「スフィンゴミエリン」の版間の差分

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 1880年代にドイツの化学者[[w:Johann Ludwig Wilhelm Thudichum|Johann L. W. Thudicam]]によって[[脳]]組織から単離された[[脂質]]で、その謎の多い性質からギリシャ神話のスフィンクスになぞらえて、スフィンゴミエリンと名付けられた<ref>'''Thudicum, J.C.W. (1884).'''<br>A Treatise on the Chemical Constitution of Brain. [[ファイル:Thudicum Sphingomyelin.pdf|PDF]]</ref>。
 1880年代にドイツの化学者[[w:Johann Ludwig Wilhelm Thudichum|Johann L. W. Thudicam]]によって[[脳]]組織から単離された[[脂質]]で、その謎の多い性質からギリシャ神話のスフィンクスになぞらえて、スフィンゴミエリンと名付けられた<ref>'''Thudicum, J.C.W. (1884).'''<br>A Treatise on the Chemical Constitution of Brain. [[ファイル:Thudicum Sphingomyelin.pdf|PDF]]</ref>。


 スフィンゴミエリンは細胞に豊富な膜構成脂質で、[[哺乳類]]<ref name=Ullman1974><pubmed>4817756</pubmed></ref>から線虫<ref name=Satouchi1993><pubmed>8231660</pubmed></ref>、マラリア寄生虫Plasmodium falciparum<ref name=Elmendorf1994><pubmed>8106545</pubmed></ref>のような原生動物類まで、さまざまな生物種に存在している<ref name=Huitema2004><pubmed>14685263</pubmed></ref>。主要な膜構成スフィンゴ脂質の一つであり、多くの哺乳動物組織において全リン脂質の2-15%を占める<ref name=Koval1991><pubmed>2007175</pubmed></ref>。特に、赤血球、水晶体、末梢神経組織、脳などで高いレベルで存在する<ref name=Koval1991><pubmed>2007175</pubmed></ref><ref name=Talbott2000><pubmed>11030591</pubmed></ref>。その名前の元となったミエリン鞘においても検出される。また、スフィンゴミエリンは、単に細胞膜の主要構成脂質であるだけでなく、セラミドやスフィンゴシン-1-リン酸などのような生理活性脂質のリザーバーとしても重要である。スフィンゴミエリンの代謝酵素とこれら生理活性脂質がうつ病・統合失調症やアルツハイマー病など様々な精神・神経疾患に関与することが報告されている<ref name=Choi2024><pubmed>38337058</pubmed></ref><ref name=Zhuo2022><pubmed>35739089</pubmed></ref>。さらにスフィンゴミエリンはコレステロールとともに脂質ラフトとも呼ばれる膜ドメインの形成を通してタンパク質の膜分布を制御し、シグナル伝達等の細胞機能に関与していると考えられている。
 スフィンゴミエリンは細胞に豊富な膜構成脂質で、[[哺乳類]]<ref name=Ullman1974><pubmed>4817756</pubmed></ref>から[[線虫]]<ref name=Satouchi1993><pubmed>8231660</pubmed></ref>、[[マラリア寄生虫]]''[[Plasmodium falciparum]]''<ref name=Elmendorf1994><pubmed>8106545</pubmed></ref>のような[[原生動物]]類まで、さまざまな生物種に存在している<ref name=Huitema2004><pubmed>14685263</pubmed></ref>。主要な膜構成[[スフィンゴ脂質]]の一つであり、多くの哺乳動物組織において全[[リン脂質]]の2-15%を占める<ref name=Koval1991><pubmed>2007175</pubmed></ref>。特に、[[赤血球]]、[[水晶体]]、[[末梢神経]]組織、脳などで高いレベルで存在する<ref name=Koval1991><pubmed>2007175</pubmed></ref><ref name=Talbott2000><pubmed>11030591</pubmed></ref>。その名前の元となった[[ミエリン鞘]]においても検出される。
 
 スフィンゴミエリンは[[コレステロール]]とともに[[脂質ラフト]]とも呼ばれる[[膜ドメイン]]の形成を通してタンパク質の膜分布を制御し、[[シグナル伝達]]等の細胞機能に関与していると考えられている。また、単に細胞膜の主要構成脂質であるだけでなく、[[セラミド]]や[[スフィンゴシン-1-リン酸]]などのような[[生理活性脂質]]のリザーバーとしても重要である。
 
 スフィンゴミエリンの代謝酵素とこれら生理活性脂質が[[うつ病]]・[[統合失調症]]や[[アルツハイマー病]]など様々な精神・神経疾患に関与することが報告されている<ref name=Choi2024><pubmed>38337058</pubmed></ref><ref name=Zhuo2022><pubmed>35739089</pubmed></ref>


== 基本骨格 ==
== 基本骨格 ==