「電気けいれん療法」の版間の差分

編集の要約なし
編集の要約なし
編集の要約なし
43行目: 43行目:
現在主に使用されているものはサイマトロン(Thymatron®)と呼ばれるパルス波治療器で、短パルス矩形波(パルス波)を通電することで、従来の刺激装置であるサイン波治療器の約1/3程度のエネルギー量でけいれんを誘発することができるため、循環器系副作用、通電後の認知機能障害などが低減し、更にECTの安全性が向上している。パルス波治療器を用いた実際のECT手順については後述する。
現在主に使用されているものはサイマトロン(Thymatron®)と呼ばれるパルス波治療器で、短パルス矩形波(パルス波)を通電することで、従来の刺激装置であるサイン波治療器の約1/3程度のエネルギー量でけいれんを誘発することができるため、循環器系副作用、通電後の認知機能障害などが低減し、更にECTの安全性が向上している。パルス波治療器を用いた実際のECT手順については後述する。
 またECTの手順の標準化や安全性のさらなる向上のため、定電流短パルス矩形波治療器の使用にあたり、近年はECT治療施行者に対する精神科関連学会を中心に運営するECTトレーニングセミナーの受講が義務付けられ、使用法についても標準化されていることで、強い高齢者や身体合併症のある精神疾患患者にもECT治療がより安全に行われるようになっている。
 またECTの手順の標準化や安全性のさらなる向上のため、定電流短パルス矩形波治療器の使用にあたり、近年はECT治療施行者に対する精神科関連学会を中心に運営するECTトレーニングセミナーの受講が義務付けられ、使用法についても標準化されていることで、強い高齢者や身体合併症のある精神疾患患者にもECT治療がより安全に行われるようになっている。
 しかし、ECT麻酔薬として良く用いられているチオペンタールなどのバルビツレート系麻酔薬はもちろん、プロポフォールなどの非バルビツレート系麻酔薬も少なからず抗けいれん作用を持ち、パルス波治療器の普及とともに、パルス波治療器の最大刺激電流量(100%)を用いても脳波上のけいれん波が誘発されない症例が少なからず存在することが分かってきた。バルビツレート系麻酔薬であるメトヘキシタールでECTを受けた471名の患者のうち72人(15%)は最大刺激強度を必要とし、最大刺激強度でも72名のうち24名(33%)は発作持続時間が足りないか、不発であったという報告がある(10)。脳波上のけいれん波が不十分であったり、不発である場合は、内服している抗けいれん作用のあるベンゾジアゼピンや抗けいれん薬の中止、けいれん域値を下げるECT通電前の過換気、ケタミン麻酔などへの変更を検討する必要がある。
 しかし、ECT麻酔薬として良く用いられているチオペンタールなどのバルビツレート系麻酔薬はもちろん、プロポフォールなどの非バルビツレート系麻酔薬も少なからず抗けいれん作用を持ち、パルス波治療器の普及とともに、パルス波治療器の最大刺激電流量(100%)を用いても脳波上のけいれん波が誘発されない症例が少なからず存在することが分かってきた。バルビツレート系麻酔薬であるメトヘキシタールでECTを受けた471名の患者のうち72人(15%)は最大刺激強度を必要とし、最大刺激強度でも72名のうち24名(33%)は発作持続時間が足りないか、不発であったという報告がある(10)。脳波上のけいれん波が不十分であったり、不発である場合は、内服している抗けいれん作用のあるベンゾジアゼピンや抗けいれん薬の中止、けいれん域値を下げるECT通電前の過換気、ケタミン麻酔などへの変更(11)を検討する必要がある。
10) Krystal AD, Dean MD, Weiner RD, : ECT stimulus intensity: are present ECT devices too limited? Am J Psychiatry 157 : 963-7, 2000
10) Krystal AD, Dean MD, Weiner RD, : ECT stimulus intensity: are present ECT devices too limited? Am J Psychiatry 157 : 963-7, 2000
11) Krystal AD, Weiner RD, Dean MD, et al : Comparison of seizure duration, ictal EEG, and cognitive effects of ketamine and methohexital anesthesia with ECT. J Neuropsychiatry Clin Neurosci 15 : 27-34, 2003




45

回編集