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英語名:Ca<sup>2+</sup>-dependent activator protein for secretion (CAPS) | 英語名:Ca<sup>2+</sup>-dependent activator protein for secretion (CAPS) | ||
有芯小胞の輸送・分泌に関与する145kDaの水溶性タンパク質。神経系、および内分泌系の細胞に発現が見られる。自閉症や糖尿病などとの関連が示唆されている。 | |||
==ファミリー== | ==ファミリー== | ||
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脊椎動物においてはCAPS1、CAPS2の2つのファミリーメンバーが存在する(Official gene symbolはそれぞれCadps, Cadps2)が、[[wikipedia:ja:線虫|線虫]]や[[wikipedia:ja:ショウジョウバエ|ショウジョウバエ]]においては[[wikipedia:ja:遺伝子重複#.E3.83.91.E3.83.A9.E3.83.AD.E3.82.B0.E3.81.A8.E3.82.AA.E3.83.BC.E3.82.BD.E3.83.AD.E3.82.B0|パラログ]]は存在せず、一遺伝子のみである。 | 脊椎動物においてはCAPS1、CAPS2の2つのファミリーメンバーが存在する(Official gene symbolはそれぞれCadps, Cadps2)が、[[wikipedia:ja:線虫|線虫]]や[[wikipedia:ja:ショウジョウバエ|ショウジョウバエ]]においては[[wikipedia:ja:遺伝子重複#.E3.83.91.E3.83.A9.E3.83.AD.E3.82.B0.E3.81.A8.E3.82.AA.E3.83.BC.E3.82.BD.E3.83.AD.E3.82.B0|パラログ]]は存在せず、一遺伝子のみである。 | ||
== | == 機能 == | ||
1992年、145kDのタンパク質がCa<sup>2+</sup>依存的な[[有芯小胞]](DCV)の分泌に重要であることが報告された<ref><pubmed>1516133</pubmed></ref>。後にCAPS1 [[wikipedia:ja:cDNA|cDNA]]cDNAが[[wikipedia:ja:クローニング|クローニング]]クローニングされ、線虫UNC-31の脊椎動物ホモログであることが明らかになった<ref><pubmed>9289490</pubmed></ref>。さらにCAPS1の[[wikipedia:Pleckstrin homology domain|PHドメイン]]は[[wikipedia:ja:ホスファチジルセリン|ホスファチジルセリン]]、[[ホスファチジルイノシトール|ホスファチジルイノシトール4,5-二リン酸]]を介して [[wikipedia:ja:ショウ細胞膜ョウバエ|細胞膜]]に結合すること、C末の135アミノ酸が有芯小胞に結合することなどが分かってきた<ref><pubmed>11927595</pubmed></ref>。2004年には、CAPS1の働きとして、有芯小胞のプライミングステップに関与すると報告された<ref><pubmed>15312653</pubmed></ref>。これがCAPS1の働きとしての最初の主張である。しかし、後のCAPS1 KOマウスを用いた報告では、CAPS1がプライミングステップに重要であるという結論を否定し、有芯小胞への[[カテコールアミン]]のローディングステップに働いているという主張がされた<ref><pubmed>15820695</pubmed></ref>。その後、同グループはCAPS1とCAPS2はシナプス小胞のプライミングステップに関与すると大幅に主張を変えている<ref><pubmed>18022372</pubmed></ref>。また、CAPS1は[[ゴルジ体|ゴルジ]]膜における有芯小胞の生合成に関与するという報告もあり<ref><pubmed>20921225</pubmed></ref>、CAPSタンパク質の働きとしては、有芯小胞の分泌に関与することは明らかなものの、どのステップに関与しているのかについては未だ統一的な見解がない。 | 1992年、145kDのタンパク質がCa<sup>2+</sup>依存的な[[有芯小胞]](DCV)の分泌に重要であることが報告された<ref><pubmed>1516133</pubmed></ref>。後にCAPS1 [[wikipedia:ja:cDNA|cDNA]]cDNAが[[wikipedia:ja:クローニング|クローニング]]クローニングされ、線虫UNC-31の脊椎動物ホモログであることが明らかになった<ref><pubmed>9289490</pubmed></ref>。さらにCAPS1の[[wikipedia:Pleckstrin homology domain|PHドメイン]]は[[wikipedia:ja:ホスファチジルセリン|ホスファチジルセリン]]、[[ホスファチジルイノシトール|ホスファチジルイノシトール4,5-二リン酸]]を介して [[wikipedia:ja:ショウ細胞膜ョウバエ|細胞膜]]に結合すること、C末の135アミノ酸が有芯小胞に結合することなどが分かってきた<ref><pubmed>11927595</pubmed></ref>。2004年には、CAPS1の働きとして、有芯小胞のプライミングステップに関与すると報告された<ref><pubmed>15312653</pubmed></ref>。これがCAPS1の働きとしての最初の主張である。しかし、後のCAPS1 KOマウスを用いた報告では、CAPS1がプライミングステップに重要であるという結論を否定し、有芯小胞への[[カテコールアミン]]のローディングステップに働いているという主張がされた<ref><pubmed>15820695</pubmed></ref>。その後、同グループはCAPS1とCAPS2はシナプス小胞のプライミングステップに関与すると大幅に主張を変えている<ref><pubmed>18022372</pubmed></ref>。また、CAPS1は[[ゴルジ体|ゴルジ]]膜における有芯小胞の生合成に関与するという報告もあり<ref><pubmed>20921225</pubmed></ref>、CAPSタンパク質の働きとしては、有芯小胞の分泌に関与することは明らかなものの、どのステップに関与しているのかについては未だ統一的な見解がない。 | ||
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== 構造 == | == 構造 == | ||
CAPS1、CAPS2ともに、[[wikipedia:C2_domain|C2ドメイン]]、PHドメインを有し、C末の135アミノ酸で有芯小胞に結合する。C末側はシナプス小胞のプライミングステップに関与するタンパク質であるMunc13と低い相同性がある(図1)。[[Image:CAPS図1.jpg|thumb|center|300px|'''図1''']] | CAPS1、CAPS2ともに、[[wikipedia:C2_domain|C2ドメイン]]、PHドメインを有し、C末の135アミノ酸で有芯小胞に結合する。C末側はシナプス小胞のプライミングステップに関与するタンパク質であるMunc13と低い相同性がある(図1)。[[Image:CAPS図1.jpg|thumb|center|300px|'''図1.CAPSタンパク質の構造''']] | ||
== 分布 == | == 分布 == | ||
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CAPS2 KOマウスは、[[社会性行動]]の異常、[[養育行動の神経回路|母性行動]]の異常、[[多動]]、新奇環境への適応力の低下、小脳VI, VII葉の低形成、[[プルキンエ細胞]]の減少といった自閉症様の形質を示すことが明らかになった。また、ヒト自閉症患者の血中におけるCAPS2の発現を解析したところ、自閉症患者特異的にCAPS2のexon3のスキップが亢進していることが分かった。このexon 3-skipped CAPS2は、[[軸索輸送]]タンパク質であるp150Gluedに結合できず、プレシナプス部に輸送されないことなどが明らかになった。これらの結果から、自閉症患者の脳内では、exon 3-skipped CAPS2の発現によってBDNFの局所的分泌が異常になり、これが神経ネットワークの形成異常につながる可能性が示唆された(図2)<ref><pubmed>17380209</pubmed></ref><ref><pubmed>17344385</pubmed></ref>。 | CAPS2 KOマウスは、[[社会性行動]]の異常、[[養育行動の神経回路|母性行動]]の異常、[[多動]]、新奇環境への適応力の低下、小脳VI, VII葉の低形成、[[プルキンエ細胞]]の減少といった自閉症様の形質を示すことが明らかになった。また、ヒト自閉症患者の血中におけるCAPS2の発現を解析したところ、自閉症患者特異的にCAPS2のexon3のスキップが亢進していることが分かった。このexon 3-skipped CAPS2は、[[軸索輸送]]タンパク質であるp150Gluedに結合できず、プレシナプス部に輸送されないことなどが明らかになった。これらの結果から、自閉症患者の脳内では、exon 3-skipped CAPS2の発現によってBDNFの局所的分泌が異常になり、これが神経ネットワークの形成異常につながる可能性が示唆された(図2)<ref><pubmed>17380209</pubmed></ref><ref><pubmed>17344385</pubmed></ref>。 | ||
[[Image:CAPS図2.jpg|thumb|center|300px|'''図2''']] | [[Image:CAPS図2.jpg|thumb|center|300px|'''図2.CAPS2による細胞局所からのBDNF分泌とエクソン3欠損型の分泌障害モデル''']] | ||
== 参考文献 == | == 参考文献 == |