「手話」の版間の差分

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英:sign language <br>
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{{box|text= 手話とは手指の形・位置・動きや表情などの視覚情報を伝達手段とし、乳幼児が自然に獲得できる自然言語である。日本手話 (Japanese Sign Language) やアメリカ手話 (American Sign Language) などがある。音声言語と同様に音韻体系と文法体系が備わっている。手話単語は「手の形・手の位置・手の動き」の3種類の要素から構成され、これを音素 (phoneme) と呼ぶ。音素は特定の音韻規則に従う。例えば両手を共に動かす場合には、その動きは同一か対称になり、両手の形は必ず同一でなくてはなる(対称制約)。また、両手の形が異なる場合には片手のみを動かし、動かない方の手はごく少数の限られた形 (無標手型) になる(優位制約)。このように、手話単語における身体の動きは音韻規則に従って体系化されており、単なるジェスチャーやマイムとは異なっている。手話単語を統辞規則に従い、特定の語順で構造化し、文を作る事もできる。fMRIを用いた脳機能イメージング研究では、聴者における日本語の文章理解課題時の脳活動と同様に、言語野の活動が左優位であることが確かめられている。さらに単語・文・文脈という言語情報の統合のレベルに対応して、左前頭皮質の活動が背側から腹側方向にかけて広がっていくことが示された。音声言語と手話の処理機構の相同性の解明は、視覚や聴覚といったモダリティーに依存しない普遍的な言語処理機構の解明に役立ち、より詳細な研究が望まれる。}}(編集部作成。ご確認下さい)
 
==手話とは==
 手話とは手指の形・位置・動きや表情などの視覚情報を伝達手段とし、乳幼児が自然に獲得できる自然言語である。日本手話 (Japanese Sign Language) やアメリカ手話 (American Sign Language) など、世界では現在多数の手話が使用されている。また、ニカラグア手話 (Nicaraguan Sign Language) やアル=サイード・ベドウィン手話 (Al-Sayyid Bedouin Sign Language) のように、ろう者集団の中で独自の手話が自然発生的に誕生することもある。手話には、音声言語と同様に後述するような音韻体系と文法体系が備わっている。なお、対応手話 (Manually coded language) や国際手話 (International Sign) と呼ばれるものは、ピジン (異言語間の意思疎通のために作られた接触言語) であり、本稿の対象とはしない。
 手話とは手指の形・位置・動きや表情などの視覚情報を伝達手段とし、乳幼児が自然に獲得できる自然言語である。日本手話 (Japanese Sign Language) やアメリカ手話 (American Sign Language) など、世界では現在多数の手話が使用されている。また、ニカラグア手話 (Nicaraguan Sign Language) やアル=サイード・ベドウィン手話 (Al-Sayyid Bedouin Sign Language) のように、ろう者集団の中で独自の手話が自然発生的に誕生することもある。手話には、音声言語と同様に後述するような音韻体系と文法体系が備わっている。なお、対応手話 (Manually coded language) や国際手話 (International Sign) と呼ばれるものは、ピジン (異言語間の意思疎通のために作られた接触言語) であり、本稿の対象とはしない。
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== 手話が持つ自然言語としての普遍性 ==
== 手話が持つ自然言語としての普遍性 ==


 手話と音声言語の間には視覚と聴覚というモダリティーの違いはあるが、両者には自然言語としての普遍性が存在する。自然言語の持つ重要な特徴の1つとして、二重分節性 (double articulation) を挙げることできる。二重分節性とは、それぞれの文が意味を持った最小の要素である形態素に分けられ、それらの形態素はさらに音素に分けられるという点で、二重に分節されているという特徴である。例えば、日本語の「外は雨だ」という文は「外/は/雨/だ」という4つの形態素から構成されており、さらに「外」という形態素は、「s/o/t/o」という4つの音素から構成される。音素とその組み合わせの持つ規則性を明らかにする研究分野は音韻論 (phonology) と呼ばれ、形態素や単語による構造の規則性を明らかにする研究分野は統辞論 (syntax) と呼ばれる。二重分節性は、少ない種類の構成要素から無限の情報を表現することを可能にし、言語の持つ創造性や生産性を生み出している。以下では、日本で使われている代表的な手話である日本手話に見られる音韻規則と統辞規則の例を簡単に解説し、自然言語としての手話の持つ普遍性を考える。
 手話と音声言語の間には視覚と聴覚というモダリティーの違いはあるが、両者には自然言語としての普遍性が存在する。自然言語の持つ重要な特徴の1つとして、二重分節性 (double articulation) を挙げることできる。二重分節性とは、それぞれの文が意味を持った最小の要素である形態素に分けられ、それらの形態素はさらに音素に分けられるという点で、二重に分節されているという特徴である。例えば、日本語の「外は雨だ」という文は「外/は/雨/だ」という4つの形態素から構成されており、さらに「外」という形態素は、「s/o/t/o」という4つの音素から構成される。音素とその組み合わせの持つ規則性を明らかにする研究分野は音韻論 (phonology) と呼ばれ、形態素や単語による構造の規則性を明らかにする研究分野は統辞論 (syntax) と呼ばれる。二重分節性は、少ない種類の構成要素から無限の情報を表現することを可能にし、言語の持つ創造性や生産性を生み出している。以下では、日本で使われている代表的な手話である日本手話に見られる音韻規則と統辞規則の例を簡単に解説し、自然言語としての手話の持つ普遍性を考える。


== 手話の音韻論 ==
== 手話の音韻論 ==