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<font size="+1">[http://researchmap.jp/shinichihigashijima 東島 眞一]</font><br> | <font size="+1">[http://researchmap.jp/shinichihigashijima 東島 眞一]</font><br> | ||
''自然科学研究機構 | ''自然科学研究機構 生命創成探究センター 自然科学研究機構 基礎生物学研究所 神経行動学研究部門''<br> | ||
DOI XXXX/XXXX 原稿受付日:2013年3月18日 原稿完成日:2013年月日<br> | DOI XXXX/XXXX 原稿受付日:2013年3月18日 原稿完成日:2013年月日<br> | ||
担当編集委員:[ | 担当編集委員:[https://researchmap.jp/masahikowatanabeo 渡辺 雅彦] (北海道大学大学院医学研究院 解剖学分野 解剖発生学教室)<br> | ||
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== 脊髄介在ニューロンとは == | == 脊髄介在ニューロンとは == | ||
脊髄内のニューロンは[[軸索]]の投射部位によって、大きく以下の3つに分けられる | 脊髄内のニューロンは[[軸索]]の投射部位によって、大きく以下の3つに分けられる | ||
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また、軸索の伸長範囲が明確に分かっていない場合も多く、そのような場合、脊髄内の情報処理に関わるニューロンとして介在ニューロンの言葉が広い意味で使われる。したがって、比較的長距離の情報伝達を行うニューロンも介在ニューロンとして扱われる。この場合、[[大脳皮質]]における介在ニューロン(局所介在ニューロンの意味で用いられる)とは、意味するポイントが異なる点に注意が必要である。 | また、軸索の伸長範囲が明確に分かっていない場合も多く、そのような場合、脊髄内の情報処理に関わるニューロンとして介在ニューロンの言葉が広い意味で使われる。したがって、比較的長距離の情報伝達を行うニューロンも介在ニューロンとして扱われる。この場合、[[大脳皮質]]における介在ニューロン(局所介在ニューロンの意味で用いられる)とは、意味するポイントが異なる点に注意が必要である。 | ||
脊髄内には非常に他種類の介在ニューロンが存在すると考えられているが、一般に、介在ニューロンの役割、結合様式を電気生理学的、解剖学的手法のみで調べることは簡単ではなく、何種類の介在ニューロンが存在しているか答えることは難しい。 | |||
介在ニューロンの多様性に関しては、遺伝子発現との関連から、ニューロンのクラスを同定する手法が有力な手段であると考えられ、その方向からの研究が、注目されている<ref><pubmed> 15721739</pubmed></ref><ref><pubmed> 19543221 </pubmed></ref>。特に、発生の時期に一過的に発現する[[転写因子]]によって規定される神経細胞の特性に研究の焦点が当てられてきた。 | |||
発生期には、脊髄の神経前駆体領域は、[[背腹軸]]に沿って転写因子の発現によって10程度のドメインに分割され、それぞれのドメインから異なったタイプの介在ニューロンが生じることが明らかにされた(生じるドメインに応じて、[[V0]]-[[V3]]ニューロン、[[dI1]]-[[dI6]]ニューロンと呼ばれる)<ref><pubmed>10830170</pubmed></ref>。最近15年程度の解析により、これらは、介在ニューロンの軸索走行や興奮性・抑制性、といった、おおまかな性質と対応していることが明らかとなってきた。たとえば、[[V1]]ニューロン(転写因子[[En1]]の発現によって規定される)は、すべて同側に投射する抑制性のニューロンであり<ref name=ref5><pubmed>16255029</pubmed></ref>、また、[[V2a]]ニューロン([[V2]]ニューロンの中で興奮性のもの;転写因子[[Chx10]]の発現により規定される)は、すべて同側に投射する興奮性のニューロンである<ref><pubmed>18940589</pubmed></ref>。 | |||
さらに近年になって、より細かな介在ニューロンサブタイプの分類が、[[単一細胞からのRNAシークエンシング]]研究により可能となってきている<ref><pubmed>29686262</pubmed></ref>。今後、この方面からの研究がますます進展すること期待される。 | |||
[[file:higashijima_fig1.png|thumb|300px| '''図1. レンショウ細胞'''<br>文献<ref name=Kandel>'''Eric R. Kandel, James H. Schwartz and Thomas M. Jessell'''<br>Principles of Neural Science, 4th edition<br>''McGraw-Hill Companies'', 2000</ref>より改変]] | |||
[[file:higashijima_fig2.png|thumb|330px| '''図2. Ia抑制性介在ニューロン'''<br>文献<ref name=Kandel />より改変]] | |||
== よく知られている脊髄介在神経 == | == よく知られている脊髄介在神経 == | ||
感覚ニューロンや運動ニューロンと特徴的な結合をしている介在ニューロンに関しては再現的な同定が可能である。そのような介在ニューロンの例として、たとえば[[レンショウ細胞|レンショウ(Renshaw)細胞]]や[[Ia抑制性介在ニューロン]] | 感覚ニューロンや運動ニューロンと特徴的な結合をしている介在ニューロンに関しては再現的な同定が可能である。そのような介在ニューロンの例として、たとえば[[レンショウ細胞|レンショウ(Renshaw)細胞]]や[[Ia抑制性介在ニューロン]]があげられる。なお、この両者はともに、上記のV1ニューロンに属することが明らかにされている<ref name=ref5 />。 | ||
=== レンショウ細胞 === | === レンショウ細胞 === | ||
運動ニューロンからの[[反回抑制]](recurrent inhibition)に関わる介在ニューロンである<ref><pubmed> 21028162 </pubmed></ref><ref><pubmed> 13222354 </pubmed></ref>(図1)。 | 運動ニューロンからの[[反回抑制]](recurrent inhibition)に関わる介在ニューロンである<ref><pubmed> 21028162 </pubmed></ref><ref><pubmed> 13222354 </pubmed></ref>(図1)。 | ||
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またIa抑制性介在ニューロンにはIa感覚ニューロンからの[[一次求心性線維]]からだけでなく、皮質、[[赤核]]、[[前庭脊髄路]]などの[[下行性線維]]からの入力が入ることが知られており、反射の際だけでなく、通常の運動においても大事な役割を果たしていると考えられている。 | またIa抑制性介在ニューロンにはIa感覚ニューロンからの[[一次求心性線維]]からだけでなく、皮質、[[赤核]]、[[前庭脊髄路]]などの[[下行性線維]]からの入力が入ることが知られており、反射の際だけでなく、通常の運動においても大事な役割を果たしていると考えられている。 | ||
== 前肢の巧緻運動に携わる脊髄介在(脊髄固有)ニューロン == | |||
脊髄介在ニューロン、ないし、脊髄固有ニューロンは、歩行運動や反射運動といった定型的な運動だけでなく、[[巧緻運動|巧緻な運動]]にも携わっていることが示されてきている。 | |||
たとえば[[マカクザル]]において、[[頚髄]]第3髄節から頚髄第5髄節(C3-C5)に存在する脊髄固有ニューロンが前肢の指の巧緻な運動の制御に重要な役割を果たしていることが、[[ウイルスベクター]]を駆使した精巧な実験に寄って示されている<ref><pubmed>22722837</pubmed></ref>。[[マウス]]においても、習熟が必要とされる前肢の到達運動において、C3-C4に存在する、発生学的にはV2aクラスに属する脊髄固有ニューロンが重要な役割を果たしていることが示されている<ref><pubmed>24487617</pubmed></ref>。 | |||
== 関連項目 == | == 関連項目 == |