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Keisukesato (トーク | 投稿記録) 細編集の要約なし |
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<font size="+1">[http://researchmap.jp/nana 寺田 純雄]、[https://researchmap.jp/7000025364 川岸 将彦]</font><br> | <font size="+1">[http://researchmap.jp/nana 寺田 純雄]、[https://researchmap.jp/7000025364 川岸 将彦]</font><br> | ||
''東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 医歯学系専攻 認知行動医学講座 神経機能形態学''<br> | ''東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 医歯学系専攻 認知行動医学講座 神経機能形態学''<br> | ||
DOI:<selfdoi /> | DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2014年9月4日 原稿完成日:2021年6月15日<br> | ||
担当編集委員:[http://researchmap.jp/2rikenbsi 林 康紀](京都大学大学院医学研究科 システム神経薬理学分野)<br> | 担当編集委員:[http://researchmap.jp/2rikenbsi 林 康紀](京都大学大学院医学研究科 システム神経薬理学分野)<br> | ||
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羅:axon 英:axon 独:Axon 仏:axone | 羅:axon 英:axon 独:Axon 仏:axone | ||
{{box|text= 軸索とは、神経細胞の細胞体から伸びる突起を、形態的な特徴から2つに分類したうちの一つである (他方は樹状突起)。樹状突起は、基部で太いが末梢に行くに連れて細くなる形態なのに対し、軸索は、基部で細いが、そのまま末梢まで全長でほぼ同じ太さを保つ。神経細胞につき通常1本存在し、その神経細胞から伸びる最も長い突起である事が多い。電気的興奮を伝えるという機能を持ち、他の神経細胞や効果器への情報の出力を担う事が多い。}} | {{box|text= 軸索とは、神経細胞の細胞体から伸びる突起を、形態的な特徴から2つに分類したうちの一つである (他方は樹状突起)。樹状突起は、基部で太いが末梢に行くに連れて細くなる形態なのに対し、軸索は、基部で細いが、そのまま末梢まで全長でほぼ同じ太さを保つ。神経細胞につき通常1本存在し、その神経細胞から伸びる最も長い突起である事が多い。電気的興奮を伝えるという機能を持ち、他の神経細胞や効果器への情報の出力を担う事が多い。}} | ||
== 神経突起の分類 == | == 神経突起の分類 == | ||
神経細胞の形態上の特徴として、[[核]]のある細胞体から、一本 - 多数の長い神経突起が伸びる事が挙げられる。これらの突起は、形態や性質の点から、大きく二つに分類され、それぞれ、樹状突起と軸索と呼ばれる ('''表1''')。神経細胞は、方向性をもって電気的興奮をに伝えるという機能を持つが、樹状突起と軸索と言う形態上の分類は、この機能と密接に関わっていて、一般に、 | 神経細胞の形態上の特徴として、[[核]]のある細胞体から、一本 - 多数の長い神経突起が伸びる事が挙げられる。これらの突起は、形態や性質の点から、大きく二つに分類され、それぞれ、樹状突起と軸索と呼ばれる ('''表1''')。神経細胞は、方向性をもって電気的興奮をに伝えるという機能を持つが、樹状突起と軸索と言う形態上の分類は、この機能と密接に関わっていて、一般に、 | ||
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==特徴== | ==特徴== | ||
軸索には樹状突起と比較して、 主に形態的な面から、'''図'''と'''表1'''にまとめる様な特徴がある。 | 軸索には樹状突起と比較して、 主に形態的な面から、'''図'''と'''表1'''にまとめる様な特徴がある。 | ||
[[ファイル:軸索と樹状突起の形態的特徴R.png|500px|thumb|left|'''図. 軸索と樹状突起の形態的特徴'''<br>文献<ref>'''寺田純雄, 小林靖. (2009).'''<br> | |||
「神経解剖学の見方、考え方」 樹状突起と軸索(1) ''クリニカルニューロサイエンス'', 27(5), 476-477. </ref>より]] | |||
<table class="wikitable"> | <table class="wikitable"> | ||
<caption>表1. 軸索と樹状突起の比較</caption> | <caption>表1. 軸索と樹状突起の比較</caption> | ||
<tr> | <tr> | ||
<th> | <th>特徴</th><th>軸索</th><th>樹状突起</th> | ||
</tr> | </tr> | ||
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''詳細は、[[軸索伸長]]、[[成長円錐]]の項を参照。'' | ''詳細は、[[軸索伸長]]、[[成長円錐]]の項を参照。'' | ||
標的細胞、器官に到達した軸索は[[シナプス]] | 標的細胞、器官に到達した軸索は[[シナプス]]を形成して成熟する。しかし、それは必ずしも固定された物ではなく、一定の動的な再構築を起こし得るものである(個体の発生途上や、学習におけるリモデリング、又、損傷や機能不全からの再生など)。 | ||
''主に軸索損傷後の再生についての詳細は、[[軸索再生]]の項を参照。'' | ''主に軸索損傷後の再生についての詳細は、[[軸索再生]]の項を参照。'' | ||
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==髓鞘== | ==髓鞘== | ||
軸索初節よりも遠位側では、軸索によっては、[[シュワン細胞]] (末梢神経系)や[[オリゴデンドロサイト]] (中枢神経系)の突起が何重にも密に取り囲んで形成される髓鞘に包まれる。これらの軸索を[[ | 軸索初節よりも遠位側では、軸索によっては、[[シュワン細胞]] (末梢神経系)や[[オリゴデンドロサイト]] (中枢神経系)の突起が何重にも密に取り囲んで形成される髓鞘に包まれる。これらの軸索を[[有髓軸索(有髄線維)]]と呼び、髓鞘を持たない軸索を[[無髓軸索(無髄線維)]]と呼ぶ。ただし、末梢神経系では、有髓軸索も無髓軸索も共に、シュワン細胞の細胞体によって直接包み込まれるため、[[有鞘線維]]に分類される。一方、中枢神経系では、オリゴデンドロサイトの細胞体は、髓鞘により被覆する軸索からやや離れて存在するため、無鞘線維に分類される。 | ||
''髓鞘の構造や、それを形成する細胞については、[[髓鞘]]、[[オリゴデンドロサイト]]の項を参照。'' | ''髓鞘の構造や、それを形成する細胞については、[[髓鞘]]、[[オリゴデンドロサイト]]の項を参照。'' | ||
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! style="text-align:center" | 文字(Erlanger, Gasser)(速度から分類) | ! style="text-align:center" | 文字(Erlanger, Gasser)(速度から分類) | ||
! style="text-align:center" | 伝導速度(m/s) | ! style="text-align:center" | 伝導速度(m/s) | ||
! style="text-align:center" | | ! style="text-align:center" | 接続する効果器・受容器、''伝えられる感覚要素''等 | ||
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! rowspan="6" style="text-align:center" | 有髄神経 | ! rowspan="6" style="text-align:center" | 有髄神経 | ||
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| style="text-align:center" | [[α線維|α]] | | style="text-align:center" | [[α線維|α]] | ||
| style="text-align:center" | 70-120 | | style="text-align:center" | 70-120 | ||
| style="text-align:center" | | | style="text-align:center" | 筋紡錘[[錘外筋神経]] | ||
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| style="text-align:center" | [[II線維|II]] | | style="text-align:center" | [[II線維|II]] | ||
174行目: | 212行目: | ||
| style="text-align:center" | [[Aβ線維|Aβ]] | | style="text-align:center" | [[Aβ線維|Aβ]] | ||
| style="text-align:center" | 30-70 | | style="text-align:center" | 30-70 | ||
| style="text-align:center" | 筋紡錘[[二次感覚神経]]、[[識別的触圧覚]] | | style="text-align:center" | 筋紡錘[[二次感覚神経]]、''[[識別的触圧覚]]'' | ||
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186行目: | 224行目: | ||
| style="text-align:center" | [[Aδ線維|Aδ]] | | style="text-align:center" | [[Aδ線維|Aδ]] | ||
| style="text-align:center" | 5-30 | | style="text-align:center" | 5-30 | ||
| style="text-align:center" | [[温痛覚]]、[[ | | style="text-align:center" | ''[[温痛覚]]''、''[[臓性感覚]]'' | ||
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| style="text-align:center" | - | | style="text-align:center" | - | ||
199行目: | 237行目: | ||
| style="text-align:center" | [[C線維|C]] | | style="text-align:center" | [[C線維|C]] | ||
| style="text-align:center" | 0.5-2 | | style="text-align:center" | 0.5-2 | ||
| style="text-align:center" | [[原始的触圧覚]](IV)、自律神経[[節後線維]](C) | | style="text-align:center" | ''[[原始的触圧覚]]''(IV)、自律神経[[節後線維]](C) | ||
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