「Parkin」の版間の差分

7 バイト追加 、 2020年11月5日 (木)
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 細胞での機能として、PINK1と協働してマイトファジーに関与することが、培養細胞でキャラクタライズされている。
 細胞での機能として、PINK1と協働してマイトファジーに関与することが、培養細胞でキャラクタライズされている。


 ミトコンドリア局在性キナーゼPINK1は、ミトコンドリア膜電位依存的に健常なミトコンドリアの内膜まで輸送され、ミトコンドリア内プロテアーゼMPP(mitochondrial processing peptidase) <ref name=Greene2012><pubmed>22354088</pubmed></ref> とPARL <ref name=Zhou2008><pubmed>18687899</pubmed></ref><ref name=Jin2010><pubmed>21115803</pubmed></ref> によって2段階の切断を受け、その後、細胞質にてユビキチン-プロテアソーム経路で分解されると考えられている<ref name=Yamano2013><pubmed>24121706</pubmed></ref> 。ミトコンドリア膜電位が低下すると、膜電位依存的な輸送効率が低下し、ミトコンドリア外膜に蓄積、自己会合および自己リン酸化により、キナーゼが活性化する<ref name=Okatsu2015><pubmed>25609704</pubmed></ref><ref name=Okatsu2012><pubmed>22910362</pubmed></ref><ref name=Okatsu2013><pubmed>24189060</pubmed></ref> (図5)。以上から、PINK1は膜電位が低下した(機能低下した)ミトコンドリアを検出するセンサーとして働くと考えられる。
 ミトコンドリア局在性キナーゼPINK1は、ミトコンドリア膜電位依存的に健常なミトコンドリアの内膜まで輸送され、ミトコンドリア内プロテアーゼMPP(mitochondrial processing peptidase) <ref name=Greene2012><pubmed>22354088</pubmed></ref> とPARL <ref name=Zhou2008><pubmed>18687899</pubmed></ref><ref name=Jin2010><pubmed>21115803</pubmed></ref> によって2段階の切断を受け、その後、細胞質にてユビキチン-プロテアソーム経路で分解されると考えられている<ref name=Yamano2013><pubmed>24121706</pubmed></ref> 。ミトコンドリア膜電位が低下すると、膜電位依存的な輸送効率が低下し、ミトコンドリア外膜に蓄積、自己会合および自己リン酸化により、キナーゼが活性化する<ref name=Okatsu2015><pubmed>25609704</pubmed></ref><ref name=Okatsu2012><pubmed>22910362</pubmed></ref><ref name=Okatsu2013><pubmed>24189060</pubmed></ref> ('''図5''')。以上から、PINK1は膜電位が低下した(機能低下した)ミトコンドリアを検出するセンサーとして働くと考えられる。


 活性化したPINK1は、近傍のポリユビキチン化修飾を受けたタンパク質(主にミトコンドリア外膜のタンパク質)をリン酸化する(リン酸化ポリユビキチン鎖の種の形成)。Parkinはリン酸化ポリユビキチンへの親和性が高く、細胞質からミトコンドリア上のリン酸化ポリユビキチンへ繋留され活性化する。活性化されたParkinは、近傍のミトコンドリアタンパク質をユビキチン化する。さらに、PINK1がParkinによるポリユビキチン鎖をリン酸化し、新たなリン酸化ポリユビキチン鎖をミトコンドリア外膜上に形成する(リン酸化ポリユビキチン鎖の増幅)。増幅されたリン酸化ポリユビキチン鎖に、細胞質に残っている不活性型Parkinが繋留され活性化し、PINK1と協働して、さらにリン酸化ポリユビキチン鎖を形成する(リン酸化ポリユビキチン鎖の再増幅)。PINK1とParkinの役割は、上述のようなフィードフォワードループを形成して、不良ミトコンドリアをリン酸化ポリユビキチン鎖にて速やかにマーキングすることだと考えられる(図4)<ref name=Ordureau2014><pubmed>25284222</pubmed></ref><ref name=Shiba-Fukushima2014b><pubmed>25474007</pubmed></ref> 。
 活性化したPINK1は、近傍のポリユビキチン化修飾を受けたタンパク質(主にミトコンドリア外膜のタンパク質)をリン酸化する(リン酸化ポリユビキチン鎖の種の形成)。Parkinはリン酸化ポリユビキチンへの親和性が高く、細胞質からミトコンドリア上のリン酸化ポリユビキチンへ繋留され活性化する。活性化されたParkinは、近傍のミトコンドリアタンパク質をユビキチン化する。さらに、PINK1がParkinによるポリユビキチン鎖をリン酸化し、新たなリン酸化ポリユビキチン鎖をミトコンドリア外膜上に形成する(リン酸化ポリユビキチン鎖の増幅)。増幅されたリン酸化ポリユビキチン鎖に、細胞質に残っている不活性型Parkinが繋留され活性化し、PINK1と協働して、さらにリン酸化ポリユビキチン鎖を形成する(リン酸化ポリユビキチン鎖の再増幅)。PINK1とParkinの役割は、上述のようなフィードフォワードループを形成して、不良ミトコンドリアをリン酸化ポリユビキチン鎖にて速やかにマーキングすることだと考えられる(図4)<ref name=Ordureau2014><pubmed>25284222</pubmed></ref><ref name=Shiba-Fukushima2014b><pubmed>25474007</pubmed></ref> 。
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 生理的なミトコンドリア排除へのParkinの関与も報告されている。寒冷暴露に応じて発達するベージュ脂肪細胞は、熱産生のためにミトコンドリアが豊富である。しかし寒冷ストレスがなくなると、脂肪滴貯蔵のためミトコンドリアが少ない白色脂肪細胞へと変化する。ベージュ脂肪細胞の白色脂肪細胞化の際に不要となったミトコンドリアがParkinによって除去される<ref name=Lu2018><pubmed>29692364</pubmed></ref> 。
 生理的なミトコンドリア排除へのParkinの関与も報告されている。寒冷暴露に応じて発達するベージュ脂肪細胞は、熱産生のためにミトコンドリアが豊富である。しかし寒冷ストレスがなくなると、脂肪滴貯蔵のためミトコンドリアが少ない白色脂肪細胞へと変化する。ベージュ脂肪細胞の白色脂肪細胞化の際に不要となったミトコンドリアがParkinによって除去される<ref name=Lu2018><pubmed>29692364</pubmed></ref> 。
[[ファイル:Imai Parkin Fig6.jpg|サムネイル|'''図6. Pink1XXXXXX'''<br>XXXXXX。]]
[[ファイル:Imai Parkin Fig6.jpg|サムネイル|'''図6. Pink1XXXXXX'''<br>XXXXXX。]]
===ミトコンドリア輸送制御===
===ミトコンドリア輸送制御===
 ミトコンドリア外膜Rho-GTPase, Miro (哺乳類ではMiro 1とMiro 2がある)は、キネシンタンパク質KIF5と協働して、微小管を介したミトコンドリアの順行輸送に関与する<ref name=Wang2011><pubmed>22078885</pubmed></ref><ref name=Liu2012><pubmed>22396657</pubmed></ref> 。神経細胞においては、神経軸索、前シナプスへのミトコンドリア供給機構として重要である。MiroがPINK1-Parkinによりユビキチン化、プロテアソーム経路での分解を受けることにより、ミトコンドリア輸送が停止する<ref name=Wang2011><pubmed>22078885</pubmed></ref><ref name=Liu2012><pubmed>22396657</pubmed></ref> 。その生理的意義として、不良ミトコンドリアを神経終末へ輸送しないミトコンドリア品質管理と考えられる('''図6''')。
 ミトコンドリア外膜Rho-GTPase, Miro (哺乳類ではMiro 1とMiro 2がある)は、キネシンタンパク質KIF5と協働して、微小管を介したミトコンドリアの順行輸送に関与する<ref name=Wang2011><pubmed>22078885</pubmed></ref><ref name=Liu2012><pubmed>22396657</pubmed></ref> 。神経細胞においては、神経軸索、前シナプスへのミトコンドリア供給機構として重要である。MiroがPINK1-Parkinによりユビキチン化、プロテアソーム経路での分解を受けることにより、ミトコンドリア輸送が停止する<ref name=Wang2011><pubmed>22078885</pubmed></ref><ref name=Liu2012><pubmed>22396657</pubmed></ref> 。その生理的意義として、不良ミトコンドリアを神経終末へ輸送しないミトコンドリア品質管理と考えられる('''図6''')。