「スリングショット」の版間の差分

91行目: 91行目:
 [[アフリカツメガエル]][[胚]]の[[脊髄]]神経細胞の[[初代培養]]において、培養後初期の4〜8時間では[[骨形成タンパク質7]] ([[bone morphogenic protein 7]], [[BMP7]])の濃度勾配によって神経突起伸展が誘引されるが、一晩培養後の細胞ではBMP7の濃度勾配に対して反発が起こる。初期の突起伸展の誘引はLIMK1に依存しており、一晩培養後の反発への変換には[[TRPチャネル]]依存的な[[カルシウム]]流入によるカルシニューリンの活性化、それに続くSSH1の活性化が必要であることが明らかにされた<ref name=Wen2007><pubmed>17606869</pubmed></ref> [26]。
 [[アフリカツメガエル]][[胚]]の[[脊髄]]神経細胞の[[初代培養]]において、培養後初期の4〜8時間では[[骨形成タンパク質7]] ([[bone morphogenic protein 7]], [[BMP7]])の濃度勾配によって神経突起伸展が誘引されるが、一晩培養後の細胞ではBMP7の濃度勾配に対して反発が起こる。初期の突起伸展の誘引はLIMK1に依存しており、一晩培養後の反発への変換には[[TRPチャネル]]依存的な[[カルシウム]]流入によるカルシニューリンの活性化、それに続くSSH1の活性化が必要であることが明らかにされた<ref name=Wen2007><pubmed>17606869</pubmed></ref> [26]。


 [[微小管]]関連タンパク質である[[neuron navigator 2]] ([[NAV2]])のショウジョウバエのホモログである[[Sickie]]は、アクチン線維が豊富な[[キノコ体]]の神経軸索に局在して[[Rac]]依存的な軸索の伸長に寄与する。遺伝学的な解析により、SickieはRacの下流で(Pakを介さずに)SSHによるコフィリンの脱リン酸化を促進し、軸索の伸長に寄与することが示された<ref name=Abe2014><pubmed>25411210</pubmed></ref> [27]。一方、RacはPakを介してLIMKを活性化し、コフィリンのリン酸化を促進する働きもある。sickieの変異体ではRacによるSSHの活性化が抑制され、LIMKの活性化だけが促進されるため、コフィリンの過剰なリン酸化が起こり、そのためアクチン線維のダイナミクスが低下し、軸索の伸長が阻害されると考えられる[27]。つまり、LIMKによるコフィリンのリン酸化(不活性化)とSSHによるコフィリンの脱リン酸化(活性化)の両方が軸索の伸長におけるアクチン線維のダイナミクスの制御に必要であり、LIMKとSSHの活性の適切なバランスと時空間的な制御が神経突起の伸長と退縮を決定する要因となっていると考えられる<ref name=Mizuno2013></ref><ref name=Abe2014><pubmed>25411210</pubmed></ref> [2][27]。
 [[微小管]]関連タンパク質である[[neuron navigator 2]] ([[NAV2]])のショウジョウバエのホモログである[[Sickie]]は、アクチン線維が豊富な[[キノコ体]]の神経軸索に局在して[[Rac]]依存的な軸索の伸長に寄与する。遺伝学的な解析により、SickieはRacの下流で(Pakを介さずに)SSHによるコフィリンの脱リン酸化を促進し、軸索の伸長に寄与することが示された<ref name=Abe2014><pubmed>25411210</pubmed></ref> [27]。一方、RacはPakを介してLIMKを活性化し、コフィリンのリン酸化を促進する働きもある。sickieの変異体ではRacによるSSHの活性化が抑制され、LIMKの活性化だけが促進されるため、コフィリンの過剰なリン酸化が起こり、そのためアクチン線維のダイナミクスが低下し、軸索の伸長が阻害されると考えられる<ref name=Abe2014 />[27]。つまり、LIMKによるコフィリンのリン酸化(不活性化)とSSHによるコフィリンの脱リン酸化(活性化)の両方が軸索の伸長におけるアクチン線維のダイナミクスの制御に必要であり、LIMKとSSHの活性の適切なバランスと時空間的な制御が神経突起の伸長と退縮を決定する要因となっていると考えられる<ref name=Mizuno2013></ref><ref name=Abe2014><pubmed>25411210</pubmed></ref> [2][27]。


=== スパイン形態の制御 ===
=== スパイン形態の制御 ===