「ERMタンパク質」の版間の差分

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川口 高徳、浅野 真司
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明海大学歯学部 病態診断治療学講座薬理学分野、立命館大学薬学部 分子生理学研究室
<font size="+1">[https://researchmap.jp/7000029378 川口 高徳]</font><br>
 
''明海大学歯学部 病態診断治療学講座薬理学分野''<br>
<font size="+1">[https://researchmap.jp/read0048380 浅野 真司]</font><br>
''立命館大学薬学部 分子生理学研究室''<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2025年6月18日 原稿完成日:2025年8月29日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/wadancnp 和田 圭司](国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター)
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英:ERM proteins
{{box|text= ERMタンパク質は、エズリン、ラディキシン、モエシンおよびマーリンで構成される分子量70~75 kDaのアクチン細胞骨格関連タンパク質群である。N末端領域に約300アミノ酸残基から構成されるFERMドメインを、C末端領域にアクチン細胞骨格との結合ドメインをもつ。主に細胞の頂端領域に局在し、細胞膜のタンパク質とアクチン細胞骨格との間でのクロスリンカーとして、また、細胞骨格ダイナミクスを制御するRho-GTPaseの調節因子として、さらにシグナル伝達タンパク質の足場タンパク質としての機能を担う。さまざまながん細胞種の浸潤や転移にも関与する。どのERMタンパク質が発現するかは細胞、組織によって異なるが、神経組織では、ニューロンの神経突起の成長円錐の形成や、アストロサイトのシナプス近傍の微細な突起であるperisynaptic astrocyte process (PAP) 構造の形成、ミクログリアの細胞遊走や貪食、シュワン細胞の髄鞘の形成など、広く神経組織の構造形成や機能に関わる。}}
{{box|text= ERMタンパク質は、エズリン、ラディキシン、モエシンおよびマーリンで構成される分子量70~75 kDaのアクチン細胞骨格関連タンパク質群である。N末端領域に約300アミノ酸残基から構成されるFERMドメインを、C末端領域にアクチン細胞骨格との結合ドメインをもつ。主に細胞の頂端領域に局在し、細胞膜のタンパク質とアクチン細胞骨格との間でのクロスリンカーとして、また、細胞骨格ダイナミクスを制御するRho-GTPaseの調節因子として、さらにシグナル伝達タンパク質の足場タンパク質としての機能を担う。さまざまながん細胞種の浸潤や転移にも関与する。どのERMタンパク質が発現するかは細胞、組織によって異なるが、神経組織では、ニューロンの神経突起の成長円錐の形成や、アストロサイトのシナプス近傍の微細な突起であるperisynaptic astrocyte process (PAP) 構造の形成、ミクログリアの細胞遊走や貪食、シュワン細胞の髄鞘の形成など、広く神経組織の構造形成や機能に関わる。}}
== ERMタンパク質とは ==
== ERMタンパク質とは ==