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<font size="+1">[http://researchmap.jp/taroshiro 矢野 真人]</font><br> | <font size="+1">[http://researchmap.jp/taroshiro 矢野 真人]</font><br> | ||
''新潟大学''<br> | ''新潟大学''<br> | ||
DOI:<selfdoi /> | DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2016年1月23日 原稿完成日:2016年2月2日<br> | ||
担当編集委員:[http://researchmap.jp/read0080380 上口 裕之](国立研究開発法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br> | 担当編集委員:[http://researchmap.jp/read0080380 上口 裕之](国立研究開発法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br> | ||
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==機能 == | ==機能 == | ||
RNA結合タンパク質は、ゲノム上の約90%近くと見積もられる領域から転写された膨大なRNA群に結合する因子の総称である。そのため、それぞれのRNA結合タンパク質は、固有の結合特異性を持ちながら、[[mRNA]]や[[非コードRNA]]である[[ノンコーディングRNA#tRNA|tRNA]]、[[ノンコーディングRNA#rRNA|rRNA]]、[[ノンコーディングRNA#snRNA|snRNA]]、[[ノンコーディングRNA#snoRNA|snoRNA]]、[[ノンコーディングRNA#lncRNA|lncRNA]]、[[miRNA]]、[[ノンコーディングRNA#piRNA|piRNA]] | RNA結合タンパク質は、ゲノム上の約90%近くと見積もられる領域から転写された膨大なRNA群に結合する因子の総称である。そのため、それぞれのRNA結合タンパク質は、固有の結合特異性を持ちながら、[[mRNA]]や[[非コードRNA]]である[[ノンコーディングRNA#tRNA|tRNA]]、[[ノンコーディングRNA#rRNA|rRNA]]、[[ノンコーディングRNA#snRNA|snRNA]]、[[ノンコーディングRNA#snoRNA|snoRNA]]、[[ノンコーディングRNA#lncRNA|lncRNA]]、[[miRNA]]、[[ノンコーディングRNA#piRNA|piRNA]]の生合成経路全てを標的対象とし機能している。それぞれのRNAの生合成過程は、RNAとRNA結合タンパク質が複合体を形成することで行われ、RNAのプロセッシング、輸送/局在化/凝集体形成、分解、mRNAに対してはタンパク質への翻訳、[[トランスポゾン]]のトランスポジションなどを含み多岐に渡る<ref name=ref1 />。これらの制御を総称して[[転写後調節機構]](post-transcriptional reulation)と呼ぶ。 | ||
=== 脳神経系における機能 === | === 脳神経系における機能 === | ||
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病態解明の鍵を握るRNA結合タンパク質研究であるが、今後1542種あるRNA結合タンパク質の中からも新たな創薬の標的が発見されることが期待される。 | 病態解明の鍵を握るRNA結合タンパク質研究であるが、今後1542種あるRNA結合タンパク質の中からも新たな創薬の標的が発見されることが期待される。 | ||
[[脊髄性筋萎縮症]]([[SMA]])は、1万人に1人程度の割合で新生児に発症する[[運動ニューロン病]]の一つであり、原因遺伝子[[SMN]]([[survival motor neuron]])の[[常染色体性劣性遺伝]]を示す神経難病である。SMN遺伝子には、相同遺伝子の[[SMN2]]が存在することから、SMN2の選択的スプライシングスイッチをする核酸アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いることで、SMN2タンパク質の合成量を増加させ、SMNタンパク質の減少を補う方法で[[モデル動物]]を用いた実験で有効性が実証された<ref name=ref16><pubmed>21979052</pubmed></ref>。これは、ある種のRNA結合タンパク質-RNA相互作用を直接、核酸が抑えることで、スプライシングを制御するものだが、さらに簡便な小分子化合物の経口投与によってSMN2のスプライシング制御が可能であることが発見されるなど、急速に疾患治療へ向け進みつつある<ref name=ref17><pubmed>25104390</pubmed></ref>。 | [[脊髄性筋萎縮症]]([[脊髄性筋萎縮症|SMA]])は、1万人に1人程度の割合で新生児に発症する[[運動ニューロン病]]の一つであり、原因遺伝子[[SMN]]([[survival motor neuron]])の[[常染色体性劣性遺伝]]を示す神経難病である。SMN遺伝子には、相同遺伝子の[[SMN2]]が存在することから、SMN2の選択的スプライシングスイッチをする核酸アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いることで、SMN2タンパク質の合成量を増加させ、SMNタンパク質の減少を補う方法で[[モデル動物]]を用いた実験で有効性が実証された<ref name=ref16><pubmed>21979052</pubmed></ref>。これは、ある種のRNA結合タンパク質-RNA相互作用を直接、核酸が抑えることで、スプライシングを制御するものだが、さらに簡便な小分子化合物の経口投与によってSMN2のスプライシング制御が可能であることが発見されるなど、急速に疾患治療へ向け進みつつある<ref name=ref17><pubmed>25104390</pubmed></ref>。 | ||
== 解析技術 == | == 解析技術 == | ||