「シュワン細胞」の版間の差分

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 シュワン細胞は軸索と接することによりDNA合成が促され、細胞増殖が活発になるが、そのメカニズムには軸索由来のNRGの関与が示唆されている。発生途中に軸索を除去するとシュワン細胞は脱落するが、NRG-1処置により生存が維持される。NRGあるいはその受容体のErbB3のシグナルを中和すると、軸索シュワン細胞の増殖は低下する。このことから、軸索由来のNRGがシュワン細胞の増殖・生存の維持に寄与していると考えられている。 
 シュワン細胞は軸索と接することによりDNA合成が促され、細胞増殖が活発になるが、そのメカニズムには軸索由来のNRGの関与が示唆されている。発生途中に軸索を除去するとシュワン細胞は脱落するが、NRG-1処置により生存が維持される。NRGあるいはその受容体のErbB3のシグナルを中和すると、軸索シュワン細胞の増殖は低下する。このことから、軸索由来のNRGがシュワン細胞の増殖・生存の維持に寄与していると考えられている。 


 NGR-1、ErbB2,3、ならびにSox10欠損マウスではシュワン細胞の欠損が生じるが、さらに投射途中の後根神経節の神経細胞や運動神経細胞で神経[[細胞死]]も観察される。これは、シュワン細胞による神経細胞への栄養因子供給が欠如するためと示唆されている。
 NGR-1、ErbB2,3、ならびにSox10欠損マウスではシュワン細胞の欠損が生じるが、さらに投射途中の[[後根神経]]節の神経細胞や運動神経細胞で神経[[細胞死]]も観察される。これは、シュワン細胞による神経細胞への栄養因子供給が欠如するためと示唆されている。


 ラット胎生14日ごろの末梢神経では、シュワン前駆細胞が神経の外縁部や内部に分布し、多くの軸索を包み込もうとしている。それらは互いにシート状の突起で連絡しはじめ、胎生18日に組織間隙との交通がないコンパクトな状態となり、軸索を束状化させる。NGRシグナル欠損マウスでは、異所性に併走する軸索がしばしば観察され、これはミエリンによる囲い込みが不完全な結果と示唆されている。すなわちNRGは間接的に軸索の束状化にも寄与する<ref><pubmed>18803318</pubmed></ref>。
 ラット胎生14日ごろの末梢神経では、シュワン前駆細胞が神経の外縁部や内部に分布し、多くの軸索を包み込もうとしている。それらは互いにシート状の突起で連絡しはじめ、胎生18日に組織間隙との交通がないコンパクトな状態となり、軸索を束状化させる。NGRシグナル欠損マウスでは、異所性に併走する軸索がしばしば観察され、これはミエリンによる囲い込みが不完全な結果と示唆されている。すなわちNRGは間接的に軸索の束状化にも寄与する<ref><pubmed>18803318</pubmed></ref>。