「Αシヌクレイン」の版間の差分

52行目: 52行目:


=== 家族性パーキンソン病の原因遺伝子として ===
=== 家族性パーキンソン病の原因遺伝子として ===
1997年イタリア起源の優性遺伝形式をとる家族性パーキンソン病の家系で最初のαシヌクレイン遺伝子の点変異(A53T)家系が報告され<ref name=Polymeropoulos1997><pubmed>9197268</pubmed></ref> 、次いでドイツから異なる変異(A30P)を有する第二の家系が見つかりPARK1と命名された<ref name=Kruger1998><pubmed>9462735</pubmed></ref> 。前者は比較的若年発症、後者は中年発症という差があるものの、両者ともレボドパ反応性のパーキンソニズムを呈し神経病理学的にも孤発性パーキンソン病類似の所見を認めたため、αシヌクレインは孤発性パーキンソン病の病態解明に結びつくkey moleculeとして衆目を集めることとなった。これまでに家族性パーキンソン病を来すSNCAミスセンス変異として、E46K、H50Q、G51D、A53Eを加えた6種類が報告されている<ref name=Zarranz2004><pubmed>14755719</pubmed></ref><ref name=Kiely2013><pubmed>23404372</pubmed></ref><ref name=Appel-Cresswell2013><pubmed>23457019</pubmed></ref><ref name=Pasanen2014><pubmed>24746362</pubmed></ref> 。さらに、これらの点変異に加えαシヌクレイン遺伝子の重複でも家族性パーキンソン病が発症することが明らかになっている。この家系は、第4染色体長腕にマッピングされるもののPARK1変異が証明されないため当初別の遺伝子座(PARK4)として分類されていたが、後にαシヌクレイン遺伝子が三重重複していることが判明した<ref name=Singleton2003><pubmed>14593171</pubmed></ref> 。臨床的には認知症を呈し、病理学的にもLewy小体が黒質や青斑よりもマイネルト基底核や海馬、側頭葉に目立つ特徴があった。その後さらに二重重複家系も報告されたが、こちらは認知機能は保たれ中年発症のパーキンソニズムを示していた<ref name=Chartier-Harlin2004><pubmed>15451224</pubmed></ref> 。これらの家系は正常型αシヌクレインの遺伝子量がそのままパーキンソン病からレビー小体型認知症までの臨床像を連続的に説明し得ることを示唆しており興味深い。
 1997年イタリア起源の優性遺伝形式をとる家族性パーキンソン病の家系で最初のαシヌクレイン遺伝子の点変異(A53T)家系が報告され<ref name=Polymeropoulos1997><pubmed>9197268</pubmed></ref> 、次いでドイツから異なる変異(A30P)を有する第二の家系が見つかりPARK1と命名された<ref name=Kruger1998><pubmed>9462735</pubmed></ref> 。前者は比較的若年発症、後者は中年発症という差があるものの、両者ともレボドパ反応性のパーキンソニズムを呈し神経病理学的にも孤発性パーキンソン病類似の所見を認めたため、αシヌクレインは孤発性パーキンソン病の病態解明に結びつくkey moleculeとして衆目を集めることとなった。
 
 これまでに家族性パーキンソン病を来すSNCAミスセンス変異として、E46K、H50Q、G51D、A53Eを加えた6種類が報告されている<ref name=Zarranz2004><pubmed>14755719</pubmed></ref><ref name=Kiely2013><pubmed>23404372</pubmed></ref><ref name=Appel-Cresswell2013><pubmed>23457019</pubmed></ref><ref name=Pasanen2014><pubmed>24746362</pubmed></ref> 。さらに、これらの点変異に加えαシヌクレイン遺伝子の重複でも家族性パーキンソン病が発症することが明らかになっている。この家系は、第4染色体長腕にマッピングされるもののPARK1変異が証明されないため当初別の遺伝子座(PARK4)として分類されていたが、後にαシヌクレイン遺伝子が三重重複していることが判明した<ref name=Singleton2003><pubmed>14593171</pubmed></ref> 。臨床的には認知症を呈し、病理学的にもLewy小体が黒質や青斑核よりもマイネルト基底核や海馬、側頭葉に目立つ特徴があった。その後さらに二重重複家系も報告されたが、こちらは認知機能は保たれ中年発症のパーキンソニズムを示していた<ref name=Chartier-Harlin2004><pubmed>15451224</pubmed></ref> 。これらの家系は正常型αシヌクレインの遺伝子量がそのままパーキンソン病からレビー小体型認知症までの臨床像を連続的に説明し得ることを示唆しており興味深い。


=== Lewy小体・グリア細胞内封入体の構成成分として ===
=== Lewy小体・グリア細胞内封入体の構成成分として ===