「ナノボディ」の版間の差分

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<font size="+1">山形方人</font><[[br]]>
<font size="+1">山形方人</font><br>
''Harvard University''<br>
''Harvard University''<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2018年x月x日 原稿完成日:2018年x月x日<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2018年8月13日 原稿完成日:2018年8月x日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/]( xx大学)<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/]( xx大学)<br>
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 免疫組織化学に最もよく用いられているのは、ナノボディをタンパク質として精製後、色素分子などを化学的にカップリングするという方法である。このような試薬は既製のナノボディ試薬として市販もされている(例、ChromoTek社<ref>https://www.chromotek.com/</ref> )。最近、1次抗体を認識する「2次抗体」の活性を持つナノボディが報告されている<ref><pubmed>29263082</pubmed></ref> 。ナノボディの多くは、大腸菌で活性あるものを大量産生、精製することができるので、一度、配列がわかれば、動物を使用する必要がなくなる。
 免疫組織化学に最もよく用いられているのは、ナノボディをタンパク質として精製後、色素分子などを化学的にカップリングするという方法である。このような試薬は既製のナノボディ試薬として市販もされている(例、ChromoTek社<ref>https://www.chromotek.com/</ref> )。最近、1次抗体を認識する「2次抗体」の活性を持つナノボディが報告されている<ref><pubmed>29263082</pubmed></ref> 。ナノボディの多くは、大腸菌で活性あるものを大量産生、精製することができるので、一度、配列がわかれば、動物を使用する必要がなくなる。


 また、化学的なカップリングなので、カップリングする分子を変化させ工夫することで、目的に合わせて様々な標識ナノボディ(薬剤を結合した[[wj:武装抗体|武装抗体]]など)を作製できる可能性がある<ref><pubmed>28883823 </pubmed></ref> 。しかし、カップリングによるアミノ酸残基を修飾する反応により抗原結合能を失うことも想定される。しかし、修飾するアミノ酸残基の位置を制御することは可能である<ref><pubmed>26633879</pubmed></ref> 。<u>(編集部コメント:「しかし」がダブっています。)</u>
 また、化学的なカップリングなので、カップリングする分子を変化させ工夫することで、目的に合わせて様々な標識ナノボディ(薬剤を結合した[[wj:武装抗体|武装抗体]]など)を作製できる可能性がある<ref><pubmed>28883823 </pubmed></ref> 。しかし、カップリングによるアミノ酸残基を修飾する反応により抗原結合能を失うことも想定される。この問題については、修飾するアミノ酸残基の位置を制御することで解決は可能である<ref><pubmed>26633879</pubmed></ref> 。
====RANbody====
====RANbody====
 化学的カップリング反応は、しばしばナノボディの活性を消失させるが、実験的にも条件決定など必ずしも容易ではない。この問題を克服するために開発されたプラットフォームがRANbody(Receptor-and-Nanobody)である<ref name=yamagata2018><pubmed>29440485</pubmed></ref>。
 化学的カップリング反応は、しばしばナノボディの活性を消失させるが、実験的にも条件決定など必ずしも容易ではない。この問題を克服するために開発されたプラットフォームがRANbody(Receptor-and-Nanobody)である<ref name=yamagata2018><pubmed>29440485</pubmed></ref>。


 RANbodyは、ナノボディを酵素(改良型[[wj:西洋ワサビペルオキシダーゼ|西洋ワサビペルオキシダーゼ]] HRP)、抗原性のあるニワトリ抗体IgY、多重エピトープタグなどと組み換えDNA技術により融合させたものである。<u>(編集部コメント:原報を見ると、RANbodyにも種類があり、一度にすべてつなげたわけではないようですが、この書き方では全てをタンデムに繋げたように読めます。また鶏抗体のFcドメインであることも書かないと、何故つなげたのかが読み取れないと思います。)</u>プラスミドを293T細胞などの動物細胞に導入するだけで、培地中に放出されるので多くの生物医学系の実験室で利用できる。HRPは大腸菌の中では活性のある酵素として発現させることができない。その一つの解決策として、[[アスコルビン酸オキシダーゼ]] ([[APEX2]])との融合タンパク質を大腸菌で発現させて用いることができるが、APEX2はHRPに比べて活性が弱い<ref><pubmed>29915061</pubmed></ref><ref><pubmed>25419960</pubmed></ref> 。
 RANbodyは、1つのナノボディを酵素(改良型[[wj:西洋ワサビペルオキシダーゼ|西洋ワサビペルオキシダーゼ]] HRP)、抗原性のあるニワトリ抗体IgYのFc断片、あるいは多重エピトープタグなどのうち1つと、組み換えDNA技術により融合させることで、検出可能にしたものである。プラスミドを293T細胞などの動物細胞に導入するだけで、培地中に放出されるので多くの生物医学系の実験室で利用できる。HRPは大腸菌の中では活性のある酵素として発現させることができない。その一つの解決策として、[[アスコルビン酸オキシダーゼ]] ([[APEX2]])との融合タンパク質を大腸菌で発現させて用いることができるが、APEX2はHRPに比べて活性が弱い<ref><pubmed>29915061</pubmed></ref><ref><pubmed>25419960</pubmed></ref> 。


==利用法==
==利用法==
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=== 免疫組織化学 ===
=== 免疫組織化学 ===
 ナノボディは小さく、通常の抗体では入り込めない箇所に結合することで、[[STORM]]や[[PALM]]などの[[高解像度顕微鏡]]においても、アーチファクトが減少し、有用なツールになると考えられている<ref><pubmed>23845946</pubmed></ref> 。<u>(編集部コメント:上の方から持ってきました)</u>
 上述したように標識したナノボディを用いることで、細胞や組織の染色が可能である。ナノボディは小さく、通常の抗体では入り込めない箇所に結合することで、[[STORM]]や[[PALM]]などの[[高解像度顕微鏡]]においても、アーチファクトが減少し、有用なツールになると考えられている<ref><pubmed>23845946</pubmed></ref> 。


===イントラボディ、クロモボディ===
===イントラボディ、クロモボディ===
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==ナノボディー以外の組み換え結合体==
==ナノボディー以外の組み換え結合体==
 免疫グロブリンに由来するナノボディ以外に、免疫グロブリン以外に見られるタンパク質のドメインを用いて、新たな'''組み換え結合体'''を作製する方法もあり、原理的にはこのような組み換え結合体はナノボディと同じ利用法が可能である<ref name=Helma2015><pubmed>26056137</pubmed></ref><ref><pubmed>28249355</pubmed></ref> 。
 免疫グロブリンに由来するナノボディ以外に、免疫グロブリン以外に見られるタンパク質のドメインを用いて、新たな'''組み換え結合体'''(Recombinant binder, Programmable protein)を作製する方法もあり、原理的にはこのような組み換え結合体はナノボディと同じ利用法が可能である<ref name=Helma2015><pubmed>26056137</pubmed></ref><ref><pubmed>28249355</pubmed></ref> 。


 細胞接着分子[[wj:フィブロネクチン|フィブロネクチン]]中の代表的なモチーフであるtype IIIリピートは、免疫グロブリンドメインと構造が類似しており、これを他の分子に結合する免疫グロブリンのように改変することが可能である。この方法は、'''モノボディ'''(monobody)と名付けられている<ref><pubmed>22198408</pubmed></ref>。この方法は、ナノボディと違って、ジスルフィド結合によって構造が左右されないので、細胞内での還元状態の環境でも利用できる可能性が広がる。例えば、Arnoldのグループによって開発された'''FingR'''は、[[PSD-95]]や[[ゲフィリン]]といったシナプスタンパク質を認識することができる<ref><pubmed>23791193</pubmed></ref> 。
 細胞接着分子[[wj:フィブロネクチン|フィブロネクチン]]中の代表的なモチーフであるtype IIIリピートは、免疫グロブリンドメインと構造が類似しており、これを他の分子に結合する免疫グロブリンのように改変することが可能である。この方法は、'''モノボディ'''(monobody)と名付けられている<ref><pubmed>22198408</pubmed></ref>。この方法は、ナノボディと違って、ジスルフィド結合によって構造が左右されないので、細胞内での還元状態の環境でも利用できる可能性が広がる。例えば、Arnoldのグループによって開発された'''FingR'''は、[[PSD-95]]や[[ゲフィリン]]といったシナプスタンパク質を認識することができる<ref><pubmed>23791193</pubmed></ref> 。