9,444
回編集
細編集の要約なし |
|||
8行目: | 8行目: | ||
英:amyloidosis | 英:amyloidosis | ||
{{box|text= | {{box|text= [[アミロイド]]amyloidは[[wikipedia:ja:コンゴーレッド|コンゴーレッド]]染色でオレンジ色に染まり、[[wikipedia:ja:偏光顕微鏡|偏光顕微鏡]]で緑色偏光を呈し、[[wikipedia:ja:電子顕微鏡|電子顕微鏡]]観察下では7~15nmの繊維構造を呈する物質として定義される。アミロイドが、組織間隙に沈着して臓器の機能不全が生じる疾患をアミロイドーシス amyloidosisと呼ぶ<ref><pubmed> 22664198 </pubmed></ref>。アミロイドタンパク質の種類や臓器によって特徴が見られ、大きく[[全身性アミロイドーシス]]と[[限局性アミロイドーシス]]に分類される。代表的な全身性アミロイドーシスには、全身性AAアミロイドーシス、家族性アミロイドニューロパチーが挙げられる。限局性アミロイドーシスには脳アミロイドーシスである、[[アルツハイマー病]]、[[脳血管アミロイドアンギオパチー]]、遺伝性アミロイド性脳出血で、クロイツフェルト・ヤコブ病などが知られている。}} | ||
(編集コメント:元の抄録はアミロイドそのものの抄録でしたので、アミロイドーシスの内容としました) | (編集コメント:元の抄録はアミロイドそのものの抄録でしたので、アミロイドーシスの内容としました) | ||
==アミロイドーシスとは== | ==アミロイドーシスとは== | ||
アミロイドamyloidはコンゴーレッド染色でオレンジ色に染まり、偏光顕微鏡で緑色偏光を呈し、電子顕微鏡観察下では7~15nmの繊維構造を呈する物質として定義される。アミロイドが、組織間隙に沈着する疾患を総称してアミロイドーシス amyloidosisと呼ぶ<ref><pubmed> 22664198 </pubmed></ref>。多くの場合、前駆タンパクであるアミロイドタンパク質が折りたたみ障害を引き起こして重合し、[[wikipedia:ja:βシート|βシート]]構造に富む不溶性線維として蓄積・凝集している。基本的には、アミロイドーシス発症の分子病態は凝集するアミロイドタンパク質の濃度上昇か、凝集能亢進によるものである。したがってアミロイドタンパク質の除去が根本治療戦略となる。 | |||
沈着するアミロイドタンパク質の種類や臓器によって特徴が見られ、特に大きく全身性アミロイドーシスと限局性アミロイドーシスに分類されている。 | 沈着するアミロイドタンパク質の種類や臓器によって特徴が見られ、特に大きく全身性アミロイドーシスと限局性アミロイドーシスに分類されている。 | ||
(編集コメント:病名、原因物質と沈着するタンパク質を表か箇条書きに出来ないでしょうか。) | (編集コメント:病名、原因物質と沈着するタンパク質を表か箇条書きに出来ないでしょうか。) | ||
== 分類 == | |||
===全身性アミロイドーシス=== | ===全身性アミロイドーシス=== | ||
アミロイドタンパク質が血中に存在する場合は全身性アミロイドーシスとなる<ref><pubmed> 23451869 </pubmed></ref> | アミロイドタンパク質が血中に存在する場合は全身性アミロイドーシスとなる<ref><pubmed> 23451869 </pubmed></ref>。 | ||
アミロイドタンパク質としては、モノクローナル[[免疫グロブリン]]の[[wikipedia:ja:|L鎖]]由来の[[アミロイドAL]]や[[wikipedia:ja:|H鎖]]由来の[[アミロイドAH]]、[[wikipedia:ja:|血清アミロイドA]]の代謝産物である[[アミロイドA]](AA)、β2[[ミクログロブリン]]、[[トランスサイレチン]]、[[ゲルソリン]]、[[アポAI]]が知られている。いずれもアミロイドタンパク質の産生亢進、濃度上昇がアミロイドーシスを惹起していることが知られており、例えばアミロイドALでは免疫グロブリン産生細胞である[[wikipedia:ja:|形質細胞]]の過剰な増殖や腫瘍化がその原因である。また[[wikipedia:ja:|膠原病]]や[[wikipedia:ja:|リウマチ]]などが原因となり全身性[[wikipedia:ja:|慢性炎症]]を基礎疾患として血清アミロイドAの濃度上昇が継続し、全身性AAアミロイドーシスを惹起する。さらに[[wikipedia:ja:|腎障害]]及び[[wikipedia:ja:|血液透析]]によってβ2ミクログロブリンの排泄、除去が不全となり、10年以上の長期透析の結果アミロイド沈着を招くことが知られている。 | |||
遺伝子変異によって生じる全身性アミロイドーシスとして、[[wikipedia:ja:|家族性アミロイドニューロパチー]] [[wikipedia:ja:|Familial amyloid polyneuropathy(FAP)]]が知られている<ref><pubmed> 22094129 </pubmed></ref>。FAPはトランスサイレチン、ゲルソリン、アポAI、血清アミロイドA遺伝子変異に連鎖し、これらのアミロイドタンパク質が[[神経節]]を含む神経系および他の臓器に沈着する。また最近になり、全身性アミロイドーシスを惹起する[[プリオン]]遺伝子も同定された<ref><pubmed> 24224623 </pubmed></ref>。我が国を含めて、特にトランスサイレチン遺伝子変異によるFAPが最も多い<ref><pubmed> 11940682 </pubmed></ref>。 | |||
通常トランスサイレチンは四量体を形成しているが、遺伝子変異によって生じるアミノ酸置換によって不安定な単量体へ解離しやすくなり、なんらかの機序で重合して線維化すると考えられている。体内のトランスサイレチンは主として肝臓で産生されるが、肝実質にアミロイドは沈着しない。このためFAP患者の肝臓を移植により正常肝に換えることでアミロイドタンパク質である変異トランスサイレチンの消失が期待され、移植後多くの症例でFAPの臨床進行が停止するか、遅延することが確認されている。また2013年には、トランスサイレチンの四量体の解離及び変性を抑制することでアミロイド形成を阻害し、[[末梢神経]]障害の進行を抑制する[[wikipedia:ja:|Vyndaqel]](一般名:[[wikipedia:en:Tafamidis|Tafamidis]])が承認された。 | |||
===限局性アミロイドーシス=== | ===限局性アミロイドーシス=== | ||
特定の臓器に限局して沈着を認める場合は限局性アミロイドーシスとなる。臓器に応じて分類され、脳アミロイドーシス<ref><pubmed> 22482447 </pubmed></ref> | 特定の臓器に限局して沈着を認める場合は限局性アミロイドーシスとなる。臓器に応じて分類され、脳アミロイドーシス<ref><pubmed> 22482447 </pubmed></ref>としてはアルツハイマー病や脳血管アミロイドアンギオパチーで蓄積が見られるアミロイドβタンパク質(Aβ)の他、[[シスタチンC]]の遺伝子変異<ref><pubmed> 2900981 </pubmed></ref>が[[アイスランド型遺伝性アミロイド性脳出血]]で見出されている。 | ||
また[[wikipedia:ja:プリオン|プリオンタンパク質]]の蓄積、沈着は[[クロイツフェルト・ヤコブ病]]や[[ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー症候群]]などのプリオン病患者脳で報告されている。さらに[[wikipedia:ja:|BRI2]]遺伝子の変異によって生じるアミロイドペプチドABri、ADanはそれぞれBritish型、Danish型[[家族性認知症]]患者脳において蓄積している<ref><pubmed> 19072909 </pubmed></ref>。BRI2はその最C末端部がFurinによって切断され分泌されているが、野生型ペプチドには凝集性が認められない。しかし終止コドン近傍の遺伝子変異により野生型よりも僅かに長く、凝集性の高いペプチドが分泌され、これらがアミロイドとして脳実質に蓄積する。 | |||
その他の限局性アミロイドーシスとしては、内分泌アミロイドーシスのアミロイドタンパク質としては[[カルシトニン]]、[[アミリン]]、[[インスリン]]、[[心房ナトリウム利尿ペプチド]]が同定されており、主にこれらのホルモンを分泌する細胞由来の腫瘍内で蓄積・沈着が観察される。また皮膚アミロイドーシスとしては[[wikipedia:ja:|ケラチン]]が、限局性結節性アミロイドーシスはアミロイドALがアミロイドタンパク質として蓄積することが報告されている。 | |||
(編集コメント:通常疾患を扱う項目は、臨床症状、検査所見、診断(鑑別診断)、病態生理、治療、疫学(発症率など)の順で書いて頂くようにしております。種々の疾患の総称なので難しいかと思いますが、なるべくこれに沿ってイ記述して頂ければと思います。漆谷先生、最終判断は御任せ致します。) | (編集コメント:通常疾患を扱う項目は、臨床症状、検査所見、診断(鑑別診断)、病態生理、治療、疫学(発症率など)の順で書いて頂くようにしております。種々の疾患の総称なので難しいかと思いますが、なるべくこれに沿ってイ記述して頂ければと思います。漆谷先生、最終判断は御任せ致します。) | ||
29行目: | 40行目: | ||
==病態生理== | ==病態生理== | ||
[[Image:TTfig4.PNG|thumb|350px|'''図1.クロスβ構造'''<br>トランスサイレチン部分ペプチドからなるクロスβ構造。PDB ID: {{PDB2|2M5N}}]] | [[Image:TTfig4.PNG|thumb|350px|'''図1.クロスβ構造'''<br>トランスサイレチン部分ペプチドからなるクロスβ構造。PDB ID: {{PDB2|2M5N}}]] | ||
===アミロイドの構造と線維形成過程=== | ===アミロイドの構造と線維形成過程=== | ||
各アミロイドタンパク質には一定の共通したアミノ酸配列や構造は見られないが、アミロイド線維になると共通して[[クロスβ構造]]と呼ばれる形態をとっている<ref><pubmed> 17468747 </pubmed></ref><ref><pubmed> 21456964 </pubmed></ref><ref><pubmed> 23513222 </pubmed></ref>。これはアミロイド線維を構成するポリペプチド鎖が線維軸と垂直方向にβストランドとなり、かつ線維軸方向にβシート構造をとっているものである。このような構造学的特徴はイメージング技術に応用されつつあり、[http://bsd.neuroinf.jp/wiki/アミロイドβタンパク質 Aβ]線維に特異的に結合する低分子化合物を利用したアミロイドPETスキャンが可能となった<ref><pubmed> 14991808 </pubmed></ref><ref><pubmed> 21245183 </pubmed></ref>。 | |||
アミロイド線維形成過程では、多くの場合正常なフォールディングをうけているアミロイドタンパク質が何らかの理由で一旦部分変性し、会合することが必要である。また線維形成過程はその鋳型となるシード(種、核)の形成を契機として急速に進んでいくことが示されている<ref><pubmed> 22885025 </pubmed></ref>。すなわち、このシードの両端の末端にアミロイドタンパク質が結合して線維が伸長していくと考えられている。 | アミロイド線維形成過程では、多くの場合正常なフォールディングをうけているアミロイドタンパク質が何らかの理由で一旦部分変性し、会合することが必要である。また線維形成過程はその鋳型となるシード(種、核)の形成を契機として急速に進んでいくことが示されている<ref><pubmed> 22885025 </pubmed></ref>。すなわち、このシードの両端の末端にアミロイドタンパク質が結合して線維が伸長していくと考えられている。 |