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細 (→健忘症候群を来す主な疾患) |
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<font size="+1">佐藤 正之、冨本 秀和</font><br> | |||
''三重大学大学院医学研究科 神経病態内科学''<br> | |||
DOI XXXX/XXXX 原稿受付日:2012年3月28日 原稿完成日:2013年月日<br> | |||
担当編集委員:[http://researchmap.jp/ryosuketakahashi 高橋 良輔](京都大学 大学院医学研究科)<br> | |||
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英語名:amnestic syndrome 独:amnestische Syndrome 仏:syndrome amnestique | 英語名:amnestic syndrome 独:amnestische Syndrome 仏:syndrome amnestique | ||
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健忘症候群とは、新しい情報を獲得したり保持することの障害で、他の[[認知機能]]が比較的保たれている状態を表す<ref name=ref1>'''Loring DW.'''<br>INS Dictionary of neuropsychology.<br>''Oxford University Press'', New York, 1999</ref>。より広義には過去の記憶の想起の障害をも含んだ、記憶障害を主症状とする症候全般を表す。健忘は、[[認知症]]や[[高次脳機能障害]]の主要症状で、患者の[[wikipedia:JA:生活の質|生活の質]](quality of daily life, QOL)を下げ介護を困難にする大きな要因である。本稿では、最初に記憶の分類と神経機構について述べ、次いで健忘症候群に含まれる主な疾患を解説する。 | 健忘症候群とは、新しい情報を獲得したり保持することの障害で、他の[[認知機能]]が比較的保たれている状態を表す<ref name=ref1>'''Loring DW.'''<br>INS Dictionary of neuropsychology.<br>''Oxford University Press'', New York, 1999</ref>。より広義には過去の記憶の想起の障害をも含んだ、記憶障害を主症状とする症候全般を表す。健忘は、[[認知症]]や[[高次脳機能障害]]の主要症状で、患者の[[wikipedia:JA:生活の質|生活の質]](quality of daily life, QOL)を下げ介護を困難にする大きな要因である。本稿では、最初に記憶の分類と神経機構について述べ、次いで健忘症候群に含まれる主な疾患を解説する。 | ||
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== 症例と機能解剖 == | == 症例と機能解剖 == | ||
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=== 記憶に関する歴史的症例=== | === 記憶に関する歴史的症例=== | ||
[[Image:図1Papez回路(青・赤矢印)とYakovlev回路(緑矢印).jpg|thumb|280px|<b> | [[Image:図1Papez回路(青・赤矢印)とYakovlev回路(緑矢印).jpg|thumb|280px|<b>図1.Papez回路(青・赤矢印)とYakovlev回路(緑矢印)</b><br />A:[[視床前核]], CA:[[固有海馬]], D:[[歯状回]], MB:[[乳頭体]], PM:[[視床背内側核]]。Nolte J. eds. The Human Brain. An introduction to its functional anatomy. Figure 24-20 を改変。]] | ||
[[Image:図2アセチルコリン神経系の分布.png|thumb|500px|<b> | [[Image:図2アセチルコリン神経系の分布.png|thumb|500px|<b>図2.アセチルコリン神経系の分布<br />(佐藤 2012<ref name=ref5>'''佐藤正之'''<br>レヴィ小体型認知症.河村満編、認知症:神経心理学的アプローチ.<br>中山書店、東京、2012, pp.211-221.</ref>を引用)</b><br />1:[[内側中隔核]](Ch1) 2:[[ブローカ対角帯・背側部]](Ch2) 3:[[ブローカ対角帯・腹側部]](Ch3) 4:[[マイネルト基底核]](Ch4) 5:[[海馬]] 6:[[扁桃体]] 7:[[嗅神経]] 8:[[脳梁]] 9:[[脳弓]] 10:[[帯状回]] 11:[[前頭葉]] 12:[[頭頂葉]] 13:[[後頭葉]]]] | ||
====患者HM==== | ====患者HM==== | ||
[[wikipedia:Paul Broca|Broca]]による[[wikipedia:Paul_Broca#Speech_research|タン氏]]の報告に代表されるように、神経心理学ではある一人の患者の存在が学問を大きく進展させることがある。記憶についても同様で、二人の患者なかでも[[HM]]の脳損傷とその結果現れた症状により、ヒトの記憶のメカニズムの研究がおおいに進んだ。 | [[wikipedia:Paul Broca|Broca]]による[[wikipedia:Paul_Broca#Speech_research|タン氏]]の報告に代表されるように、神経心理学ではある一人の患者の存在が学問を大きく進展させることがある。記憶についても同様で、二人の患者なかでも[[HM]]の脳損傷とその結果現れた症状により、ヒトの記憶のメカニズムの研究がおおいに進んだ。 | ||
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== 記憶の分類 == | == 記憶の分類 == | ||
[[Image:図3時間軸からみた記憶の分類.png|thumb|300px|<b> | [[Image:図3時間軸からみた記憶の分類.png|thumb|300px|<b>図3.時間軸からみた記憶の分類(三村 2012<ref name=ref6>'''三村 將'''<br>記憶障害<br>江藤文夫、武田克彦他編、高次脳機能障害のリハビリテーションVer.2.''医師薬出版''、東京、2004, pp.38-44. </ref>を引用)</b>]] | ||
[[Image:図4ワーキングメモリーのモデル.png|thumb|300px|<b> | [[Image:図4ワーキングメモリーのモデル.png|thumb|300px|<b>図4.ワーキングメモリーのモデル</b><br />2000年にBaddeleyは、それまでの[[視空間記銘メモ]]、[[音韻ループ]]に加え、[[エピソードバッファ]]を追加し、それぞれ視覚的意味、[[言語]]、[[エピソード長期記憶]]と対応するとした。図で白抜きの部分は注意や記憶の一時的な保持と関係している(Baddeley<ref name=ref8><pubmed>11058819</pubmed></ref>を訳)。]] | ||
[[Image:図5内容による記憶の分類.png|thumb|300px|<b> | [[Image:図5内容による記憶の分類.png|thumb|300px|<b>図5.内容による記憶の分類</b>]] | ||
=== 時間の流れからみた記憶の分類 === | === 時間の流れからみた記憶の分類 === | ||
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<references/> | <references/> | ||