「TAR DNA-binding protein of 43 kDa」の版間の差分

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 またTDP-43遺伝子欠損マウスの解析より胎生致死となることが報告され、哺乳類においてTDP-43は必須であることが判明した<ref name=Wu2010><pubmed>20014337</pubmed></ref><ref name=Sephton2010><pubmed>20040602</pubmed></ref><ref name=Kraemer2010><pubmed>20198480</pubmed></ref> (11-13)。さらにTDP-43は自分自身でその発現量を厳密にコントロールしていることも明らかとなった。すなわちTDP-43が自身のmRNAの3'UTRに結合し,近傍の選択的スプライシングやpolyA付加を変化させることにより,自身の発現を制御していることが報告された<ref name=Polymenidou2011><pubmed>21358643</pubmed></ref><ref name=Ayala2011><pubmed>21131904</pubmed></ref><ref name=Avendanño-Vázquez2012><pubmed>22855830</pubmed></ref> (14-16)。この制御機構の破綻とALSやFTLDの発症との関連性が注目されている。
 またTDP-43遺伝子欠損マウスの解析より胎生致死となることが報告され、哺乳類においてTDP-43は必須であることが判明した<ref name=Wu2010><pubmed>20014337</pubmed></ref><ref name=Sephton2010><pubmed>20040602</pubmed></ref><ref name=Kraemer2010><pubmed>20198480</pubmed></ref> (11-13)。さらにTDP-43は自分自身でその発現量を厳密にコントロールしていることも明らかとなった。すなわちTDP-43が自身のmRNAの3'UTRに結合し,近傍の選択的スプライシングやpolyA付加を変化させることにより,自身の発現を制御していることが報告された<ref name=Polymenidou2011><pubmed>21358643</pubmed></ref><ref name=Ayala2011><pubmed>21131904</pubmed></ref><ref name=Avendanño-Vázquez2012><pubmed>22855830</pubmed></ref> (14-16)。この制御機構の破綻とALSやFTLDの発症との関連性が注目されている。


[[ファイル:Yokota semantic dementia Fig4.jpg|サムネイル|400px|'''図2. TDP-43蓄積の代表的な病理サブタイプ'''<br>'''A.''' Type A病理。<br>'''B.''' Type B病理。<br>'''C.''' Type C病理。<br>いずれもリン酸化TDP-43免疫染色(pS409/410-2)で、スケールバーは30 μm。横田 修、小森憲治郎ら[[意味性認知症]]の項目より。]]
== 発現 ==
== 発現 ==
 TDP-43はほとんどすべての細胞に発現する核タンパク質であり、核内にびまん性に局在している。患者脳ではこの正常の局在が失われ、核内の一部や細胞質、神経突起などに異常な翻訳後修飾(リン酸化、ユビキチン化および断片化など)を受けた TDP-43が凝集体を形成し、それぞれ核内封入体 (neuronal intranuclear inclusion: NII)、細胞内封入体 (neuronal cytoplasmic inclusion: NCI)、変性神経突起 (dystrophic neurite: DN)と呼ばれる。さらに神経細胞のみならずオリゴデンドロサイトの細胞質内にも凝集体を形成する。これらはグリア細胞質内封入体 (glial cytoplasmic inclusion: GCI) と呼ばれ、その出現部位は多様である。
 TDP-43はほとんどすべての細胞に発現する[[核タンパク質]]であり、[[核]]内にびまん性に局在している。患者脳ではこの正常の局在が失われ、核内の一部や[[細胞質]]、[[神経突起]]などに異常な[[翻訳後修飾]]([[リン酸化]]、[[ユビキチン]]化および断片化など)を受けた TDP-43が凝集体を形成し、それぞれ[[核内封入体]] (neuronal intranuclear inclusion: NII)、[[細胞内封入体]] (neuronal cytoplasmic inclusion: NCI)、[[変性神経突起]] (dystrophic neurite: DN)と呼ばれる。さらに神経細胞のみならず[[オリゴデンドロサイト]]の細胞質内にも凝集体を形成する。これらは[[グリア細胞質内封入体]] (glial cytoplasmic inclusion: GCI) と呼ばれ、その出現部位は多様である。


 これらのTDP-43陽性構造物は無作為に出現するのではなく、患者ごとにある程度の出現パターンが存在し、細胞内封入体と短い変性神経突起が主に皮質第 II 層に混在して蓄積するタイプA、細胞内封入体が皮質全層に認められるタイプB、長い変性神経突起が皮質第 II 層に蓄積するタイプC、短い変性神経突起と核内封入体が全層に蓄積するタイプDの4型に主に分類される<ref name=Irwin2015><pubmed>25549971</pubmed></ref> (17)。これらの病理型は、不溶化TDP-43が呈する生化学的特徴とも相関しており、患者脳から抽出した界面活性剤不溶性画分のウェスタンブロット解析において、TDP-43のC末端断片のパターンは病理学的サブタイプごとに異なっている<ref name=Hasegawa2008><pubmed>18546284</pubmed></ref>
 これらのTDP-43陽性構造物は無作為に出現するのではなく、患者ごとにある程度の出現パターンが存在し、細胞内封入体と短い変性神経突起が主に皮質第2層に混在して蓄積するタイプA、細胞内封入体が皮質全層に認められるタイプB、長い変性神経突起が皮質第2層に蓄積するタイプC、短い変性神経突起と核内封入体が全層に蓄積するタイプDの4型に主に分類される('''図2''')<ref name=Irwin2015><pubmed>25549971</pubmed></ref>。これらの病理型は、不溶化TDP-43が呈する生化学的特徴とも相関しており、患者脳から抽出した[[界面活性剤]]不溶性画分の[[ウェスタンブロット]]解析において、TDP-43のC末端断片のパターンは病理学的サブタイプごとに異なっている<ref name=Hasegawa2008><pubmed>18546284</pubmed></ref>
(18)。
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|+表. TDP-43陽性構造物の蓄積パタンによる病理学的サブタイプ分類
|+表. TDP-43陽性構造物の蓄積パタンによる病理学的サブタイプ分類
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! タイプ !! 組織学的初見
! タイプ !! 組織学的初見
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|タイプA || 細胞内封入体と短い変性神経突起が主に皮質第 II 層に混在して蓄積
|タイプA || 細胞内封入体と短い変性神経突起が主に皮質第2層に混在して蓄積
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|タイプB || 細胞内封入体が皮質全層に認められる
|タイプB || 細胞内封入体が皮質全層に認められる
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|タイプC || 長い変性神経突起が皮質第 II 層に蓄積
|タイプC || 長い変性神経突起が皮質第2層に蓄積
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|タイプD || 短い変性神経突起と核内封入体が全層に蓄積
|タイプD || 短い変性神経突起と核内封入体が全層に蓄積