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Takaonakata (トーク | 投稿記録) 細編集の要約なし |
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== '''概要''' == | == '''概要''' == | ||
赤血球を除くすべての真核生物の細胞内小器官の一つ。ゴルジによって発見された。脂質2重層の膜でかこまれた扁平な袋状の層板( | 赤血球を除くすべての真核生物の細胞内小器官の一つ。ゴルジによって発見された。脂質2重層の膜でかこまれた扁平な袋状の層板(cisternae)が数層とそれを取り巻く小胞(vesicles)からなる。分泌経路(secretory pathway)上の細胞内小器官で、腺細胞などで発達している。 | ||
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== ''' | == '''層板成熟説''' cisternae maturation hypothesis '''と小胞輸送説''' vesicular transport hypothesis == | ||
膜蛋白や分泌蛋白がゴルジ体内を移動しながら成熟していくことについて、古くからある論争に層板成熟説と小胞輸送説がある。成熟説とは、新しくつくられた蛋白が、層板間を移動せず、層板自体がシスに移動し、成熟するというもの。小胞輸送説は、層板は移動せず、新しく作られた蛋白が小胞に乗って層板間をシスからトランスへと移動するというものである。1970年代、正常なゴルジ体とトランス側の酵素を持たない変異ゴルジ体を試験管内で混ぜると、変異ゴルジ体で途中までしか糖鎖が付加していなかった膜蛋白に最後まで糖が付加されることが巧妙な実験でわかった。変異ゴルジ体内にあった膜蛋白が、正常なゴルジ体にしかない酵素の作用をうけるのだから、両者間で蛋白の移動があった強い証拠であり、小胞輸送説を支持する結果と考えられた。20世紀末、この系を使ってゴルジ体層板と小胞の融合に関わる蛋白(NSF, alpha-SNAP, t-SNARE, v-SNARE)が同定され, 小胞輸送説が支配的となった。細胞生物学の教科書もそれに倣った記述がなされた(例えばMolecular Biology of the Cell 3rd editionと4th editionを比較せよ)。ところが、1998年にコラーゲンの分泌を詳細に観察した実験から、コラーゲンはゴルジ体内ですでに大きな線維を形成し、とても小胞には収まりきらないにも拘わらず、粛々とシス側に移行することが分かり、層板成熟説が再び復活した<ref><pubmed> 9875853 </pubmed></ref> 。現在での一つの解釈は、新しく作られた蛋白は同じ層板に乗ったままで層板ごとトランス方向に移動する。一方、糖鎖を付加する酵素の方が小胞に乗って、トランス側の層板からシス側の層板に輸送されるというものである。つまり、層板間で蛋白の移動はあるが、移動するのは分泌蛋白ではなく、酵素のほうであった。人々は”蛋白の移動がある”ことがわかった時点で”移動する“のは当然、分泌蛋白のほうであると思いこんでしまったのである<ref><pubmed> 19948493 </pubmed></ref>。ゴルジ体の極めて基本的な(教科書的な)事項が21世紀になって逆転すること、しかし、小胞説を推進する研究は膜融合についてのSNARE仮説を導き、神経科学の分野(シナプス伝達)で花開いたこと、は示唆的である。 | 膜蛋白や分泌蛋白がゴルジ体内を移動しながら成熟していくことについて、古くからある論争に層板成熟説と小胞輸送説がある。成熟説とは、新しくつくられた蛋白が、層板間を移動せず、層板自体がシスに移動し、成熟するというもの。小胞輸送説は、層板は移動せず、新しく作られた蛋白が小胞に乗って層板間をシスからトランスへと移動するというものである。1970年代、正常なゴルジ体とトランス側の酵素を持たない変異ゴルジ体を試験管内で混ぜると、変異ゴルジ体で途中までしか糖鎖が付加していなかった膜蛋白に最後まで糖が付加されることが巧妙な実験でわかった。変異ゴルジ体内にあった膜蛋白が、正常なゴルジ体にしかない酵素の作用をうけるのだから、両者間で蛋白の移動があった強い証拠であり、小胞輸送説を支持する結果と考えられた。20世紀末、この系を使ってゴルジ体層板と小胞の融合に関わる蛋白(NSF, alpha-SNAP, t-SNARE, v-SNARE)が同定され, 小胞輸送説が支配的となった。細胞生物学の教科書もそれに倣った記述がなされた(例えばMolecular Biology of the Cell 3rd editionと4th editionを比較せよ)。ところが、1998年にコラーゲンの分泌を詳細に観察した実験から、コラーゲンはゴルジ体内ですでに大きな線維を形成し、とても小胞には収まりきらないにも拘わらず、粛々とシス側に移行することが分かり、層板成熟説が再び復活した<ref><pubmed> 9875853 </pubmed></ref> 。現在での一つの解釈は、新しく作られた蛋白は同じ層板に乗ったままで層板ごとトランス方向に移動する。一方、糖鎖を付加する酵素の方が小胞に乗って、トランス側の層板からシス側の層板に輸送されるというものである。つまり、層板間で蛋白の移動はあるが、移動するのは分泌蛋白ではなく、酵素のほうであった。人々は”蛋白の移動がある”ことがわかった時点で”移動する“のは当然、分泌蛋白のほうであると思いこんでしまったのである<ref><pubmed> 19948493 </pubmed></ref>。ゴルジ体の極めて基本的な(教科書的な)事項が21世紀になって逆転すること、しかし、小胞説を推進する研究は膜融合についてのSNARE仮説を導き、神経科学の分野(シナプス伝達)で花開いたこと、は示唆的である。 | ||
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GFPラベルした温度感受性ウィルス膜蛋白VSV-Gが培養海馬神経細胞内でERからゴルジ体へ移る過程。39℃ではVSV-Gは租面小胞体にあり、細胞体樹状突起全体に均一に分布する。その後温度を下げると、租面小胞体からゴルジ体への移動が起こる。まず、一様な分布をしていたVSV-Gが細胞の各部分で小さな輝く点となり、移動を始める。輝点は細胞体内で融合してゴルジ体に局在する。 | GFPラベルした温度感受性ウィルス膜蛋白VSV-Gが培養海馬神経細胞内でERからゴルジ体へ移る過程。39℃ではVSV-Gは租面小胞体にあり、細胞体樹状突起全体に均一に分布する。その後温度を下げると、租面小胞体からゴルジ体への移動が起こる。まず、一様な分布をしていたVSV-Gが細胞の各部分で小さな輝く点となり、移動を始める。輝点は細胞体内で融合してゴルジ体に局在する。 | ||
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<br>(執筆者:中田隆夫、担当編集委員:尾藤 晴彦) | |||
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