「色の恒常性」の版間の差分

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==色の恒常性が関わる大脳皮質==
==色の恒常性に関連する大脳皮質==
1960年代に、サルの第1次視覚野(V1野)には、ある特定の波長をもつ光に選択的に反応するが、実際の刺激の色には反応しない細胞があることがつきとめられていた。その後、セミール・ゼキは、V1野にある波長選択性細胞とは対照的に、ある特定の波長には反応しないが、実際の色に反応する細胞が、サルの第4次視覚野(V4野)とよばれる領域に存在することを発見した<ref><pubmed>6621878</pubmed></ref>。この研究では次のような実験が行われた。V1のある細胞の受容野に、モンドリアン図形の様々な色のパッチがくるように図形の位置を移動させるが、このときパッチに対して照射する赤・緑・青の光の強さを変化させて、いずれのパッチからも同じスペクトルをもつ光が反射されるように調整する。すると、そのV1の細胞は異なるパッチに対して同じ強さで反応することが分かった。これにより、V1の細胞は実際の色には関係なく、反射光がもつ特定の波長に対して選択的に反応すると言える。一方、V4の細胞は、同じスペクトルの光が反射されていても、特定の色のパッチのみにしか反応しないことがわかった。これにより、照明光の特性に影響されず、実際の色に対して選択的に反応を示す細胞がV4には存在することが明らかになった。こうして色の恒常性を生み出すために重要な脳領域が存在することが証明された。また、ゼキらは、ヒトにおいても色の恒常性に関連する視覚処理が後頭葉の腹側に位置する紡錘状回,舌状回(V4,V4α)で行われていることを脳機能イメージングにより明らかにした<ref><pubmed>10466157</pubmed></ref>。これらの領域は、照射する光のスペクトルや強度がダイナミックに変化する中でモンドリアン図形を見ているときに、変化しない光のもとで見ているときに比べてより強く活動することを示した。また、こうした見方を支持する知見として、サルおよびヒトのV4領域が損傷された場合には、色の恒常性が低下することが報告されている<ref><pubmed>8466667</pubmed></ref><ref><pubmed>7784436</pubmed></ref>。
1960年代に、サルの第1次視覚野(V1野)には、ある特定の波長をもつ光に選択的に反応するが、実際の刺激の色には反応しない細胞があることがつきとめられていた。その後、セミール・ゼキは、V1野にある波長選択性細胞とは対照的に、ある特定の波長には反応しないが、実際の色に反応する細胞が、サルの第4次視覚野(V4野)とよばれる領域に存在することを発見した<ref><pubmed>6621878</pubmed></ref>。この研究では次のような実験が行われた。V1のある細胞の受容野に、モンドリアン図形の様々な色のパッチがくるように図形の位置を移動させるが、このときパッチに対して照射する赤・緑・青の光の強さを変化させて、いずれのパッチからも同じスペクトルをもつ光が反射されるように調整する。すると、そのV1の細胞は異なるパッチに対して同じ強さで反応することが分かった。これにより、V1の細胞は実際の色には関係なく、反射光がもつ特定の波長に対して選択的に反応すると言える。一方、V4の細胞は、同じスペクトルの光が反射されていても、特定の色のパッチのみにしか反応しないことがわかった。これにより、照明光の特性に影響されず、実際の色に対して選択的に反応を示す細胞がV4には存在することが明らかになった。こうして色の恒常性を生み出すために重要な脳領域が存在することが証明された。また、ゼキらは、ヒトにおいても色の恒常性に関連する視覚処理が後頭葉の腹側に位置する紡錘状回,舌状回(V4,V4α)で行われていることを脳機能イメージングにより明らかにした<ref><pubmed>10466157</pubmed></ref>。これらの領域は、照射する光のスペクトルや強度がダイナミックに変化する中でモンドリアン図形を見ているときに、変化しない光のもとで見ているときに比べてより強く活動することを示した。また、こうした見方を支持する知見として、サルおよびヒトのV4領域が損傷された場合には、色の恒常性が低下することが報告されている<ref><pubmed>8466667</pubmed></ref><ref><pubmed>7784436</pubmed></ref>。


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