「体部位再現」の版間の差分

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 体部位再現図ではカナダの脳外科医[[ワイルダー・ペンフィールド]]らによるホムンクルスが有名である<ref name=ref1>'''Penfield W, Boldrey E'''<br>Somatic motor and sensory representation in the cerebral cortex of man as studied by electrical stimulation.<br>''Brain'' 60: 389-443, 1937 </ref>。第一次体性感覚野の体部位再現図では、手や顔、口が実際の体部位よりも大きく、広い面積を占めている一方で体幹などは小さくなっている。このように対象物に接触し、その識別に関わる体部位は、触覚受容器の密度も高く、再現される脳領域も広くなると考えられている。
 体部位再現図ではカナダの脳外科医[[ワイルダー・ペンフィールド]]らによるホムンクルスが有名である<ref name=ref1>'''Penfield W, Boldrey E'''<br>Somatic motor and sensory representation in the cerebral cortex of man as studied by electrical stimulation.<br>''Brain'' 60: 389-443, 1937 </ref>。第一次体性感覚野の体部位再現図では、手や顔、口が実際の体部位よりも大きく、広い面積を占めている一方で体幹などは小さくなっている。このように対象物に接触し、その識別に関わる体部位は、触覚受容器の密度も高く、再現される脳領域も広くなると考えられている。


== 感覚野==
==大脳皮質==
=== 感覚野===
 ペンフィールドは、[[てんかん]]患者の手術に先立ち、脳表に電気刺激を加えた時、患者にどのような感覚が生じたかを丹念に調べることで第一次体性感覚野の体部位再現図を作成した。最近のブレインイメージングの手法では、実際に体表に刺激を加えたり、[[末梢神経]]を電気刺激したときの活動する脳領域を調べることで、体部位再現の研究が行われている。
 ペンフィールドは、[[てんかん]]患者の手術に先立ち、脳表に電気刺激を加えた時、患者にどのような感覚が生じたかを丹念に調べることで第一次体性感覚野の体部位再現図を作成した。最近のブレインイメージングの手法では、実際に体表に刺激を加えたり、[[末梢神経]]を電気刺激したときの活動する脳領域を調べることで、体部位再現の研究が行われている。


 実験動物を使用した体部位再現の研究では、大脳皮質の神経細胞の活動を記録しながら、身体に体性感覚刺激を加え、刺激によって神経細胞の活動を惹起する体部位を調べることで行われる。Kaasらにより、種々の[[wikipedia:ja:霊長類|霊長類]]で体部位再現図が明らかにされた。Kaasらの研究によるとマカクサルの一次体性感覚野を構成する[[ブロードマンの脳地図]]の[[ブロードマン3、1、2野|3野]]、[[ブロードマン3、1、2野|1野]]、[[ブロードマン3、1、2野|2野]]にはそれぞれ独立した体部位再現が存在するという<ref name=ref2><pubmed>4078042</pubmed></ref>。
 実験動物を使用した体部位再現の研究では、大脳皮質の神経細胞の活動を記録しながら、身体に体性感覚刺激を加え、刺激によって神経細胞の活動を惹起する体部位を調べることで行われる。Kaasらにより、種々の[[wikipedia:ja:霊長類|霊長類]]で体部位再現図が明らかにされた。Kaasらの研究によるとマカクサルの一次体性感覚野を構成する[[ブロードマンの脳地図]]の[[ブロードマン3、1、2野|3野]]、[[ブロードマン3、1、2野|1野]]、[[ブロードマン3、1、2野|2野]]にはそれぞれ独立した体部位再現が存在するという<ref name=ref2><pubmed>4078042</pubmed></ref>。


== 運動野==
=== 運動野===
 運動野においては、ペンフィールドが行った方法と同様に脳を電気刺激し、どの体部位に運動が引き起こされたか、で体部位再現が研究されてきた。ペンフィールド<ref name=ref1 />は中心溝の前方の領域に第一次体性感覚野とほぼ並行した体部位再現が存在することを明らかにした。Woolseyらはマカクサルの脳に電極を刺入し、電気刺激よって引き起こされた筋肉の収縮を観察し、第一次運動野の体部位再現を明らかにした<ref name=ref3><pubmed>12983675</pubmed></ref>。これらの実験は、大脳皮質の第一次運動野に身体部位特異性がある事を明らかにした点で重要である。しかし、マカクサルを使った詳細な電気刺激実験では、特定の部位が一つの筋肉と1対1に必ずしも対応しているわけではないこと、個々の筋肉もしくは関節の再現が整然と配置されておらず、ある筋肉に対応する脳部位は離れた場所に複数存在することなどが明らかになった<ref name=ref4><pubmed>2681562</pubmed></ref>。
 運動野においては、ペンフィールドが行った方法と同様に脳を電気刺激し、どの体部位に運動が引き起こされたか、で体部位再現が研究されてきた。ペンフィールド<ref name=ref1 />は中心溝の前方の領域に第一次体性感覚野とほぼ並行した体部位再現が存在することを明らかにした。Woolseyらはマカクサルの脳に電極を刺入し、電気刺激よって引き起こされた筋肉の収縮を観察し、第一次運動野の体部位再現を明らかにした<ref name=ref3><pubmed>12983675</pubmed></ref>。これらの実験は、大脳皮質の第一次運動野に身体部位特異性がある事を明らかにした点で重要である。しかし、マカクサルを使った詳細な電気刺激実験では、特定の部位が一つの筋肉と1対1に必ずしも対応しているわけではないこと、個々の筋肉もしくは関節の再現が整然と配置されておらず、ある筋肉に対応する脳部位は離れた場所に複数存在することなどが明らかになった<ref name=ref4><pubmed>2681562</pubmed></ref>。


== 他の大脳皮質領域==
=== 他の大脳皮質領域===


 第一次体性感覚野と第一次運動野以外にも体部位再現が存在する大脳皮質領域が報告されている。ヒトやマカクサルでは一次体性感覚野の外側の[[シルヴィウス裂]]に埋もれている第二次体性感覚野では、前方に頭部の再現領域が有り、その後方に向かって上肢、下肢が再現されている。Krubitzer らの電気生理学実験<ref name=ref5><pubmed>7751949</pubmed></ref>やBurtonらの第一次体性感覚野との神経連絡を調べた実験<ref name=ref6><pubmed>7636030</pubmed></ref>から第二次体性感覚野には互いに鏡像関係に配置された2つの再現図が存在するという説が有力となった。マカクサルを使った研究では[[補足運動野]]などの高次運動野でも体部位再現が存在することが報告されている。高次運動野では、一般に一次運動野に比べ、身体部位を動かすためには大きな電流が必要なこと、また、同時に複数の関節が動く傾向が大きいことなどの違いがあるという。
 第一次体性感覚野と第一次運動野以外にも体部位再現が存在する大脳皮質領域が報告されている。ヒトやマカクサルでは一次体性感覚野の外側の[[シルヴィウス裂]]に埋もれている第二次体性感覚野では、前方に頭部の再現領域が有り、その後方に向かって上肢、下肢が再現されている。Krubitzer らの電気生理学実験<ref name=ref5><pubmed>7751949</pubmed></ref>やBurtonらの第一次体性感覚野との神経連絡を調べた実験<ref name=ref6><pubmed>7636030</pubmed></ref>から第二次体性感覚野には互いに鏡像関係に配置された2つの再現図が存在するという説が有力となった。マカクサルを使った研究では[[補足運動野]]などの高次運動野でも体部位再現が存在することが報告されている。高次運動野では、一般に一次運動野に比べ、身体部位を動かすためには大きな電流が必要なこと、また、同時に複数の関節が動く傾向が大きいことなどの違いがあるという。
== 大脳皮質以外 ==
 体性感覚伝導路で[[脊髄]][[一次求心神経]]が入力する[[延髄後索核]]([[薄束核]]と[[楔状束核]])には、[[三叉神経]]系の支配領域を除いた身体部位の体部位再現図が存在する。また、体性感覚の[[視床]]中継核である[[後腹側核]]群(三叉神経系の入力を受ける[[後腹側内側核]]、その他の体部位からの入力を受ける[[後腹側外側核]])にも体部位再現図が存在することが知られている。


==関連項目==
==関連項目==
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*[[体性感覚野]]
*[[体性感覚野]]
*[[運動野]]
*[[運動野]]
*[[バレル皮質]]


== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
<references/>
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