「トリプレット病」の版間の差分

編集の要約なし
編集の要約なし
編集の要約なし
22行目: 22行目:


   
   
==機能獲得の機構を介した疾患 (1) ポリグルタミン病 ==
==機能獲得の機構を介した疾患 (1) ポリグルタミン病 ==


31行目: 29行目:
'''SBMA (球脊髄性筋萎縮症)'''
'''SBMA (球脊髄性筋萎縮症)'''


アンドロゲンレセプター遺伝子(AR)内のCAGリピートの異常伸長によるX染色体劣性遺伝性の疾患で、緩徐進行性の筋萎縮(特に近位筋)や線維束攣縮を主症状とする。中年期に発症することが多く、筋萎縮・脱力は顔面筋・舌筋・咽頭筋・遠位筋にも広がる。アンドロゲンに対する感受性の軽度低下による女性化乳房、睾丸萎縮、生殖能力の低下も見られる。病理学的には脊髄前角細胞、延髄の下位運動ニュ−ロン、後根神経節細胞の変性が特徴的で、変異アンドロゲンレセプターは神経細胞内で核内封入体を形成する。
アンドロゲンレセプター遺伝子(''AR'')内のCAGリピートの異常伸長によるX染色体劣性遺伝性の疾患で、緩徐進行性の筋萎縮(特に近位筋)や線維束攣縮を主症状とする。中年期に発症することが多く、筋萎縮・脱力は顔面筋・舌筋・咽頭筋・遠位筋にも広がる。アンドロゲンに対する感受性の軽度低下による女性化乳房、睾丸萎縮、生殖能力の低下も見られる。病理学的には脊髄前角細胞、延髄の下位運動ニュ−ロン、後根神経節細胞の変性が特徴的で、変異アンドロゲンレセプターは神経細胞内で核内封入体を形成する。


'''ハンチントン病 (Huntington disease)'''
'''ハンチントン病 (Huntington disease)'''
ハンチンチン蛋白N末端部に存在するポリグルタミン鎖をコードするHtt遺伝子内CAGリピートの異常伸長による疾患で、患者は主に中年期に発症し、舞踏病(不随意運動の一種)に加えて、記銘力障害、人格変化、うつなどの症状を示し、平均10年から15年で死に至る。神経病理学的には尾状核と被殻の著名な萎縮が特徴的で、GABA作動性の投射細胞である中型有棘神経細胞(medium spiny neuron)が最も変性に陥りやすい細胞とされる。2次的に線条体から投射を受ける淡蒼球も変性し、また大脳皮質の萎縮も認められるが、小脳プルキンエ細胞は一般的には保たれる。
ハンチンチン蛋白N末端部に存在するポリグルタミン鎖をコードするHtt遺伝子内CAGリピートの異常伸長による疾患で、患者は主に中年期に発症し、舞踏病(不随意運動の一種)に加えて、記銘力障害、人格変化、うつなどの症状を示し、平均10年から15年で死に至る。神経病理学的には尾状核と被殻の著名な萎縮が特徴的で、GABA作動性の投射細胞である中型有棘神経細胞(medium spiny neuron)が最も変性に陥りやすい細胞とされる。2次的に線条体から投射を受ける淡蒼球も変性し、また大脳皮質の萎縮も認められるが、小脳プルキンエ細胞は一般的には保たれる。
20歳以下で発症する若年型HDは全体の5-10%を占め、成人型で観察される症状とはやや臨床像が異なり、重篤な精神機能障害や小脳症状なども認められる。若年型HDの患者では通常,CAG反復数が60回超のHTTアレルが認められる.
20歳以下で発症する若年型HDは全体の5-10%を占め、成人型で観察される症状とはやや臨床像が異なり、重篤な精神機能障害や小脳症状なども認められる。若年型の患者では通常,CAG反復数が60回超のHTTアレルが認められる.
 ハンチンチン蛋白の生理機能については不明な点が多いが、タンパク間相互作用を介するHEAT リピート構造を多数有することから、多彩な生理機能に関与する足場(scaffold)タンパクであると考えられている。
 ハンチンチン蛋白の生理機能については不明な点が多いが、タンパク間相互作用を介するHEAT リピート構造を多数有することから、多彩な生理機能に関与する足場(scaffold)タンパクであると考えられている。


51行目: 49行目:
'''SCA1'''
'''SCA1'''


アタキシン1 (ATXN1)をコードするSCA1遺伝子内のCAGリピートの異常伸長による常染色体優性遺伝性疾患、患者は小脳性運動失調・構音障害・嚥下障害・外眼筋麻痺・錐体路症状・認知機能障害などの症状を呈する。表現促進現象が認められる。ATXN1は広く中枢神経系の神経細胞で発現しているが神経病理学的にはプルキンエ細胞・小脳歯状核・赤核・橋核・下オリーブ核・クラーク柱・脊髄小脳路などを中心に選択的変性を認め、残存する神経細胞核内にはATXN1陽性の封入体形成が認められる。ATXN1の生理機能には不明な点が多いが、核移行シグナルを有し、またRNAと結合しうることが示されている。加えてATXN1と相互作用するまたさまざまな因子(ATXN1L,CIC,RBM17など)が同定されており、ポリグルタミン鎖の伸長はそれら因子との相互作用を複雑に変化させ、病態発現に関与していると考えられる。
アタキシン1 (ATXN1)をコードする''SCA1''遺伝子内のCAGリピートの異常伸長による常染色体優性遺伝性疾患、患者は小脳性運動失調・構音障害・嚥下障害・外眼筋麻痺・錐体路症状・認知機能障害などの症状を呈する。表現促進現象が認められる。ATXN1は広く中枢神経系の神経細胞で発現しているが神経病理学的にはプルキンエ細胞・小脳歯状核・赤核・橋核・下オリーブ核・クラーク柱・脊髄小脳路などを中心に選択的変性を認め、残存する神経細胞核内にはATXN1陽性の封入体形成が認められる。ATXN1の生理機能には不明な点が多いが、核移行シグナルを有し、またRNAと結合しうることが示されている。加えてATXN1と相互作用するまたさまざまな因子(ATXN1L,CIC,RBM17など)が同定されており、ポリグルタミン鎖の伸長はそれら因子との相互作用を複雑に変化させ、病態発現に関与していると考えられる。




'''SCA2'''
'''SCA2'''


アタキシン2 (ATXN2)をコードするSCA2遺伝子内のCAGリピートの異常伸長による常染色体優性遺伝性疾患で、患者はSCA1と類似の臨床像を示すが、発症早期より眼振を欠く緩徐眼球運動を認めるのが特徴的とされる。健常者ではリピート長が22または23である頻度が高く、患者では35以上に伸長している。神経病理学的には小脳皮質全層・橋核・下オリーブ核の強い変性が主体をなす。ATXN2の生理機能については不明な点が多いが、細胞質内のRNAの代謝に関与すると考えられている。最近、ATXN2が筋萎縮性側索硬化症 (ALS)の責任遺伝子産物の1つTDP-43 (TAR DNA-binding protein)とRNA依存性に相互作用すること、またSCA2遺伝子 CAGリピートの中程度の伸長(24以上34以下)が、ALSの危険因子となることが示された。
アタキシン2 (ATXN2)をコードする''SCA2''遺伝子内のCAGリピートの異常伸長による常染色体優性遺伝性疾患で、患者はSCA1と類似の臨床像を示すが、発症早期より眼振を欠く緩徐眼球運動を認めるのが特徴的とされる。健常者ではリピート長が22または23である頻度が高く、患者では35以上に伸長している。神経病理学的には小脳皮質全層・橋核・下オリーブ核の強い変性が主体をなす。ATXN2の生理機能については不明な点が多いが、細胞質内のRNAの代謝に関与すると考えられている。最近、ATXN2が筋萎縮性側索硬化症 (ALS)の責任遺伝子産物の1つTDP-43 (TAR DNA-binding protein)とRNA依存性に相互作用すること、またSCA2遺伝子 CAGリピートの中程度の伸長(24以上34以下)が、ALSの危険因子となることが示された。




'''SCA3'''
'''SCA3'''


アタキシン3 (ATXN3)をコードするMJD1遺伝子内のCAGリピートの異常伸長による常染色体優性遺伝性疾患でMachado-Joseph 病とも呼ばれる。臨床症状は多彩で、小脳失調、錐体路徴候、ジストニア、パーキンソニズム、末梢神経障害などを中核症状として、加えて進行性外眼筋麻痺、びっくり眼、顔面ミオキミアなどの症状を伴う。病理学的にはルイ体淡蒼球内節系、歯状核赤核系、黒質、橋核、脳幹運動神経核、脊髄、末梢神経の変性が主体をなす。アタキシン3タンパクのN末端部にはジョセフィンドメインと呼ばれるユビキチン分解酵素活性を示す領域があり、さらにその下流にはユビキチンと結合する2カ所のUIMと呼ばれるモチーフがあることから、ユビキチンプロテアソーム分解系 (UPS) の調節因子として機能する分子と考えられている。
アタキシン3 (ATXN3)をコードする''MJD1''遺伝子内のCAGリピートの異常伸長による常染色体優性遺伝性疾患でMachado-Joseph 病とも呼ばれる。臨床症状は多彩で、小脳失調、錐体路徴候、ジストニア、パーキンソニズム、末梢神経障害などを中核症状として、加えて進行性外眼筋麻痺、びっくり眼、顔面ミオキミアなどの症状を伴う。病理学的にはルイ体淡蒼球内節系、歯状核赤核系、黒質、橋核、脳幹運動神経核、脊髄、末梢神経の変性が主体をなす。アタキシン3タンパクのN末端部にはジョセフィンドメインと呼ばれるユビキチン分解酵素活性を示す領域があり、さらにその下流にはユビキチンと結合する2カ所のUIMと呼ばれるモチーフがあることから、ユビキチンプロテアソーム分解系 (UPS) の調節因子として機能する分子と考えられている。




'''SCA6'''
'''SCA6'''


SCA6変異アレルではCACNA1A遺伝子の最終エクソン(エクソン47)に存在するCAGリピートが軽度に伸長(正常: 4-19, 患者: 19-33)している。CACNA1A遺伝子はP/Q 型電位依存性カルシウムチャネルのメインサブユニットCav2.1をコードし、CAGリピートはチャネルC末端部細胞質内ドメインに存在するポリグルタミンに翻訳される。Cav2.1はシナプス終末からの神経伝達物質の放出に重要な役割を果たすことが知られており、特にプルキンエ細胞に強く発現している。本邦において優性遺伝遺伝性SCDの約30%を占める。主に40才から50才代の中年に発症する患者が多い。患者は、失調性歩行、四肢の運動失調、構音障害、注視眼振などの小脳失調症を呈し、臨床的に小脳症状以外に目立った症状がなく、いわゆる純粋小脳型の特徴を示す。経過は緩徐進行性で生命予後は比較的良好である。神経病理学的には小脳PCにほぼ限局した選択的な神経脱落を示す。Cav2.1陽性ユビキチン陰性の封入体が細胞質・樹状突起近位部を中心に認められるのが特徴的である。CAGリピートの伸長はCav2.1チャネルの基本的機能には影響しない。
SCA6変異アレルでは''CACNA1A''遺伝子の最終エクソン(エクソン47)に存在するCAGリピートが軽度に伸長(正常: 4-19, 患者: 19-33)している。''CACNA1A''遺伝子はP/Q 型電位依存性カルシウムチャネルのメインサブユニットCav2.1をコードし、CAGリピートはチャネルC末端部細胞質内ドメインに存在するポリグルタミンに翻訳される。Cav2.1はシナプス終末からの神経伝達物質の放出に重要な役割を果たすことが知られており、特にプルキンエ細胞に強く発現している。本邦において優性遺伝遺伝性SCDの約30%を占める。主に40才から50才代の中年に発症する患者が多い。患者は、失調性歩行、四肢の運動失調、構音障害、注視眼振などの小脳失調症を呈し、臨床的に小脳症状以外に目立った症状がなく、いわゆる純粋小脳型の特徴を示す。経過は緩徐進行性で生命予後は比較的良好である。神経病理学的には小脳PCにほぼ限局した選択的な神経脱落を示す。Cav2.1陽性ユビキチン陰性の封入体が細胞質・樹状突起近位部を中心に認められるのが特徴的である。CAGリピートの伸長はCav2.1チャネルの基本的機能には影響しない。




82行目: 80行目:
'''筋緊張性ジストロフィー 1型 (DM1)'''
'''筋緊張性ジストロフィー 1型 (DM1)'''


ミオトニア(筋強直症、myotonia)と進行性の筋萎縮・筋力低下を主徴とする常染色体優性遺伝性疾患で、白内障、心伝導障害、インスリン抵抗性糖尿病、睡眠障害、精巣萎縮、高ガンマグロブリン血症、認知症、若年禿頭などを伴う全身性の疾患である。変異アレルではDMPK遺伝子の3’UTR領域に存在するCTGリピートが50から数1000の範囲で伸長している。表現促進現象が認められ、ほとんど無症状の母親患者が重症型の臨床症状を示す子供を出生することがある。先天型DM1は生下時の筋緊張低下と全身の著明な筋力低下が特徴で、しばしば呼吸不全を来たし早期に死亡する。
ミオトニア(筋強直症、myotonia)と進行性の筋萎縮・筋力低下を主徴とする常染色体優性遺伝性疾患で、白内障、心伝導障害、インスリン抵抗性糖尿病、睡眠障害、精巣萎縮、高ガンマグロブリン血症、認知症、若年禿頭などを伴う全身性の疾患である。変異アレルでは''DMPK''遺伝子の3’UTR領域に存在するCTGリピートが50から数1000の範囲で伸長している。表現促進現象が認められ、ほとんど無症状の母親患者が重症型の臨床症状を示す子供を出生することがある。先天型DM1は生下時の筋緊張低下と全身の著明な筋力低下が特徴で、しばしば呼吸不全を来たし早期に死亡する。
DM1の発症機構として、変異アレルから転写された伸長CUGリピートを有するRNAのtoxic gain of functionの機構が考えられている。患者筋では転写された伸長CUGリピートを有するRNAの多くは細胞質内へは移行せず核内にfociを形成してとどまる。伸長CUGリピートは、少なくとも2種類の選択的スプライシングの制御に関与するRNA結合タンパク(MBLNとCUG-BP1)のRNA結合能に影響を及ぼすことが知られている。MBLNとCUG-BP1いずれもCUGリピートに結合するが、DM1細胞においては、MBLNの機能が低下し、一方CUG-BP1の機能が亢進し、結果として特定の遺伝子の選択的スプライシングに変化をきたし、病態発症に導くというモデルが提唱されている。実際DM1患者組織においては、特定の遺伝子 (CLCN-1, IR, SERCA2, RYR1, APP, MAPTなど)の選択的スプライシングに異常が認められている。例えば、患者筋組織では塩化物イオンチャネルの1つCLCN-1チャネルの胎児型アイソフォームの発現の残存が認められるが、このアイソフォームは成人型チャネルと比較して分解を受けやすい不安定なチャネルに翻訳されるため、患者筋組織ではCLCN-1チャネルの発現が低下し、ミオトニアを発症させると考えられる。
DM1の発症機構として、変異アレルから転写された伸長CUGリピートを有するRNAのtoxic gain of functionの機構が考えられている。患者筋では転写された伸長CUGリピートを有するRNAの多くは細胞質内へは移行せず核内にfociを形成してとどまる。伸長CUGリピートは、少なくとも2種類の選択的スプライシングの制御に関与するRNA結合タンパク(MBLNとCUG-BP1)のRNA結合能に影響を及ぼすことが知られている。MBLNとCUG-BP1いずれもCUGリピートに結合するが、DM1細胞においては、MBLNの機能が低下し、一方CUG-BP1の機能が亢進し、結果として特定の遺伝子の選択的スプライシングに変化をきたし、病態発症に導くというモデルが提唱されている。実際DM1患者組織においては、特定の遺伝子 (CLCN-1, IR, SERCA2, RYR1, APP, MAPTなど)の選択的スプライシングに異常が認められている。例えば、患者筋組織では塩化物イオンチャネルの1つCLCN-1チャネルの胎児型アイソフォームの発現の残存が認められるが、このアイソフォームは成人型チャネルと比較して分解を受けやすい不安定なチャネルに翻訳されるため、患者筋組織ではCLCN-1チャネルの発現が低下し、ミオトニアを発症させると考えられる。


'''FXTAS (Fragile X-Associated Tremor Ataxia; 脆弱X関連振戦/運動失調症候群)'''
'''FXTAS (Fragile X-Associated Tremor Ataxia; 脆弱X関連振戦/運動失調症候群)'''


脆弱X症候群の類縁疾患で、FMR1遺伝子のCGGリピートが55-200回程度のpremutationを持つ男性で発症し,成人期(通常50才以上)発症,小脳失調,企図振戦、認知機能障害、末梢神経障害、自律神経障害などの症状を呈する。神経放射線学的に、脳質周囲白質と中小脳脚のT2強調MRI画像上での高信号領域が特徴的で、病理学的には中小脳脚の空胞変性・プルキンエ細胞の脱落に加えて、脳内ニューロン・アストロサイトでユビキチン陽性核内封入体が認められる。アジア人では本性の発症頻度は稀であるとされるが、最近本邦でも患者の存在が報告されている。
同程度のpremutation expansionを有する保因者の女性のうち、約20%ではpremature ovarian failure(早期卵巣機能不全症)を来たしたり、FXTASの症状の一部を発症することが報告されている。premutation expansionを有する患者の脳ではFMR1 mRNAの発現が亢進しており、一方FMR1 CGGリピートを含むRNAをショウジョウバエ複眼に過剰発現させると光受容体が変性し、核内封入体形成も認められることからFXTASの発症にはRNA機能獲得の機構が関与しているものと考えられる。FXTAS患者神経細胞ではCGGリピートを含むRNAが核内封入体でfociを形成し、hnRNP-A2, MBNL, Sam68などの RNA結合タンパクも取り込まれて(sequestration)いる。これらのことから、FXTAS患者神経細胞でもDM1と同じく特定の遺伝子の選択的スプライシングのパターンが変化し、病態発症に導くのではないかとの考えが提唱されている。
脆弱X症候群の類縁疾患で、''FMR1''遺伝子のCGGリピートが55-200回程度のpremutationを持つ男性で発症し,成人期(通常50才以上)発症,小脳失調,企図振戦、認知機能障害、末梢神経障害、自律神経障害などの症状を呈する。神経放射線学的に、脳質周囲白質と中小脳脚のT2強調MRI画像上での高信号領域が特徴的で、病理学的には中小脳脚の空胞変性・プルキンエ細胞の脱落に加えて、脳内ニューロン・アストロサイトでユビキチン陽性核内封入体が認められる。アジア人では本性の発症頻度は稀であるとされるが、最近本邦でも患者の存在が報告されている。
同程度のpremutation expansionを有する保因者の女性のうち、約20%ではpremature ovarian failure(早期卵巣機能不全症)を来たしたり、FXTASの症状の一部を発症することが報告されている。premutation expansionを有する患者の脳ではFMR1 mRNAの発現が亢進しており、一方FMR1 CGGリピートを含むRNAをショウジョウバエ複眼に過剰発現させると光受容体が変性し、核内封入体形成も認められることからFXTASの発症にはRNA機能獲得の機構が関与しているものと考えられる。FXTAS患者神経細胞ではCGGリピートを含むRNAが核内封入体でfociを形成し、hnRNP-A2, MBNL, Sam68などの RNA結合タンパクも取り込まれて(sequestration)いる。これらのことから、FXTAS患者神経細胞でもDM1と同じく特定の遺伝子の選択的スプライシングのパターンが変化し、病態発症に導くのではないかとの考えが提唱されている。


   
   
100行目: 98行目:
'''SCA12'''
'''SCA12'''


PPP2R2B遺伝子の5’領域に存在するCAGリピートの伸長による常染色体優性遺伝性疾患。PPP2R2Bは脳特異的に発現し、PP2A フォスファターゼをコードする。CAGリピートの伸長がどのようなメカニズムで病態発症につながるのかは不明である。
''PPP2R2B''遺伝子の5’領域に存在するCAGリピートの伸長による常染色体優性遺伝性疾患。''PPP2R2B''は脳特異的に発現し、PP2A フォスファターゼをコードする。CAGリピートの伸長がどのようなメカニズムで病態発症につながるのかは不明である。




38

回編集