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== ステロイドの構造 == | == ステロイドの構造 == | ||
[[Image:Steroid structure.png|thumb|right|200px|ステロイド核の構造]] | [[Image:Steroid structure.png|thumb|right|200px|ステロイド核の構造]] ステロイド核とは、シクロペンタノペルヒドロフェナントレン核のことを指し、3つのイス型六員環と1つの五員環がつながった構造をしている(参考文献)。右図のように構造式を書いた場合、それぞれの環を左下から順にA環、B環、C環、D環と呼ぶ。一部あるいはすべての炭素が水素化され、通常はC-10とC-13にメチル基を、また多くの場合C-17にアルキル基を有する。生体物質としてのステロイドはC-3位がヒドロキシル化もしくはカルボニル化されたステロール類である。 | ||
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=== ビタミンD === | === ビタミンD === | ||
[[Image: | [[Image:Provitamin to vitamin.png|thumb|right|200px|プロビタミンからビタミンDへの変換]] ビタミンDは、ステロイド核のB環が9-10位の間で開環した構造を持つ。ビタミンDは側鎖構造の違いから、D2(エルゴカルシフェロール)とD3(コレカルシフェロール)に分けられ、D2は植物に、D3は動物に多く含まれる。ビタミンDは、コレステロールが代謝を受けてプロビタミンD3(7-デヒドロコレステロール)となった後、皮膚上で紫外線によりステロイド核のB環が開きプレビタミンD3((6Z)-タカルシオール)となる。プレビタミンD3は更に、ビタミンD3(コレカルシフェロール)へと異性化する。ビタミンD自体は生理活性を持たないが、肝臓と腎臓にて3つのP450(ビタミンD25-水酸化酵素、ビタミンD1α-水酸化酵素、ビタミンD24-水酸化酵素)の働きにより活性型ビタミンD(1,25-ジヒドロキシコレカルシフェロール)へと変換され、ビタミンD受容体を介して核内の標的遺伝子の転写活性を制御することによって作用を発揮する。標的遺伝子の1つとしてカルシウム結合タンパク質であるカルビンディンが挙げられる。ビタミンD受容体は小腸、腎臓、骨組織に存在しておりカルシウム代謝と密接な関わりを持ち、腸管におけるカルシウムの吸収や腎尿細管におけるカルシウムの再吸収を促進する。活性型ビタミンDの不足は小児ではくる病、成人では骨軟化症となる。 <br> | ||
=== ステロイドホルモン === | === ステロイドホルモン === | ||
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== ステロイドホルモンの種類 == | == ステロイドホルモンの種類 == | ||
=== 副腎皮質ホルモン === | === 副腎皮質ホルモン === | ||
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副腎皮質ホルモンは、[[糖質コルチコイド]]と[[鉱質コルチコイド]]の2種に大別され、前者の代表はコルチゾールとコルチコステロン、後者の代表はアルドステロンである。アルドステロンは副腎皮質球状帯で合成され、コルチゾール(コルチコステロン)は束状帯と網状帯にて合成される。鉱質コルチコイドは血中の塩濃度を調節し、糖質コルチコイドは糖代謝の調節の他、ストレスホルモンとしても知られている。束状帯と網状帯では少量のアンドロゲンが合成されるが、アンドロゲンは副腎皮質ホルモンに含めない場合が多い。 | 副腎皮質ホルモンは、[[糖質コルチコイド]]と[[鉱質コルチコイド]]の2種に大別され、前者の代表はコルチゾールとコルチコステロン、後者の代表はアルドステロンである。アルドステロンは副腎皮質球状帯で合成され、コルチゾール(コルチコステロン)は束状帯と網状帯にて合成される。鉱質コルチコイドは血中の塩濃度を調節し、糖質コルチコイドは糖代謝の調節の他、ストレスホルモンとしても知られている。束状帯と網状帯では少量のアンドロゲンが合成されるが、アンドロゲンは副腎皮質ホルモンに含めない場合が多い。 | ||
=== 精巣ホルモン === | |||
精巣のライディッヒ細胞から分泌されるアンドロゲンは男性ホルモンとも呼ばれ、雄性化作用を持つホルモンの総称である。アンドロゲンにはテストステロン、アンドロステンジオン、デヒドロエピアンドロステロン等が挙げられるがその90%はテストステロンである。アンドロゲンは精子形成、輸精管・前立腺・精嚢・カウパー腺の維持、交尾等の雄の性行動、また攻撃行動等の社会行動にも関与している。 | |||
いくつかの動物では、周生期の精巣から分泌される高濃度アンドロゲン(アンドロゲンシャワー)の作用が脳の性分化の方向性を決定する重要な因子であることが明らかとされている。例えば、雄ラットの精巣を生後直後に摘出すると成熟後に雌特有の性行動を引き起こし、また出生一週間頃までの雌ラットにアンドロゲンを投与すると性成熟後も性周期は回帰せず無排卵となる(参考文献)。ラットの脳は生後1週間頃までは性的に未分化であり、周生期におこるアンドロゲンシャワーによって脳の雄性化と脱雌性化が起こる。このように、脳がアンドロゲンに対して高い感受性を示す時期を脳の性分化の臨界期という。<br> | |||
=== 卵巣ホルモン === | |||
卵巣から分泌されている女性ホルモンは、エストラジオール、エストロン、プロゲステロンである。ヒトの場合、下垂体ホルモンのLHとFSHが周期的に分泌されて女性ホルモンの生合成が促進される。プロゲステロンは炭素数21のステロイドで、ステロイドホルモンすべての中間代謝物でもある。哺乳類では妊娠を維持し、交尾行動を抑制する。また、エストロゲンは炭素数18のステロイドホルモンでありアンドロゲンから生成される。エストロゲンはアンドロゲンのフェニル基A環の芳香化によって生成され、生物活性を持つエストロゲンは、17β-エストラジオール、エストロン、エストリオールである。内卵胞膜細胞で合成されたプロゲステロンから酵素の働きによりアンドロゲンが生成され、顆粒膜細胞内ですぐさまエストロゲンに変換される。エストロゲンは、雌の第二次性徴、水代謝、骨形成の他、交尾行動や子育て行動、母性攻撃行動等に重要な役割を果たしている。 | 卵巣から分泌されている女性ホルモンは、エストラジオール、エストロン、プロゲステロンである。ヒトの場合、下垂体ホルモンのLHとFSHが周期的に分泌されて女性ホルモンの生合成が促進される。プロゲステロンは炭素数21のステロイドで、ステロイドホルモンすべての中間代謝物でもある。哺乳類では妊娠を維持し、交尾行動を抑制する。また、エストロゲンは炭素数18のステロイドホルモンでありアンドロゲンから生成される。エストロゲンはアンドロゲンのフェニル基A環の芳香化によって生成され、生物活性を持つエストロゲンは、17β-エストラジオール、エストロン、エストリオールである。内卵胞膜細胞で合成されたプロゲステロンから酵素の働きによりアンドロゲンが生成され、顆粒膜細胞内ですぐさまエストロゲンに変換される。エストロゲンは、雌の第二次性徴、水代謝、骨形成の他、交尾行動や子育て行動、母性攻撃行動等に重要な役割を果たしている。 | ||
多くのげっ歯類では、ロードーシスの発現は卵巣から分泌されるエストロゲンニよって制御されている。通常の性周期では、ロードーシス反射はエストロゲン分泌の高まる入らん前後でのみ起こる。また卵巣を摘出しても、通常のホルモン分泌パターンを真似てエストロゲンとプロゲステロンを連続的に投与すると雌はロードーシスを示す。エストロゲン受容体にはERαとERβの2種類が存在するが、ロードーシス反射に関与しているのは主にERαだと考えられている。ERα遺伝子を損傷したαERKOマウスの雌は、エストロゲンとプロゲステロンを投与しても全くロードーシスを示さない。一方ERβ遺伝子を欠損したERβKOマウスの雌は通常の性周期を示し、発情期には野生型の雌とほぼ同等のロードーシス反応を示す(参考文献10536018と 9832446) | |||
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== ニューロステロイド == | |||
ニューロステロイドとは脳で合成されるステロイドホルモンの総称である。脳は長年、末梢器官が合成・分泌するステロイドホルモンの標的器官として捉えられてきたが、1981年にフランスの内分泌学者Baulieuは、ラットの脳がコレステロールからプレグネノロンとデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)を合成し硫酸や硫酸エステルに変換していることを見出し「ニューロステロイド」と命名した。現在では、脊椎動物のほとんどがニューロステロイドを合成していることが知られる<ref><pubmed>19505496 </pubmed></ref>。脳には、シトクロムP450sccに加え、ステロイド硫酸基転移酵素、3β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素、5α(β)-還元酵素、17α-水酸化・開裂酵素、17β-水酸基脱水素酵素など、多くのステロイド合成酵素が存在することが証明され、脳は様々なニューロステロイドを合成していることが明らかとなった。ニューロステロイドは末梢内分泌器官を除去してもあまり変動しないことから、末梢内分泌器官とは独立したステロイド合成系を有していると考えられている。 | |||
<br> P450scc, 3β-HSDは、ニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイトの全てに発現している。 | |||
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