「アスペルガー症候群」の版間の差分

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== 疾病分類の歴史 ==
== 疾病分類の歴史 ==


 1944年に、オーストリアの小児科医[[wikipedia:JA:Asperger|Asperger]]が友人との関係に問題を抱えている4例の子どもを「自閉的精神病質」として紹介した<ref name=ref2>'''H. Die'''<br>"autistischen Psychopathen". Kindesalter Archives fur Psychiatri und Nervenkrankheiten.</ref>。この報告は、ドイツ語でなされたためか、紹介後数十年、国際的な認知を得ることはなかったが、1981年にイギリスの自閉症専門家Wingが、自身が記述した同様の特徴を持つ34例の子どもを「アスペルガー症候群」として英語で記述し世界的に知られるようになった<ref name=ref3><pubmed>7208735</pubmed></ref>。
 1944年に、オーストリアの小児科医[[wikipedia:JA:ハンス・アスペルガー|Asperger]]が友人との関係に問題を抱えている4例の子どもを「自閉的精神病質」として紹介した<ref name=ref2>'''H. Die'''<br>"autistischen Psychopathen". Kindesalter Archives fur Psychiatri und Nervenkrankheiten.</ref>。この報告は、ドイツ語でなされたためか、紹介後数十年、国際的な認知を得ることはなかったが、1981年にイギリスの自閉症専門家Wingが、自身が記述した同様の特徴を持つ34例の子どもを「アスペルガー症候群」として英語で記述し世界的に知られるようになった<ref name=ref3><pubmed>7208735</pubmed></ref>。


 その後、1994年発行の[[Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 4th edition]](DSM-Ⅳ)ではアスペルガー障害という診断名で[[広汎性発達障害]](Pervasive Developmental Disorders; PDD)の下位分類として位置付けられた<ref name=ref4>American Psychiatric Association. Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 4th edition DSM-Ⅳ.<br>Washington, DC: American Psychiatric Association; 1994.</ref>。しかしながら、DSM-Ⅳで規定されたアスペルガー障害は、①社会性の障害の程度を自閉性障害と同じ基準にしている、②コミュニケーションの障害を診断基準に含めていない、③[[認知機能]]と言語の遅れを除外基準としている、という診断基準の問題を持ち、実際にアスペルガー症候群と臨床的に診断されていた者に、DSM-Ⅳの診断基準を適用すると多くは自閉性障害と操作的に診断される。このため、PDDの中でアスペルガー障害と診断できる者はごく少数であるとされ、DSM-Ⅳで規定されたアスペルガー障害の、下位分類としての有用性には疑問が持たれている<ref name=ref5><pubmed>11411788</pubmed></ref>。またDSM-Ⅳの自閉性障害の診断に関しても、各症状の有無を判定する基準が曖昧であり、研究領域で厳密に対象を選択するときには、[[Autism Diagnostic Interview-Revised]](ADI-R)<ref name=ref6><pubmed>7814313</pubmed></ref>という養育者に対する構造的診断面接と[[Autism Diagnostic Observation Schedule]](ADOS)<ref name=ref7><pubmed>2745388</pubmed></ref>という本人に対する構造的診断面接を実施して診断を確定することが多いが、これらの構造的診断面接の診断アルゴリズムにはアスペルガー障害は含まれていない。
 その後、1994年発行の[[Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 4th edition]](DSM-Ⅳ)ではアスペルガー障害という診断名で[[広汎性発達障害]](Pervasive Developmental Disorders; PDD)の下位分類として位置付けられた<ref name=ref4>American Psychiatric Association. Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 4th edition DSM-Ⅳ.<br>Washington, DC: American Psychiatric Association; 1994.</ref>。しかしながら、DSM-Ⅳで規定されたアスペルガー障害は、①社会性の障害の程度を自閉性障害と同じ基準にしている、②コミュニケーションの障害を診断基準に含めていない、③[[認知機能]]と言語の遅れを除外基準としている、という診断基準の問題を持ち、実際にアスペルガー症候群と臨床的に診断されていた者に、DSM-Ⅳの診断基準を適用すると多くは自閉性障害と操作的に診断される。このため、PDDの中でアスペルガー障害と診断できる者はごく少数であるとされ、DSM-Ⅳで規定されたアスペルガー障害の、下位分類としての有用性には疑問が持たれている<ref name=ref5><pubmed>11411788</pubmed></ref>。またDSM-Ⅳの自閉性障害の診断に関しても、各症状の有無を判定する基準が曖昧であり、研究領域で厳密に対象を選択するときには、[[Autism Diagnostic Interview-Revised]](ADI-R)<ref name=ref6><pubmed>7814313</pubmed></ref>という養育者に対する構造的診断面接と[[Autism Diagnostic Observation Schedule]](ADOS)<ref name=ref7><pubmed>2745388</pubmed></ref>という本人に対する構造的診断面接を実施して診断を確定することが多いが、これらの構造的診断面接の診断アルゴリズムにはアスペルガー障害は含まれていない。