「ドリフト拡散モデル」の版間の差分

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 ドリフト拡散モデルのパラメータの推定値を利用して,選択に関するプロセスの個人差に影響する要因も検討されている。代表的な事例は加齢の効果について調べたものである。例えば高齢者は一般に多くの認知課題において反応が遅くなることが示されているが,ドリフト拡散モデルを適用して検討した研究では,高齢者の反応には長い非決定時間,そして境界の間隔が大きいという特徴はあるものの,ドリフト率には若年者との違いはないということが報告されている<ref><pubmed>19962693</pubmed></ref>。一方で,幼児では境界分離が大きく,非決定時間が長いことに加え,ドリフト率も比較的小さいことが示されている<ref><pubmed>22188547</pubmed></ref>。また,注意欠如・多動症 (ADHD) や読字障害 ( dyslexia) を有する若年者はそうでない統制群に比べ,ドリフト率が低い傾向があることを示した研究もある<ref><pubmed>20926067</pubmed></ref><ref><pubmed>22010894</pubmed></ref>。一般知能 (IQ) との関係に関しては,高IQ群は低IQ群よりドリフト率が2倍程度高いという結果が報告されている <ref><pubmed>19962693</pubmed></ref> <ref><pubmed>21707207</pubmed></ref> 。
 ドリフト拡散モデルのパラメータの推定値を利用して,選択に関するプロセスの個人差に影響する要因も検討されている。代表的な事例は加齢の効果について調べたものである。例えば高齢者は一般に多くの認知課題において反応が遅くなることが示されているが,ドリフト拡散モデルを適用して検討した研究では,高齢者の反応には長い非決定時間,そして境界の間隔が大きいという特徴はあるものの,ドリフト率には若年者との違いはないということが報告されている<ref><pubmed>19962693</pubmed></ref>。一方で,幼児では境界分離が大きく,非決定時間が長いことに加え,ドリフト率も比較的小さいことが示されている<ref><pubmed>22188547</pubmed></ref>。また,注意欠如・多動症 (ADHD) や読字障害 ( dyslexia) を有する若年者はそうでない統制群に比べ,ドリフト率が低い傾向があることを示した研究もある<ref><pubmed>20926067</pubmed></ref><ref><pubmed>22010894</pubmed></ref>。一般知能 (IQ) との関係に関しては,高IQ群は低IQ群よりドリフト率が2倍程度高いという結果が報告されている <ref><pubmed>19962693</pubmed></ref> <ref><pubmed>21707207</pubmed></ref> 。


==神経細胞の活動との対応==
==神経活動との対応==


 主にサルを対象とした単一細胞レベルでの神経活動記録により,エビデンスの蓄積過程に対応する神経活動が検討されてきた。例えば視線でターゲットを選択することで反応する意思決定課題においては,ターゲットの方向へのサッケード時に選択的に活動するLIP野 (lateral intraparietal cortex) の細胞は刺激の呈示とともに徐々に活動が増加し,ある閾値に到達したときにサッケード反応が起こるということが観測されている<ref><pubmed>8570606</pubmed></ref>,エビデンスの蓄積を表現する逐次サンプリングモデルで様子が観察されている。
 主にサルを対象とした単一細胞レベルでの神経活動記録により,エビデンスの蓄積過程に対応する神経活動が検討されてきた。例えば視線でターゲットを選択することで反応する意思決定課題においては,ターゲットの方向へのサッケード時に選択的に活動するLIP野 (lateral intraparietal cortex) の細胞は刺激の呈示とともに徐々に活動が増加し,ある閾値に到達したときにサッケード反応が起こるということが観測されており,その振る舞いはエビデンスの蓄積を表現する逐次サンプリングモデルと対応付けられるという議論がある<ref><pubmed>8570606</pubmed></ref>


==その他の逐次サンプリングモデル==
==その他の逐次サンプリングモデル==
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