「マイクロフィラメント」の版間の差分

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 細胞内に存在する多種多彩なアクチン結合蛋白質がアクチンフィラメントの動態を制御しているが、アクチンフィラメントに固有の特徴としてトレッドミリングが挙げられる<ref><pubmed> 18391171 </pubmed></ref>。個々のアクチン蛋白質は[[wikipedia:JA:アデノシン三リン酸|アデノシン三リン酸]](ATP)または[[wikipedia:JA:アデノシン二リン酸|アデノシン二リン酸]](ADP)と結合している。アクチンフィラメントはATP[[wikipedia:JA:加水分解|加水分解]]活性を有するため、フィラメントを構成するアクチン蛋白質は時間とともにADP結合型となっていく。   
 細胞内に存在する多種多彩なアクチン結合蛋白質がアクチンフィラメントの動態を制御しているが、アクチンフィラメントに固有の特徴としてトレッドミリングが挙げられる<ref><pubmed> 18391171 </pubmed></ref>。個々のアクチン蛋白質は[[wikipedia:JA:アデノシン三リン酸|アデノシン三リン酸]](ATP)または[[wikipedia:JA:アデノシン二リン酸|アデノシン二リン酸]](ADP)と結合している。アクチンフィラメントはATP[[wikipedia:JA:加水分解|加水分解]]活性を有するため、フィラメントを構成するアクチン蛋白質は時間とともにADP結合型となっていく。   


 アクチンの重合反応と脱重合反応の速度はフリーの球状アクチンの濃度に依存し、両反応速度が等しくなる時の球状アクチン濃度を[[wikipedia:JA:臨界濃度|臨界濃度]]と呼ぶ。球状アクチン濃度が臨界濃度よりも高い場合には重合が優位となり、臨界濃度よりも低い場合には脱重合が優位となる。ATP型アクチンの臨界濃度はADP型アクチンの臨界濃度よりも低く、ATP型アクチンは重合しやすくADP型アクチンは脱重合しやすい。
 アクチンの重合反応と脱重合反応の速度はフリーの球状アクチンの濃度に依存し、両反応速度が等しくなる時の球状アクチン濃度を臨界濃度と呼ぶ。球状アクチン濃度が臨界濃度よりも高い場合には重合が優位となり、臨界濃度よりも低い場合には脱重合が優位となる。ATP型アクチンの臨界濃度はADP型アクチンの臨界濃度よりも低く、ATP型アクチンは重合しやすくADP型アクチンは脱重合しやすい。


 球状アクチンが3量体となりフィラメント重合のための核を形成すると、ATP型アクチンはプラス端へ重合してフィラメントを伸長する。ATP型アクチンの重合によるフィラメント伸長がATP加水分解よりも速ければ、フィラメントプラス端はATP型アクチンのままである。そして、フィラメント内でADP型に変換されたアクチンは、マイナス端から脱重合して取り除かれる。このように、アクチンフィラメントのATP加水分解活性が、プラス端での重合とマイナス端での脱重合(トレッドミリング)に重要な役割をはたしている。  
 球状アクチンが3量体となりフィラメント重合のための核を形成すると、ATP型アクチンはプラス端へ重合してフィラメントを伸長する。ATP型アクチンの重合によるフィラメント伸長がATP加水分解よりも速ければ、フィラメントプラス端はATP型アクチンのままである。そして、フィラメント内でADP型に変換されたアクチンは、マイナス端から脱重合して取り除かれる。このように、アクチンフィラメントのATP加水分解活性が、プラス端での重合とマイナス端での脱重合(トレッドミリング)に重要な役割をはたしている。