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 「[[神経因性疼痛]] ([[neuropathic pain]]または[[アロデニア]] ([[allodynia]]))とは[[帯状疱疹]]の後遺症や手術や怪我の後遺症として、損傷部周辺の[[触覚]]が激しい[[疼痛]]として感じられる疾患である。その成立メカニズムにミクログリアが関与している。
 「[[神経因性疼痛]] ([[neuropathic pain]]または[[アロデニア]] ([[allodynia]]))とは[[帯状疱疹]]の後遺症や手術や怪我の後遺症として、損傷部周辺の[[触覚]]が激しい[[疼痛]]として感じられる疾患である。その成立メカニズムにミクログリアが関与している。


 図16aに示すように、[[痛覚]]や触覚に関わる知覚神経信号は[[脊髄後根]]から[[脊髄後角]]に入力し、そこで、[[二次知覚ニューロン]]に乗り換える。このシナプス部位には知覚神経からの[[側抑制]](lateral inhibition)回路が組み込まれており、過剰な入力を和らげている。[[wj:皮膚|皮膚]]に障害が受けた時に痛みは比較的短い時間で和らぐのはこの仕組みによる。この回路には[[GABA]]を[[伝達物質]]とする[[抑制性介在ニューロン]]が関与している(図16A)。
 図16aに示すように、[[痛覚]]や触覚に関わる知覚神経信号は[[脊髄後根]]から[[脊髄後角]]に入力し、そこで、[[二次知覚ニューロン]]に乗り換える。このシナプス部位には知覚神経からの[[側方抑制]]回路が組み込まれており、過剰な入力を和らげている。[[wj:皮膚|皮膚]]に障害が受けた時に痛みは比較的短い時間で和らぐのはこの仕組みによる。この回路には[[GABA]]を[[伝達物質]]とする[[抑制性介在ニューロン]]が関与している(図16A)。


 この部位で生ずる神経因性疼痛の発症メカニズムは次のような仕組みによることが明らかにされている(図16B)。知覚神経の末梢部に激しい損傷があると、知覚ニューロンの入力部位である脊髄後角周辺に多数のミクログリアが集まる。このミクログリアは上述のように[[脳由来神経栄養因子]] ([[brain derived neurotrophic factor]], [[BDNF]])を遊離する。おそらく、損傷を受けた知覚回路の修復のためと考えられる。しかし、このBDNFが二次知覚神経細胞において細胞内のClイオンとKイオンの量をコントロールするための[[Clイオン/Kイオン交換ポンプ]]を止めてしまう。結果として、二次知覚ニューロン内のClイオン量が異常に増え、Kイオンが減少した状態が作られる。この状態では痛覚や触覚などの入力を側抑制するために遊離されたGABAによって、[[Clイオンチャンネル]]が開口すると、細胞外へのClイオンの流出、すなわち[[脱分極]]を生じさせることになる。痛みや高まった触感覚を和らげる仕組みが逆に促進してしまう<ref><pubmed>12917686</pubmed></ref>。この状態はミクログリアの活動が続く間は回復することはない。従って、ちょっとした痛みや触覚が異常に強く入力され、触覚も過剰になると痛みと感ずる。原因が解明されたことによって神経因性疼痛の有効な治療法も開発されてきている。
 この部位で生ずる神経因性疼痛の発症メカニズムは次のような仕組みによることが明らかにされている(図16B)。知覚神経の末梢部に激しい損傷があると、知覚ニューロンの入力部位である脊髄後角周辺に多数のミクログリアが集まる。このミクログリアは上述のように[[脳由来神経栄養因子]] ([[brain derived neurotrophic factor]], [[BDNF]])を遊離する。おそらく、損傷を受けた知覚回路の修復のためと考えられる。しかし、このBDNFが二次知覚神経細胞において細胞内のCl<sup>-</sup>イオンとK<sup>+</sup>イオンの量をコントロールするための[[Cl-イオン/K+イオン交換ポンプ|Cl<sup>-</sup>イオン/K<sup>+</sup>イオン交換ポンプ]]を止めてしまう。結果として、二次知覚ニューロン内のCl<sup>-</sup>イオン量が異常に増え、K<sup>+</sup>イオンが減少した状態が作られる。この状態では痛覚や触覚などの入力を側抑制するために遊離されたGABAによって、Cl<sup>-</sup>チャンネルが開口すると、細胞外へのCl<sup>-</sup>イオンの流出、すなわち[[脱分極]]を生じさせることになる。痛みや高まった触感覚を和らげる仕組みが逆に促進してしまう<ref><pubmed>12917686</pubmed></ref>。この状態はミクログリアの活動が続く間は回復することはない。従って、ちょっとした痛みや触覚が異常に強く入力され、触覚も過剰になると痛みと感ずる。原因が解明されたことによって神経因性疼痛の有効な治療法も開発されてきている。


==関連項目==
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