンはゴルジ体内ですでに大きな線維を形成し、とても小胞には収まりきらないにも拘わらず、粛々とシス側に移行することが分かり、層板成熟説が再び復活した<ref><pubmed> 9875853 </pubmed></ref> 。 | ところが、1998年にコラーゲンの分泌を詳細に観察した実験から、コラーゲンはゴルジ体内ですでに大きな線維を形成し、とても小胞には収まりきらないにも拘わらず、粛々とシス側に移行することが分かり、層板成熟説が再び復活した<ref><pubmed> 9875853 </pubmed></ref> 。 | ||
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