「MST野(テスト)」の版間の差分

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  [[Image:田中テスト図2.jpg|thumb|center|400px|図2 拡大と時計回転にそれぞれ選択的に反応するMST野細胞の例]]  
  [[Image:田中テスト図2.jpg|thumb|center|400px|図2 拡大と時計回転にそれぞれ選択的に反応するMST野細胞の例]]  
 このようなMST野背側部の細胞の反応はどのようなメカニズムで生じているのであろうか。MST野はMT野から強い線維投射を受けるから、MT野細胞からの入力を受けてMST野の受容野を作るモデルを考える。MST野細胞の受容野はMT野細胞の受容野よりずっと大きいから、異なった場所に受容野を持つMT野細胞を集めてくる必要がある。同じ最適運動方向を持つ入力細胞を集めれば,直線運動に反応する細胞ができあがる(図3左)。一方、最適運動方向が放射状に並んだ入力細胞を集めれば、パターンの拡大に反応する細胞ができあがり(図3中)、最適運動方向が同心円の接線方向に並んだ入力細胞を集めれば,回転に反応する細胞ができあがる(図3右)。そして、多数の入力細胞が同時に興奮したときにだけ入力が活動電位発射の閾値を超えるように高い閾値を設定すれば、広視野が動いたときにだけ反応する刺激の広がりに対する選択性が実現される。
 このようなMST野背側部の細胞の反応はどのようなメカニズムで生じているのであろうか。MST野はMT野から強い線維投射を受けるから、MT野細胞からの入力を受けてMST野の受容野を作るモデルを考える。MST野細胞の受容野はMT野細胞の受容野よりずっと大きいから、異なった場所に受容野を持つMT野細胞を集めてくる必要がある。同じ最適運動方向を持つ入力細胞を集めれば,直線運動に反応する細胞ができあがる(図3左)。一方、最適運動方向が放射状に並んだ入力細胞を集めれば、パターンの拡大に反応する細胞ができあがり(図3中)、最適運動方向が同心円の接線方向に並んだ入力細胞を集めれば,回転に反応する細胞ができあがる(図3右)。そして、多数の入力細胞が同時に興奮したときにだけ入力が活動電位発射の閾値を超えるように高い閾値を設定すれば、広視野が動いたときにだけ反応する刺激の広がりに対する選択性が実現される。
  [[Image:田中テスト図3.jpg|thumb|center|400px|田中テスト図3.jpg]]  
  [[Image:田中テスト図3.jpg|thumb|center|400px|図3 MST野細胞の反応選択性を作るモデル]]  
 MST野背側部の等距離面上の直線運動に反応する細胞の90%は刺激の左右眼視差にも選択的である。ほとんどの細胞は、注視点より奥の広い範囲の視差に反応する遠方細胞、あるいは注視点より手前の広い範囲の視差に反応する手前細胞であり、同調興奮細胞はほとんどない。少数の細胞では注視点より遠方と手前で最適運動方向が反転する。外界に静止した物体を注視しながら自分が横に動くと、注視した物体の手前にある物体と奥にある物体は網膜上で反対の方向に動く。遠方と手前で最適運動方向が反転する細胞は、自己運動の抽出を2つの動きの組合わせでより確かにしているのではないだろうか。  
 MST野背側部の等距離面上の直線運動に反応する細胞の90%は刺激の左右眼視差にも選択的である。ほとんどの細胞は、注視点より奥の広い範囲の視差に反応する遠方細胞、あるいは注視点より手前の広い範囲の視差に反応する手前細胞であり、同調興奮細胞はほとんどない。少数の細胞では注視点より遠方と手前で最適運動方向が反転する。外界に静止した物体を注視しながら自分が横に動くと、注視した物体の手前にある物体と奥にある物体は網膜上で反対の方向に動く。遠方と手前で最適運動方向が反転する細胞は、自己運動の抽出を2つの動きの組合わせでより確かにしているのではないだろうか。  


 MST野腹側部の細胞は、背側部の細胞と同じく、動く刺激に運動方向選択的に強く反応し、広い受容野を持つ。しかし、背側部と腹側部の細胞の間では刺激の広がりに対する選択性が異なる。MST野腹側部の細胞は小さい物体が動いたときに強く反応する。MST野腹側部の細胞の多くが、小さい物体とその背景の間の相対運動に対応した反応をする。静止した物体の背景で広視野が動いたときに、背景の手前で物体が動いたときと、反対方向で反応する。この反応はMT野では見つかっていない。MST野腹側部細胞による物体と背景の間の相対運動の表出は、MT野の周辺抑制野を持った細胞による表出よりも広範な条件をカバーしている。
 MST野腹側部の細胞は、背側部の細胞と同じく、動く刺激に運動方向選択的に強く反応し、広い受容野を持つ。しかし、背側部と腹側部の細胞の間では刺激の広がりに対する選択性が異なる。MST野腹側部の細胞は小さい物体が動いたときに強く反応する。MST野腹側部の細胞の多くが、小さい物体とその背景の間の相対運動に対応した反応をする。静止した物体の背景で広視野が動いたときに、背景の手前で物体が動いたときと、反対方向で反応する。この反応はMT野では見つかっていない。MST野腹側部細胞による物体と背景の間の相対運動の表出は、MT野の周辺抑制野を持った細胞による表出よりも広範な条件をカバーしている。
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