「オリゴデンドロサイト」の版間の差分

編集の要約なし
編集の要約なし
編集の要約なし
40行目: 40行目:


機能  
機能  
 オリゴデンドロサイトの機能は、軸索の伝導速度を高めることにある。オリゴデンドロサイトはその特殊化した細胞膜を軸索に巻き付けてミエリンを形成し、一種の絶縁体を形成する。そして、その継ぎ目であるランビエの絞輪でのみ活動電位を生じさせることにより跳躍伝導を引き起こす。この20年の間に、オリゴデンドロサイトが絶縁体を形成するのみならず、ランビエの絞輪にイオンチャネルのクラスター化を誘導する働きがあることが明らかになった。チャネルの局在の点からもランビエの絞輪以外で活動電位が生じにくいことがわかる[1][2]。 マウスの視神経では、同一の軸索がオリゴデンドロサイトのない網膜内では細くオリゴデンドロサイトの存在する視神経に入ると太くなることから、軸索径を増大させるという可能性が示唆されている[13]。軸索径が大きくなると伝導速度は大きくなることはよくわかっている。このように、オリゴデンドロサイトは2つの異なったメカニズムで、伝導速度を高めて神経機能に深くかかわっている。 一方で、オリゴデンドロサイトが作るミエリンには、Nogo、MAG、Mobpなどの軸索伸長阻害因子が発現している。成熟脳では、損傷を受けた場合、軸索再生がほとんど起こらないことが古くから知られているが、その阻害因子を作る細胞の一つがオリゴデンドロサイトである[14]。これらの阻害分子は、神経回路が形成されたのちに、その回路を大きく変化させず安定性を保つために発現しているものと考えられる。  
 オリゴデンドロサイトの機能は、軸索の伝導速度を高めることにある。オリゴデンドロサイトはその特殊化した細胞膜を軸索に巻き付けてミエリンを形成し、一種の絶縁体を形成する。そして、その継ぎ目であるランビエの絞輪でのみ活動電位を生じさせることにより跳躍伝導を引き起こす。この20年の間に、オリゴデンドロサイトが絶縁体を形成するのみならず、ランビエの絞輪にイオンチャネルのクラスター化を誘導する働きがあることが明らかになった。チャネルの局在の点からもランビエの絞輪以外で活動電位が生じにくいことがわかる[1][2]。 マウスの視神経では、同一の軸索がオリゴデンドロサイトのない網膜内では細くオリゴデンドロサイトの存在する視神経に入ると太くなることから、軸索径を増大させるという可能性が示唆されている<ref><pubmed> 7514208 </pubmed></ref>。軸索径が大きくなると伝導速度は大きくなることはよくわかっている。このように、オリゴデンドロサイトは2つの異なったメカニズムで、伝導速度を高めて神経機能に深くかかわっている。 一方で、オリゴデンドロサイトが作るミエリンには、Nogo、MAG、Mobpなどの軸索伸長阻害因子が発現している。成熟脳では、損傷を受けた場合、軸索再生がほとんど起こらないことが古くから知られているが、その阻害因子を作る細胞の一つがオリゴデンドロサイトである<ref><pubmed> 14630216 </pubmed></ref>。これらの阻害分子は、神経回路が形成されたのちに、その回路を大きく変化させず安定性を保つために発現しているものと考えられる。  


付録   網膜とオリゴデンドロサイト・ミエリン形成;網膜と視神経は前脳胞に由来する構造であることから、中枢神経系に含まれる。視神経は、解剖学では便宜上脳神経のひとつとして、末梢神経といっしょに扱われることがあるが、厳然として中枢神経の一部である。したがって視神経における髄鞘形成細胞はオリゴデンドロサイトである。一方、マウスやヒトを含む多くの哺乳動物網膜にはオリゴデンドロサイトは無く、網膜の視神経線維層の軸索は無髄線維である。一方、哺乳動物でもウサギや、鳥類以下の脊椎動物の網膜にはオリゴデンドロサイトが存在し、視神経線維層の軸索もコンパクトなミエリンにより髄鞘化されている。視神経や網膜のオリゴデンドロサイトは、末梢神経の髄鞘形成細胞(Schwann細胞)では発現しないPLPを強く発現し、またそれ以外のミエリンタンパクの発現も見られる[15][16]。網膜のオリゴデンドロサイトは、前脳に由来し視神経を通って網膜に移動してくる[17][18]。主に視神経線維層と神経節細胞層に位置し、少数のものは内網状層にもみられる。ニワトリの網膜のミエリンは、脳や脊髄のものと比べると層板形成が薄い傾向にある。このような種差は、視神経の網膜側末端の構造的・分子的な違いに由来すると考えられているが、詳細は明らかにされていない。またその存在の意義についても、不明な点が多い。  
付録   網膜とオリゴデンドロサイト・ミエリン形成;網膜と視神経は前脳胞に由来する構造であることから、中枢神経系に含まれる。視神経は、解剖学では便宜上脳神経のひとつとして、末梢神経といっしょに扱われることがあるが、厳然として中枢神経の一部である。したがって視神経における髄鞘形成細胞はオリゴデンドロサイトである。一方、マウスやヒトを含む多くの哺乳動物網膜にはオリゴデンドロサイトは無く、網膜の視神経線維層の軸索は無髄線維である。一方、哺乳動物でもウサギや、鳥類以下の脊椎動物の網膜にはオリゴデンドロサイトが存在し、視神経線維層の軸索もコンパクトなミエリンにより髄鞘化されている。視神経や網膜のオリゴデンドロサイトは、末梢神経の髄鞘形成細胞(Schwann細胞)では発現しないPLPを強く発現し、またそれ以外のミエリンタンパクの発現も見られる<ref><pubmed> 21872683 </pubmed></ref><ref><pubmed> 7691736 </pubmed></ref>。網膜のオリゴデンドロサイトは、前脳に由来し視神経を通って網膜に移動してくる<ref><pubmed> 9714145 </pubmed></ref><ref><pubmed> 20371817 </pubmed></ref>。主に視神経線維層と神経節細胞層に位置し、少数のものは内網状層にもみられる。ニワトリの網膜のミエリンは、脳や脊髄のものと比べると層板形成が薄い傾向にある。このような種差は、視神経の網膜側末端の構造的・分子的な違いに由来すると考えられているが、詳細は明らかにされていない。またその存在の意義についても、不明な点が多い。  
 
関連項目  ミエリン  オリゴデンドロサイト前駆細胞   参考文献


関連項目  ミエリン  オリゴデンドロサイト前駆細胞  
参考文献
<references/>
1) Takasaki C, Yamasaki M, Uchigashima M, Konno K, Yanagawa Y, Watanabe M. Cytochemical and cytological properties of perineuronal oligodendrocytes in the mouse cortex. Eur J Neurosci. 2010 Oct;32(8):1326-36.   20846325  
1) Takasaki C, Yamasaki M, Uchigashima M, Konno K, Yanagawa Y, Watanabe M. Cytochemical and cytological properties of perineuronal oligodendrocytes in the mouse cortex. Eur J Neurosci. 2010 Oct;32(8):1326-36.   20846325  


9

回編集