「傍腫瘍性神経症候群」の版間の差分

 
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 担癌患者の頻度を考慮すると、傍腫瘍性神経症候群の発症は極めてまれといわざるを得ない。傍腫瘍性神経症候群発症の有無で、腫瘍の組織学的特徴に差はないとされる。また、Hu抗体陽性肺小細胞癌患者の腫瘍に発現するHuタンパク質のDNAにも変異は見られていない。傍腫瘍性神経症候群発症の要因として、腫瘍組織内では、[[wj:抗原提示細胞|抗原提示細胞]]である[[wj:樹状細胞|樹状細胞]]がアポトーシスに陥った腫瘍細胞を取り込んで、class I 上にonconeural proteinを提示する可能性が考えられ、感作された傍腫瘍性神経症候群抗原特異的なT 細胞がclass Iを発現する神経組織を傷害する可能性もある。  
 担癌患者の頻度を考慮すると、傍腫瘍性神経症候群の発症は極めてまれといわざるを得ない。傍腫瘍性神経症候群発症の有無で、腫瘍の組織学的特徴に差はないとされる。また、Hu抗体陽性肺小細胞癌患者の腫瘍に発現するHuタンパク質のDNAにも変異は見られていない。傍腫瘍性神経症候群発症の要因として、腫瘍組織内では、[[wj:抗原提示細胞|抗原提示細胞]]である[[wj:樹状細胞|樹状細胞]]がアポトーシスに陥った腫瘍細胞を取り込んで、class I 上にonconeural proteinを提示する可能性が考えられ、感作された傍腫瘍性神経症候群抗原特異的なT 細胞がclass Iを発現する神経組織を傷害する可能性もある。  


 筆者らは、傍腫瘍性神経症候群が多くの担癌患者のごく一部にしか生じない理由の一つの可能性として、患者側の要因を検討した。自己免疫疾患の発症要因としては、[[wj:|免疫自己寛容]]の破綻が生じていると考えられる。末梢血中[[wj:制御性T細胞|制御性T細胞]](regulatory T cell: Treg)は末梢性免疫寛容に重要な働きをしていることから、傍腫瘍性神経症候群における免疫動態の評価のため、Treg分画の機能遺伝子の発現を定量した。傍腫瘍性神経症候群,神経症状のない癌患者および健常者の末梢血リンパ球からTreg分画を分取し、[[wj:リアルタイムRT-PCR|リアルタイムRT-PCR]]法で[[w:FOXP3|FOXP3]]を代表とするTregの機能遺伝子の[[wj:mRNA|mRNA]]の発現を定量した。傍腫瘍性神経症候群患者末梢血では、免疫制御に関わるTregの複数の機能遺伝子に発現低下がみられた。Tregの機能低下は,免疫寛容の破綻を引き起こし、自己免疫機序による組織傷害を生じうるため、傍腫瘍性神経症候群の宿主要因になりうると考えられた<ref name=ref28><pubmed>18455243</pubmed></ref>。  
 筆者らは、傍腫瘍性神経症候群が多くの担癌患者のごく一部にしか生じない理由の一つの可能性として、患者側の要因を検討した。自己免疫疾患の発症要因としては、[[wj:|免疫自己寛容]]の破綻が生じていると考えられる。末梢血中[[wj:制御性T細胞|制御性T細胞]](regulatory T cell: Treg)は末梢性免疫寛容に重要な働きをしていることから、傍腫瘍性神経症候群における免疫動態の評価のため、Treg分画の機能遺伝子の発現を定量した。傍腫瘍性神経症候群,神経症状のない癌患者および健常者の末梢血リンパ球からTreg分画を分取し、[[wj:リアルタイムRT-PCR|リアルタイムRT-PCR]]法で[[w:FOXP3|FOXP3]]を代表とするTregの機能遺伝子の[[mRNA]]の発現を定量した。傍腫瘍性神経症候群患者末梢血では、免疫制御に関わるTregの複数の機能遺伝子に発現低下がみられた。Tregの機能低下は,免疫寛容の破綻を引き起こし、自己免疫機序による組織傷害を生じうるため、傍腫瘍性神経症候群の宿主要因になりうると考えられた<ref name=ref28><pubmed>18455243</pubmed></ref>。


== 治療  ==
== 治療  ==