「視床ゲート機構」の版間の差分

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== 具体例 ==
== 具体例 ==
=== 視覚 ===
=== 視覚 ===
 視床において視覚的「[[注意]]」が向いた対象の信号を増強し、それ以外の信号を抑制することが報告されている15-18。視床網様核の働きにより、「注意」が向いている視野に[[受容野]]を持つ視床外側膝状体の中継細胞に存在する興奮性神経細胞の活動は上昇し、その周囲、すなわち「注意」が向いていない部位に受容野を持つ神経細胞の活動は減弱する16。このことによって「注意」を向けた対象物の視覚情報を選択的に大脳[[一次視覚野]]に伝達することができる。
 視床において視覚的「[[注意]]」が向いた対象の信号を増強し、それ以外の信号を抑制することが報告されている<ref><pubmed>16624964</pubmed></ref><ref name=McAlonan2008><pubmed>18849967</pubmed></ref><ref><pubmed>11102499</pubmed></ref><ref><pubmed>10559421</pubmed></ref>15-18。視床網様核の働きにより、「注意」が向いている視野に[[受容野]]を持つ視床外側膝状体の中継細胞に存在する興奮性神経細胞の活動は上昇し、その周囲、すなわち「注意」が向いていない部位に受容野を持つ神経細胞の活動は減弱する<ref name=McAlonan2008/>16。このことによって「注意」を向けた対象物の視覚情報を選択的に大脳[[一次視覚野]]に伝達することができる。
=== 体性感覚 ===
=== 体性感覚 ===
 [[ヒト]]で[[体性感覚]]視床である[[後腹側核]](ventral posterior nucleus)領域に[[脳梗塞|梗塞]]が起きた患者において、視床ゲート機構の障害が観察されたという報告がある19。
 [[ヒト]]で[[体性感覚]]視床である[[後腹側核]](ventral posterior nucleus)領域に[[脳梗塞|梗塞]]が起きた患者において、視床ゲート機構の障害が観察されたという報告がある<ref><pubmed>12411655</pubmed></ref>19。
=== 聴覚 ===
=== 聴覚 ===
 [[げっ歯類]][[ラット]]の[[動物]]実験において、特異な音に注意を払うといった聴覚的「注意」によって視床網様核を介して内側膝状体の活動が制御されることが知られている20。ヒトでは[[統合失調症]]患者において、視床ゲート機構の機能低下あるいは消失が聴覚に関して報告されている21,22。
 [[げっ歯類]][[ラット]]の[[動物]]実験において、特異な音に注意を払うといった聴覚的「注意」によって視床網様核を介して内側膝状体の活動が制御されることが知られている<ref><pubmed>19684591</pubmed></ref>20。ヒトでは[[統合失調症]]患者において、視床ゲート機構の機能低下あるいは消失が聴覚に関して報告されている<ref><pubmed>22461278</pubmed></ref><ref><pubmed>12559658</pubmed></ref>21,22。
=== 痛覚 ===
=== 痛覚 ===
 [[内臓痛]]に関連して視床ゲート機構が働いているという報告がある23。また、麻酔時や睡眠時の感覚入力遮断にも視床ゲート機構が重要な働きを担っている24,25。
 [[内臓痛]]に関連して視床ゲート機構が働いているという報告がある<ref><pubmed>14526084</pubmed></ref>23。また、麻酔時や睡眠時の感覚入力遮断にも視床ゲート機構が重要な働きを担っている<ref><pubmed>18425091</pubmed></ref><ref><pubmed>25126786</pubmed></ref>24,25。
=== 複数の感覚間での視床ゲート機構 ===
=== 複数の感覚間での視床ゲート機構 ===
multi-modal thalamic gating
multi-modal thalamic gating


 [[視床網様核]]の受容野構造は視覚、聴覚といった単一[[モダリティ]]にのみ選択性をもつものだけでなく、例えば視覚に対して応答する細胞が聴覚に対しても応答するように、複数の感覚モダリティを有する細胞があることが知られており26-28、そういった感覚を跨いだゲート機構も有していると考えられる。
 [[視床網様核]]の受容野構造は視覚、聴覚といった単一[[モダリティ]]にのみ選択性をもつものだけでなく、例えば視覚に対して応答する細胞が聴覚に対しても応答するように、複数の感覚モダリティを有する細胞があることが知られており<ref><pubmed>28202254</pubmed></ref><ref><pubmed>24646412</pubmed></ref><ref><pubmed>22101990</pubmed></ref>26-28、そういった感覚を跨いだゲート機構も有していると考えられる。


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==